なぜニンニクは好んで使われるのに「ニンニクくさい息」は嫌われるのか?
ニンニクはさまざまな料理のトッピングや風味付けのほか、ホイル焼きや丸揚げでもおいしく食べられるため、かなり熱心なファンもいるほど人気の食材です。しかし、好んで使われる一方で、一部のニンニク料理の匂いや、ニンニクを食べたあとの口臭は嫌われることが多々あります。なぜニンニク臭に嫌な感じがあるのかというメカニズムを、オハイオ州立大学の食品科学技術学部のシェリル・バリンジャー教授が解説しています。
Why Do We Love Garlic But Hate Garlic Breath? | Live Science
https://www.livescience.com/65509-why-garlic-breath-smells-bad.html
ニンニクは最も古い園芸作物の一つとして知られており、古くは5000年前にエジプトとインドの文化でニンニクが言及されているほか、4500年前にバビロニア人がニンニクを使用したという歴史的証拠が残っていると、ウィスコンシン大学園芸学部のフィリップ・サイモン氏は述べています。また、ニューヨークのレンセラー工科大学で教授兼化学部門長を務めるウィルフレド・コロン氏は、古くからニンニクが愛されていた理由について「ニンニクの当初の魅力は、その潜在的な健康上の利点と関係があるのかもしれません。ニンニクに含まれる化合物は血圧を下げ、抗菌効果をもたらすと今の研究では示されています。これらの利点により、私たちは無意識のうちにニンニクを欲しがる可能性があります」と語っています。
そもそも食事によって引き起こされる口臭のほとんどは、口の中の隙間に入り込んだ食べ残しの粒子が腐敗することで生じます。一方で、一般的に「ニンニクを食べた後の口臭」とされるものは、食べ物が胃に到達して胃液がニンニクを分解する際に、硫化物のほかビタミンやミネラルを放出する際に生じる、アリルメチルスルフィド(AMS)という分子が原因となっています。
AMSはごく小さな分子のため、通常は胃液で分解されたあと腸まで運ばれていくビタミンやミネラルなどとは異なり、胃の内壁をすり抜けて血管に入っていきます。そうして血液中に侵入したAMSは、血管内に入ったAMSは、肺でのガス交換で二酸化炭素とともに肺胞内に取り込まれ、呼気に含まれる形で体外へ放出されます。結果として、息の中にAMSが含まれることで、「ニンニクくさい息」となります。
AMSは血管の中でも最大で24時間、匂いを放出する力を持続する可能性があるとバリンジャー氏は述べています。なお、バリンジャー氏が共著を務めた2016年の論文では、リンゴやレタス、ペパーミントを食べることで、血中のAMSの濃度を大幅に減少させることができると報告されています。これは、上記の食材には硫化物と結合して硫化物を大きくするフェノール化合物が含まれているため、分子が胃の内壁をすり抜けられなくなり、AMSが血中に溶け込まなくなるというものとなっています。
また、バリンジャー氏は「『ニンニクくさい息』には、本質的に不快なものは何も含まれていません。単に、私たちは食べ物が口に入ってくる匂いには慣れているため好みますが、口から出てくる匂いを嗅ぐことに慣れていないため、違和感があるだけなのです」と語っており、「独特の現象を受け入れる」というのも一つの選択肢だと述べています。
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