飲酒運転防止技術をすべての自動車に取り付けることが義務付けられる可能性
2021年11月15日(月)、アメリカのジョー・バイデン大統領は1兆ドル(約110兆円)規模のインフラストラクチャー投資法案に署名しました。この法案は、老朽化した橋や道路といったインフラストラクチャーを刷新するというだけでなく、高速通信網を整備したり新たな雇用を創出したりすることも目指しています。これだけでなく、自動車の安全性を高め、飲酒運転による交通事故を撲滅するための施策への投資も期待されており、飲酒運転を防ぐための車載テクノロジーを義務付ける可能性が報じられています。
Congress mandates in-car technology to stop drunk driving
https://www.autoblog.com/2021/11/10/drunk-driving-car-technology-infrastructure-bill/
バイデン大統領が署名したインフラストラクチャー投資法案では、アメリカ政府の運輸部門主導のもと飲酒運転を撲滅するための監視システムを評価しながら、すべての自動車メーカーが準拠するための時間を確保し、2026年にもすべての新車に運転手監視システムを搭載することが計画されています。
ワシントンD.C.に拠点を置く交通関連の非営利組織であるEno Center for Transportationによると、インフラストラクチャー投資法案では総額1兆ドルのうち約170億ドル(約2兆円)分が交通安全プログラムに割り当てられているそうです。
アメリカのピート・ブティジェッジ運輸長官は交通安全プログラムに割り当てられた予算について、道路の整備や植樹などに割り当てるとだけ言及していますが、Mothers Against Drunk Driving(飲酒運転根絶を目指す母親の会)のアレックス・オッテ会長は同プログラムについて「飲酒運転の終わりの始まり」「(我々にとって)最も重要な法律」「事実上、アメリカにおける道路上の殺人鬼を排除することにつながります」と言及しています。
アメリカ合衆国運輸省は2021年10月に、2021年前半に交通事故で死亡した人の数が推定2万160人に達したと発表しました。この数字は同機関が交通事故に関する統計を始めた2006年以降で最多となります。さらに、アメリカ合衆国運輸省によると毎年アメリカでは飲酒運転関連の交通事故で約1万人もの人々が死亡しており、これは交通事故による死亡者の約3割を占める数字です。
記事作成時点では、アメリカで飲酒運転による有罪判決を受けた人物は、運転前にドライバーの吐く息をチェックしてアルコールが検出された時には自動車を発進させない「イグニッション・インターロック」を車に搭載することを義務付けられます。ただし、インフラストラクチャー投資法案の交通安全プログラムには「自動車の運転手のパフォーマンスを受動的に監視し、運転手が正常でないかどうかを正確に特定する」ことが可能なテクノロジーの導入が求められているだけであるため、具体的にイグニッション・インターロックの導入を義務付けるような記述はありません。
コンサルティング会社のGuidehouseでモビリティアナリストを務めるSam Abuelsamid氏は、飲酒運転を防止するために自動車に搭載されるであろうテクノロジーとして最も可能性の高いものは、「赤外線カメラでのドライバー監視」であると述べました。なお、同種のテクノロジーはゼネラルモーターズやBMW、日産といった自動車メーカーにより導入されており、部分的に自動化された同種のテクノロジーは、自動運転車のドライバー監視テクノロジーとして使用されています。
この種のテクノロジーでは、ドライバーが道路を注視していることを確認し、運転手が眠気に襲われていないかや意識を喪失していないかなどをチェックします。居眠りや意識喪失の兆候が見つかった場合、自動車はドライバーに警告を発します。それでも兆候が続く場合は、ハザードランプを点灯させて自動車の速度を落とし、路肩に停車させます。
Abuelsamid氏はこういった類のテクノロジーが飲酒防止技術として自動車に搭載されることを望んでおり、すべての人が自動車に乗るたびにチューブに息を吹き込むことを強いられるようなイグニッション・インターロックの採用は「実用的な解決策ではない」と語りました。
なお、インフラストラクチャー投資法案の交通安全プログラムでは、自動車の中に子どもを取り残してしまうことを防ぐためのシステムの搭載が要求されていたり、数十年前に設定された自動車の安全基準を更新したりすることも計画されています。
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