評価額3兆7000億円超のAI企業・OpenAIから13兆円以上の利益がMicrosoftに支払われる可能性
Microsoftは自社の製品やサービスに対話型AIのChatGPTや画像生成AIのDALL-E2を組み込むことを想定し、ChatGPTやDall-E2を開発しているAI研究団体・OpenAIにすでに30億ドル(約3900億円)を投資し、さらに100億ドル(約1兆3000億円)の投資を検討していると報じられています。そんなOpenAIが今後どのように利益を配分していくのかについて、アメリカのビジネス誌であるFortuneが解説しています。
Inside the structure of OpenAI’s looming new investment from Microsoft and VCs | Fortune
https://fortune.com/2023/01/11/structure-openai-investment-microsoft/
OpenAIは当初は非営利団体として設立されましたが、2019年にOpenAIは非営利から制限つきの営利団体となりました。その直後、MicrosoftはOpenAIと提携し、10億ドル(当時のレートで約1100億円)の投資を行っています。
Microsoftが汎用人工知能(AGI)開発のため1000億円以上をOpenAIに出資 - GIGAZINE
そして、Microsoftは検索エンジンのBingにChatGPTやDALL-E 2を組み込むことで、記事作成時点で検索エンジン最大手であるGoogleのシェアを奪う計画を持っており、さらに100億ドルの投資を検討していると報じられました。
MicrosoftはOpenAIのChatGPTをBingやOfficeに統合するために100億ドルの投資を検討している - GIGAZINE
MicrosoftのOpenAIへの賭けは、これまで知られていたよりもさらに大きなものだったようで、内部文書によると、今回の取引に先立ってMicrosoftはすでに30億ドルを同社に投入しているとのこと。Microsoftはこれまで10億ドル(約1300億円)を投資していることが報じられていますが、実際はその3倍を投資していたことになります。その場合、Microsoftは合計130億ドル(約1兆7000億円)をOpenAIに出資することになり、ChatGPTとDALL-E 2を支える技術がMicrosoftの将来にとっていかに重要であると考えているかを明確に示しています。
OpenAIの利益に関しては、これまでの報道通りにMicrosoftは優遇措置を受けることになります。内部文書にはOpenAIが得た利益の払い戻しについて記されており、まずは「OpenAIの最初の親しいパートナー(FCP)」に払い戻されるとあります。このFCPが誰を指すのかは不明ですが、OpenAIを初期から支えていた投資家と考えられます。そして、FCPへの払い戻しを終えると、そこからはMicrosoftに利益が支払われることになります。
OpenAIの利益の流れについて、FORTUNEは以下の図を示しています。
上記の図内で示されている各項目は以下の通り。
1:最初はFCPに100%支払われる。
2:FCPに投資額の元金を支払い終わったら、利益の25%で従業員やFCPへのキャップを支払う。
3:残り75%はMicrosoftへの払い戻しに回される。
4:Microsoftに投資を受けた分を支払い終わると、2%がOpenAIのものとなる。
5:41%が従業員に、8%がFCPにキャップとして支払われる。
6:残りの49%はすべてMicrosoftに支払われる。
7:すべてを支払い終えたら、利益がすべてOpenAIのものとなり、OpenAIは営利団体となる。
利益分配はかなりMicrosoftにとって有利なものにはなっていますが、Microsoftが利益を受けられるようになるまではかなり時間がかかると見られています。ある情報筋によると、920億ドル(約11兆8600億円)の利益と130億ドルの初期投資がMicrosoftに返済され、他の投資家が1500億ドル(約19兆3000億円)を稼いだら、すべての株式がOpenAIに返還されるとのこと。
OpenAIは2024年に10億ドルの収益を見込んでいますが、支出となるコストはどれほどかかるかは不明。内部文書によると、OpenAIは2022年のコストを5億4450万ドル(約700億円)程度と見込んでいたそうです。そのため、Microsoftの元会長であるビル・ゲイツ氏は、サティア・ナデラCEOに対してOpenAIへの投資はやめるべきだと警告していたとのこと。
一方で、OpenAIは株式公開買い付けによる既存株式売却を交渉中。OpenAIの評価額はおよそ290億ドル(約3兆7400億円)になるとみられており、Microsoftだけではなく市場全体がOpenAIを高く評価していることがわかります。
OpenAIのサム・アルトマンCEOは、自社のAI開発を「人類史上最も重要な技術開発」と評価しており、ナデラCEOもOpenAIが人間のように十分に広範な適用範囲と強力な汎化能力を持つ「汎用人工知能」を開発する最初の企業になるかもしれないと期待を寄せています。Microsoftにとって、OpenAIへの130億ドルの投資が成功だったのかどうかがわかるにはもう少し時間がかかりそうです。
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