メモ

「400万人超の架空のユーザーリストを作成してJPモルガンをだましスタートアップを約190億円で買収させた」と29歳の創業者が訴えられる


2016年に設立された金融スタートアップの「Frank」は、煩雑な学生ローン申請プロセスをサポートするプラットフォームを展開して注目を集め、2021年に持ち株会社のJPモルガン・チェースによって1億7500万ドル(当時のレートで約192億円)で買収されました。ところが、Frankの創業者である29歳のチャーリー・ジャーヴィス氏が、「400万人以上の偽ユーザーを作成して顧客数を誇張し、JPモルガン・チェースをだまして買収させた」として訴訟を起こされました。

JP Morgan Says Startup Founder Used Millions Of Fake Customers To Dupe It Into An Acquisition
https://www.forbes.com/sites/alexandralevine/2023/01/11/jp-morgan-fake-customers-frank-charlie-javice/


JPMorgan Claim Charlie Javice's Startup Is a Fraud Raises Spending Worries (JPM) - Bloomberg
https://www.bloomberg.com/news/articles/2023-01-12/jamie-dimon-s-acquisition-spree-stained-by-29-year-old-s-startup

JPMorgan Bought College Financial-Aid Platform for $175 Million—and Now Says Most of Its Users Were Fake - WSJ
https://www.wsj.com/articles/jpmorgan-bought-college-financial-aid-platform-for-175-millionand-now-says-most-of-its-users-were-fake-11673470572

JPMorgan Chase shutters student financial aid website Frank
https://www.cnbc.com/2023/01/12/jpmorgan-chase-shutters-student-financial-aid-website-frank.html

大学の学費が非常に高いことが問題となっているアメリカでは、多くの大学生が連邦政府の助成金や学生ローンを利用していますが、申請に必要な「The Free Application for Federal Student Aid(FAFSA)」という申請プロセスが非常に煩雑だとのこと。2016年に設立されたFrankは、このFAFSAの申請プロセスを簡素化するためのプラットフォームを提供するスタートアップです。2018年に行われたインタビューで、当時25歳だったジャーヴィス氏は「高等教育のためのAmazonになりたい」という展望を語っていました。

2021年の夏にJPモルガン・チェースとFrank買収の可能性について話し合った際、ジャーヴィス氏は「Frankには425万人ものユーザーがいる」とアピールしたとのこと。結局、JPモルガン・チェースは1億7500万ドルでFrankを買収し、ジャーヴィス氏はJPモルガン・チェースの学生向け製品のマネージングディレクターとして迎えられました。

ところが、取引完了後にJPモルガン・チェースがFrankの顧客リストを要求し、リストに含まれる40万人に学生向け商品のマーケティングメールを送信したところ、メールの約4分の1しか送信されず、そのうち開封されたものはわずか1%しかないことが判明。この「異常に貧弱なリターン」に疑問を抱いたJPモルガン・チェースが、Frankから受け取った顧客リストについて調査した結果、リストに記載されている情報が偽物であることがわかったとのことです。


JPモルガン・チェースが2022年末に起こした訴訟によると、ジャーヴィス氏と当時Frankの最高事業成長責任者を務めていたオリビエ・アマール氏は、協力者に依頼して「架空の学生426万5000人分の氏名・住所・生年月日・その他の個人情報のリスト」を作成したとのこと。このリストを基にジャーヴィス氏はプレゼンテーションを行い、JPモルガン・チェースによる買収を成立させましたが、実際のFrankの顧客アカウント数は30万人未満だったとされています。また、アマール氏は買収完了後もうそを隠し通すため、マーケディング会社から450万人分の学生のデータセットも購入していたそうです。

裁判所への提出書類には、ジャービス氏がリスト作成を依頼した匿名のデータサイエンス研究者とやり取りしたメールが含まれており、架空の顧客情報を偽造する方法についての説明も抜粋されています。関係者によると、JPモルガン・チェースは買収の一環としてFrankの技術システムも手にしたため、電子メールにアクセスできたとのこと。


JPモルガン・チェースは訴状で、「ジャーヴィス氏はJPモルガン・チェースとのやり取りにおいて、常に『スタートアップについての真実を明らかにしてFrankの実際の価値を受け入れる』か、『Frankの価値を膨らませるためにうそをついてインフレした報酬を得る』かの選択肢を持っていました。ジャーヴィス氏は毎回うそをつくことを選びました。証拠は、彼女がJPモルガン・チェースを欺くために、うそにうそを重ねたことを示しています」と述べています。なお、ジャーヴィス氏は2022年11月に、アマール氏も10月にJPモルガン・チェースを解雇されています。

一方、ジャーヴィス氏はJPモルガン・チェースによって訴訟が起こされたのと同じ週に、逆にJPモルガン・チェースを相手に訴訟を起こしています。ジャーヴィス氏は訴状の中で、JPモルガン・チェースは2022年春から「一連の根拠のない調査」を開始し、悪意を持って解雇をでっち上げてJPモルガン・チェースを追い出したと主張。ジャーヴィス氏の弁護士であるアレックス・スピロ氏は、JPモルガン・チェースは学生プライバシー法の問題に直面しており、買収を巻き戻すためにジャーヴィス氏への訴訟を起こしたと述べています。

なお、すでにJPモルガン・チェースはFrankの公式ウェブサイトを閉鎖しています。

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in メモ, Posted by log1h_ik

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