格安で気温・湿度・二酸化炭素濃度・PM2.5をモニタリングする空気質センサーをDIY可能にするプロジェクト「AirGradient」

世界保健機関(WHO)が「世界のほぼ全人口がWHOの基準値を上回るレベルで汚染された空気を吸って生きている」と警告したり、「人間にとって最も深刻な健康リスクは大気汚染である」というレポートが発表されたりと、現代社会において大気汚染は重要な課題です。しかし、二酸化炭素やPM2.5の濃度を測定する空気質センサーは高価であり、容易に入手できない人は世界中に大勢います。そこで、タイ発のプロジェクト「AirGradient」は、空気質センサーを格安でDIYするためのサポートやキットを提供しています。

AirGradient
https://www.airgradient.com/

The AirGradient DIY Air Quality Sensor
https://www.airgradient.com/open-airgradient/instructions/diy/

タイでは焼き畑農業による煙害が深刻な社会問題となっていますが、日本円にして数万円を超える空気質センサーを購入する余裕がない人が多いとのこと。そこで、タイ北部の学校が教室内の空気質を測定することを支援するため、ボランティアプロジェクトとして立ち上げられたのがAirGradientです。

AirGradientの創設者であるAchim Haug氏は、「大気汚染が深刻な国では、高密度の空気質監視を行う余裕がない場合が多いというのは矛盾しています。私たちは人々が有害な大気汚染から身を守れるように、オープンで正確かつ手頃な価格のモニターを提供するため、懸命に努力しています」と述べています。

AirGradientの公式ウェブサイトでは、購入しやすい安価な部品を使用して気温・湿度・二酸化炭素濃度・PM2.5を測定する空気質センサーの作り方が解説されており、搭載するファームウェアのリンクも用意されています。AirGradientの空気質センサーをDIYするために調達が必要なコンポーネントは、Wi-Fi対応マイコンの「WeMos D1 mini」(約300円)や「Wemos製OLEDディスプレイ」(約300円)、PM2.5を検出する「Plantower PMS5003 PMセンサー」(約2000円)、二酸化炭素濃度を測定する「Senseair S8 CO2センサー」(約3000～4000円)、湿度および気温を測定する「SHT30またはSHT31の気温湿度センサーモジュール」(約500円)、プリント基板、ケースです。いずれの価格もAliExpressで購入した場合となっていますが、必ずしもすべての国や地域に発送されるわけではないため、適宜自分の国で入手可能なサイトやショップを見つける必要があるとのこと。

コンポーネントをはんだ付けするとこんな感じ。なお、調達するコンポーネントには含まれていませんが、WeMos D1miniにファームウェアをインストールするためのUSBケーブルやPCも用意する必要があります。

PCB基板はAirGradientが公開しているガーバーフォーマットファイルをダウンロードして注文できるほか、ケースは3Dプリント用のSTLファイルが公開されています。

また、AirGradient自身もオンラインショップで空気質センサーのDIYに必要なキットを販売しており、世界中の国や地域への発送を行っています。さらに、組み立てには基本的なはんだ付けの道具やスキルが必要ですが、AirGradientは事前にはんだ付けしたキットも販売しており、はんだ付け済みキットを使えば5～10分ほどで組み立てが完了するとのこと。

また、AirGradientは気圧センサーやバッテリー充電器、LED表示などの拡張機能が追加された「プロバージョン」の作成方法も解説しています。

The AirGradient DIY Air Quality Sensor (Pro Version PCB Version 3.7+)
https://www.airgradient.com/open-airgradient/instructions/diy-pro-v37/

電子工作YouTuberのJeff Geerling氏は、実際にAirGradientの空気質センサーをDIYで作成する動画を投稿しています。

Your home's air could be making you sick. Fight back! - YouTube