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運転中に道路情報や音楽を流す車載システムを使用すると「飲酒運転よりも反応が遅くなる」という研究結果

by smoothgroover22

車の運転中に道路案内などの情報やカーオーディオなどの娯楽を提供する車載インフォテインメントシステムは、ハンドルから手を離すことなく必要な情報を入手し、音楽などの気晴らしを楽しむことができるため、一般的に交通事故のリスクを減らすものと考えられています。しかし、自動車の安全性を向上させるために活動しているイギリスの慈善団体・IAM RoadSmartが発表した研究結果では、「運転中に車載インフォテインメントシステムを使うことは、飲酒運転やマリファナ摂取後の運転よりも危険かもしれない」と指摘されました。

Interacting with Android Auto and Apple CarPlay when driving: The effect on driver performance
(PDFファイル)https://trl.co.uk/uploads/trl/documents/PPR948-_IAM-RoadSmart---infotainment-sim-study.pdf

IAM RoadSmart Infotainment Research 2020
https://www.iamroadsmart.com/campaign-pages/end-customer-campaigns/infotainment

Hey Siri! Are the latest vehicle infotainment systems reducing road safety more than cannabis or alcohol?
https://www.iamroadsmart.com/media-and-policy/newsroom/news-details/2020/03/15/hey-siri!-are-the-latest-vehicle-infotainment-systems-reducing-road-safety-more-than-cannabis-or-alcohol

Car audio systems pose greater dangers than texting, pot
https://techxplore.com/news/2020-03-car-audio-pose-greater-dangers.html


Googleが開発しているAndroid AutoやAppleが開発するApple CarPlayなどの車載インフォテインメントシステムを使い、運転中にカーナビシステムや交通情報案内といった情報を入手したり、カーラジオやSpotifyなどの音楽を楽しんだりする人は少なくありません。そこでIAM RoadSmartは、車載インフォテインメントシステムの安全性を評価するため、Transport Research Laboratory(道路交通研究所)に調査を依頼しました。

道路交通研究所が行ったテストでは、Android AutoやApple CarPlayの使用が運転に与える影響を評価するため、同じ模擬テストコースを使用して3回の試験走行を行いました。1回目の走行ではドライバーが車載インフォテインメントシステムを使わずに通常通り運転を行い、2回目の走行では音声制御で車載インフォテインメントシステムを使用して運転、3回目の走行ではタッチパネルの操作で車載インフォテインメントシステムを使用しながら運転したとのこと。


その結果、運転中に車載インフォテインメントシステムを使うことは、たとえ音声制御で操作していてもドライバーの注意をそらし、緊急事態に反応する時間を大幅に低下させることが判明しました。この反応時間の遅れは、飲酒運転や大麻を使用した状態での運転よりも大きなものでした。

以下のグラフが、「道路交通研究所が行ったテスト運転」「飲酒運転」「大麻を使用した状態での運転」「ハンズフリー通話を行った状態での運転」「スマートフォンでテキストメッセージを入力しながらの運転」「手でスマートフォンを持って通話した状態での運転」における、ドライバーの反応時間の変化を示したもの。通常時のドライバーと比較して飲酒運転が12%、大麻の使用が21%、ハンズフリー通話が27%も反応時間を遅らせることが示されていますが、Android AutoやApple CarPlayなどの車載インフォテインメントシステムを使用した場合は、さらに長い反応時間の遅れが発生していることがわかります。


なお、グラフ中の「飲酒運転」状態とは、アメリカなどで飲酒運転と判断される基準値の「血中アルコール濃度0.08%」の状態を指しているそうです。日本における飲酒運転の基準は「呼気中アルコール濃度0.15mg/L以上」となっており、この値を血中アルコール濃度に換算すると「血中アルコール濃度0.03%」になります。

音声制御で車載インフォテインメントシステムを使用した場合、スマートフォンでテキストメッセージを入力しながらの運転に匹敵するほど反応が遅れ、タッチパネルで車載インフォテインメントシステムを使用した場合は飲酒運転時の5倍近くも反応時間が遅くなっている模様。ドライバー自身も車載インフォテインメントシステムによって注意散漫になっていることを自覚し、減速するなどの修正を行いましたが、前方の車両と一定の間隔を保つことができず、反応が遅れたり車線を最大1.7フィート(約50cm)ほど外れたりしたとのこと。

車載インフォテインメントシステムを使用したことで発生する反応時間の遅れは、高速道路での平均停車距離が車4~5台分に相当するとIAM RoadSmartは指摘しています。また、車載インフォテインメントシステムを使用中にドライバーが前方から目を離す時間は、タッチパネル操作の場合で12秒~16秒になるそうです。ドライバーは車載インフォテインメントシステムの使用中に道路から目を離した時間を、約5秒ほど過小評価していることもわかりました。

IAM RoadSmartの政策・調査ディレクターであるニール・グレイグ氏は、「ドライバーの注意散漫は、ヨーロッパにおける自動車事故原因の3分の1を占めると推定されています」「この最新の調査結果は、最新の車載インフォテインメントシステムの開発と使用に関する深刻な懸念を引き起こしています。ドライバーの目や注意を道路からそらすものは全て、交通安全にとって悪いものです」とコメントしています。


グレイグ氏は、「調査に参加したドライバーのほとんどは、実際の運転では音声制御ではなくタッチパネルで操作していると報告しています。結果が明らかにしているように、タッチパネル操作は最もドライバーの注意をそらすものです」と述べ、車載インフォテインメントシステムを使う場合は音声制御の方が安全だと指摘。また、どうしても車載インフォテインメントシステム使う必要があるならば、ドライブを始める前に全てのセットアップを完了させ、運転中に操作しないといった対策がお勧めだそうです。

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in ソフトウェア,   乗り物, Posted by log1h_ik

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