アメリカが3つの「未確認物体」を撃墜、「エイリアンの乗り物ではない」と当局
by Chad Fish / AP
アメリカ政府が2023年2月10日から12日にかけて、3日連続で北米上空の未確認物体を撃墜していたことが分かりました。これは、2月4日に中国のものと思われる気球が撃墜されてから4回目となります。
Press Briefing by Press Secretary Karine Jean-Pierre and National Security Council Coordinator for Strategic Communications John Kirby, February 13, 2023 - The White House
https://www.whitehouse.gov/briefing-room/press-briefings/2023/02/13/press-briefing-by-press-secretary-karine-jean-pierre-and-national-security-council-coordinator-for-strategic-communications-john-kirby-february-13-2023/
White House on unidentified objects: ‘No indication of aliens’ - POLITICO
https://www.politico.com/news/2023/02/13/white-house-unidentified-objects-no-aliens-00082593
Unidentified airborne objects: A trio of new intrusions leaves America's leaders grasping for explanations | CNN Politics
https://edition.cnn.com/2023/02/13/politics/unknown-objects-leaders-response/index.html
'No indication of aliens': spy balloon saga continues to surprise amid rising US–China tension
https://theconversation.com/no-indication-of-aliens-spy-balloon-saga-continues-to-surprise-amid-rising-us-china-tension-199769
以下は、2月4日からの8日間に北米上空で撃墜された合計4つの物体についてまとめた図です。最初に撃墜されたのは、2月4日にサウスカロライナ州沖でアメリカ軍に撃墜された中国のスパイ気球と思われるもので、高さは20フィート(約61メートル)、重さは2000ポンド(約906kg)以上あったとされています。2つ目はアラスカ沖、カナダ国境近くの北極海上空の高度4万フィート(約1万2100メートル)を浮遊していたもので、2月10日に撃墜されました。3つ目はカナダ北部の上空約4万フィートを浮遊していた中国のスパイ気球より小さい円筒形の物体で、11日に撃墜されました。そして、最後は五大湖の1つであるヒューロン湖に接するミシガン州アッパー半島上空を飛行していたところを12日に撃墜されています。
4つの物体はいずれもアメリカ軍の戦闘機であるF-22およびF-16に撃墜されており、これはアメリカとカナダが連携して運用している北アメリカ航空宇宙防衛司令部が発足して以来初めての出来事とされています。
アメリカ上空を飛行していた未確認物体というと、未確認飛行物体(UFO)や地球外生命体の乗り物が頭をよぎりますが、ホワイトハウスで13日に開かれた会見でカリーヌ・ジャン=ピエール報道官は「そのような疑問や懸念があることは承知していますが、最近の撃墜に関しては、エイリアンや地球外生命体の活動の兆候はありません」と述べて臆測を一蹴し、記者団からは笑いが上がったとのこと。
また、続いて登壇した国防総省のジョン・カービー報道官は、「私たちはそれを検出し、追跡しました。そして、できる限り多くのことを知るため、慎重に調査してきました。私たちは、これらの中華人民共和国の監視気球が、私たちの最も近い同盟国やパートナーを含む複数の大陸の何十カ国もの上空を横切ったことを知っています」と述べて、一連の物体は中国が長年にわたってアメリカとアメリカの同盟国を監視するために運用してきた高高度気球であると示唆しました。
気球の存在は、ジョー・バイデン大統領が中国の諜報(ちょうほう)能力について評価するようアメリカの情報機関に指示したことにより突き止められたものです。また、気球はドナルド・トランプ元大統領による前政権の時代にもアメリカ上空を飛行していましたが、これまでは発見に至っていなかったとされています。
中国のものと思われる気球について、アメリカ議会は419対0の賛成多数で「中国共産党がアメリカの領土の上空で高高度監視気球を使用したことは、アメリカの主権に対する大胆な侵害である」と非難する決議を採択しました。
また、アメリカは気球に関与した中国の研究機関と企業5社、計6つの組織をブラックリストに登録し、これらの組織とアメリカの企業が当局の許可なく取引をすることを禁止しました。これは、少なくとも最初に撃墜した中国のスパイ気球については、その製造元が特定されたことを意味しています。
撃墜された気球の残骸が回収されている様子。
by US Navy / Mass Communication Specialist 1st Class Tyler Thompson / EPA
一方中国も、13日の定例記者会見で「2022年だけでも、アメリカの高高度気球が中国当局の承認もなく10回以上中国の領空を不法に横断しました」と述べて、アメリカが中国上空にスパイ気球を飛ばしていると非難しました。ただし、具体的な証拠は提示していません。
緊張がエスカレートしつつある米中関係について、オーストラリア・グリフィスアジア研究所の客員研究員であるピーター・レイトン氏は「今回の気球騒動は、中国が危機的な状況に陥った際、急速に進展する事態に適切に対処できない可能性があることを明らかにしました。中国共産党の体制は、詳細な長期計画の実行には長じていますが、緊急の問題への対処には不得手なのです。また、今回の危機ではアメリカの方だけが積極的で、中国の反応はせいぜい形式的なものに過ぎず、意味のある対話になっていません」と述べて、これまでのところ主導権はアメリカにあるとの見解を示しました。
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