「ストーンヘンジは太陽暦のカレンダーである」という説は数字を無理やりこじつけただけという反論
イギリス南部のソールズベリー近郊にある先史時代の遺跡・ストーンヘンジは、円形に直立した巨石が並んだ特徴的な外観で知られています。2022年には「ストーンヘンジは古代の人々がカレンダーとして作った」という説が唱えられましたが、この説に対し「無理のある解釈や数字のこじつけを用いたものだ」という反論が寄せられました。
Archaeoastronomy and the alleged ‘Stonehenge calendar’ | Antiquity | Cambridge Core
https://doi.org/10.15184/aqy.2023.33
The 'Stonehenge calendar' shown to be a modern construct
https://phys.org/news/2023-03-stonehenge-calendar-shown-modern.html
Nope, Stonehenge Isn't an Ancient Calendar After All, Scientists Say : ScienceAlert
https://www.sciencealert.com/nope-stonehenge-isnt-an-ancient-calendar-after-all-scientists-say
ソールズベリーの北西13kmほどに位置するストーンヘンジは、サルセン石と呼ばれる巨大な砂岩が円形に直立して並んだ建造物であり、周辺には巨石を囲む土塁や堀といったさまざまな関連遺構が存在します。
夏至の日には、ストーンヘンジの北東にあるヒール・ストーンという高さ6mの玄武岩の上に太陽が昇り、光線がストーンヘンジの中央部へと真っすぐ差し込みます。この点から、ストーンヘンジの建設者は天文学的な知識があったのではないかと長年にわたり考えられてきました。
2022年、ボーンマス大学の考古学者であるTim Darvill氏は、「ストーンヘンジは1年を365日とする太陽暦を示すカレンダーだ」と主張する論文を発表しました。
Keeping time at Stonehenge | Antiquity | Cambridge Core
https://doi.org/10.15184/aqy.2022.5
Darvill氏によると、ストーンヘンジを構成する外側の輪には全部で30個の石があり、1個が「1日」に対応しているとのこと。これを12倍にした「360」と、内側に門形で配置された組石(トリリトン)の個数である「5」を足すと、1年の日数である365日となります。また、ストーンヘンジの四方に配置された「ステーション・ストーン」という4個の石が、4年で1日加えなくてはならないうるう日に対応しているのだそうです。
これらの数字はストーンヘンジが太陽暦のカレンダーとして作られたことを示しており、ストーンヘンジの建築者らはエジプトで用いられていた太陽暦にうるう日を加えて改良したとDarvill氏は主張しています。
このDarvill氏の主張に対し、ミラノ工科大学の数学者であるGiulio Magli氏とカナリア天体物理研究所の天文学者であるJuan Antonio Belmonte氏は、「Darvill氏の説は一連の無理がある解釈、数秘術、支持されていない他文化との類似性」に基づいたものだと反論する論文を発表しました。
Magli氏らによると、考古学的な遺跡ではさまざまな「数字」を見いだすことが可能であり、ストーンヘンジの石の個数を太陽暦に結びつけるのは難しいことではないとのこと。また、外側の輪を構成する石の個数「30」にかける「12」という数字の出所は不明であり、遺跡全体を見ればさまざまな数字が無視されていると指摘しています。
細かい数字を抜きにしても、ストーンヘンジの構造は太陽の1日ごとの微妙な動きを区別できるほど精度が高いわけではありません。特に夏至付近では地平線の太陽がゆっくり動くため、巨石で構成されたストーンヘンジが365日を示すカレンダーだと推測するのは困難だそうです。
さらに、ストーンヘンジの建築者はエジプト暦を改良し、うるう年を加えた太陽暦を考案したという説も無理のある臆測に過ぎません。実際、エジプト人は高い精度で1日を区別する可能性がある構造物を作っておらず、太陽暦のズレを修正するためにうるう日を追加するという発想は、ストーンヘンジの建設から約2000年後に初めて文書化されたといわれています。先入観を抜きにすれば、ストーンヘンジの建設者らは他の新石器時代の文化と同様、太陰暦を用いていた可能性が高いとのこと。
Magli氏らは、「ストーンヘンジは明らかにそのようなデバイス(太陽暦のカレンダー)ではありません」と主張しました。
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