自動車メーカーはユーザーがタッチパネル操作を嫌っていることを認めてボタンへの回帰を始める
自動車の車載インフォテインメントシステムで、タッチパネルは物理ボタンに比べて操作時間が4倍余計にかかることが明らかになっています。それでも自動車メーカーはタッチパネル方式を採用してきましたが、いよいよ物理ボタンに戻るときが来たと、ニュースサイト・Slateが報じています。
Carmakers like VW are bringing back buttons because drivers loathe all the touchscreens.
https://slate.com/business/2023/04/cars-buttons-touchscreens-vw-porsche-nissan-hyundai.html
車載インフォテインメントシステムへのタッチパネル採用はここ10年で急速に普及しました。きっかけはテスラによる採用だとSlateは指摘しています。
テスラがタッチパネルを採用したのは、「車輪付きタブレット」を目指してきたからだとみられますが、このほかに、コスト問題も挙げられています。タッチパネルの場合は50ドル(約6800円)未満で調達可能なので、物理ボタンを個別に設けるよりも安上がりになるとのこと。
スマートフォンを手元で操作している限りにおいては「タッチパネルより物理ボタンの方がいい」と感じることはあまりありません。しかし、車を運転しながらだと、タッチパネルの操作には目による確認が必要であることを実感させられます。非営利組織・AAA Foundationの調査により、タッチパネル操作は運転手の注意を最大で40秒そらす効果があることがわかっています。
自動車ジャーナリストのマット・ファラー氏は「皮肉なことに、運転中に携帯電話を操作するのは危険だということは誰もが受け入れています。しかし、4万ドル(約545万円)から30万ドル(約4090万円)の車には、ダッシュボードにiPadが埋め込まれているようなもので、そのiPadを運転中に使用していることに文句を言う人はいません」と述べました。
タッチパネルの問題はアメリカ運輸省道路交通安全局(NHTSA)も認識していて、2013年に「インフォテインメントシステムのタスクは1つ2秒未満(合計でも最大12秒)で完了できるように」と推奨するガイダンスを発行しています。しかし、メーカーが違反しても罰則はありませんでした。
そして、近年の調査により、インフォテインメントシステムへの機能搭載がそれほど進んでいなかった2010年代初頭でさえ、タッチパネル操作が衝突事故のリスクを有意に増加させていたことが明らかになりました。
タッチパネルへの反発を自動車メーカーもいよいよ無視できなくなったのか、ポルシェは2023年モデルのタイカンで完全にタッチパネル化を行いましたが、2024年モデルのカイエンでは物理ボタンを復活させています。
ポルシェの親会社・フォルクスワーゲンAGのトーマス・シェイファー取締役は、フォルクスワーゲンのステアリングのボタンにもタッチ式を採用したことについてユーザーから苦情があり、物理ボタンに戻したことを認めています。
VW Is Bringing Back Steering Wheel Buttons, Dropping Awful Touch Controls
https://www.thedrive.com/news/vw-brings-back-steering-wheel-buttons-after-many-customers-complain
なお、日産やヒョンデなどは、最初から物理ボタンの採用を続けています。
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