ネットサービス

ChatGPTのリリースでGoogleは「コードレッド」を宣言、AIチャットボットが検索ビジネスにもたらす脅威に対応するためにチームを再割り当て


AI開発団体のOpenAIが発表した「ChatGPT」は、自然言語処理モデルの「GPT-3」の進化系である「GPT-3.5」がベースになっており、質問文を打ち込むと人間が書いた文章と見分けが付かないほどに高精度の文章で回答してくれます。そんなChatGPTの登場に、ユーザー数世界最大を誇る検索エンジンを持つGoogleの経営陣が事業に対する深刻な脅威への警戒を示して「コード・レッド」を宣言したと報じられています。

ChatGPT and Other Chat Bots Are a ‘Code Red’ for Google Search - The New York Times
https://www.nytimes.com/2022/12/21/technology/ai-chatgpt-google-search.html

Google at 'code red' over ChatGPT, plans competing AI products
https://9to5google.com/2022/12/21/google-code-red-chatgpt/

ChatGPTはインターネット上のリンクのリストではなく、明確でシンプルな文章で情報を提供することができます。Googleのように検索結果をずらっと並べるだけの検索エンジンと異なり、概念をわかりやすく説明することができるのがChatGPTの大きな特徴です。ビジネス戦略、クリスマスプレゼントの選択、ブログのネタ、休暇の計画などを尋ねれば、ChatGPTは自然な文章で提案してくれます。


もちろんChatGPTはあくまでも人間らしい文章を打つことに特化しており、必ずしも対話の内容や理屈を理解しているわけではないので、「間違った内容をもっともらしく話す」という欠点があり、まだまだ改良の余地はあります。しかし、ニューヨーク・タイムズによると、Googleの経営陣は「コード・レッド」を宣言することになったとのこと。

20年以上にわたってGoogleの検索エンジンは世界中でインターネットへの主要な入口として機能してきました。Googleのある幹部は、ChatGPTが従来の検索エンジンを再発明するものであり、Googleの検索ビジネスを根底から覆しかねないほどの技術革新が到来したのではないかと危惧しています。


ニューヨーク・タイムズが入手したメモと音声記録によれば、Googleのサンダー・ピチャイCEOは、GoogleのAI戦略を定義するための会議に参加した最に、ChatGPTがもたらす脅威に対応するために社内グループの一部を再編成し、業務内容を急きょ変更したとのこと。さらにOpenAIのDALL・Eのような画像生成AIの開発も従業員に課したそうです。

GoogleもChatGPTのような対話型AIの開発に着手しており、すでにLaMDA(Language Model for Dialogue Applications)と呼ばれるモデルを発表しています。このLaMDAはChatGPTと同等に高い精度で人間と会話できたため、Googleのエンジニアが「AIに意識が芽生えた」と主張し、休職勧告を受けたのちに解雇されています。

「AIに意識が芽生えた」と主張したGoogleのエンジニアが解雇される - GIGAZINE


しかし、ニューヨーク・タイムズは、GoogleがLaMDAを検索エンジンの新たなUIとして展開することには消極的だとしています。なぜなら、Googleにとって検索エンジンとは重要な広告枠であり、対話型AIを使った検索システムは、Googleの収益の8割以上を占めるデジタル広告の配信には向かないためです。Yahoo!とGoogleの元エンジニアで、ニューラルネットワークによる検索エンジンを開発する「vectara」のCEOを務めるアムル・アワダラ氏は「Googleはビジネスモデルの問題を抱えています。Googleがそれぞれの検索クエリに対して完璧な答えを出せば、広告がクリックされることはなくなるでしょう」と述べました。

また、対話型AIはインターネットに投稿された膨大な量のデータを学習しているため、差別や偏見をそのまま吸収してしまい、ヘイトスピーチを含む有害な言葉を発する可能性もあります。これはGoogleに対する反発を招き、数十年をかけて築き上げてきた企業ブランドを大きく傷付ける可能性もあります。

しかし、Googleのある幹部は「小規模な企業がこうしたツールをリリースしてもそこまで懸念する必要はありませんが、GoogleがこのAI開発戦争に割り込まなければ、この先業界はGoogleとは関係ないところで進化しつづけるでしょう」と発言したとのこと。

MicrosoftとGoogleの元AI研究者で、オンラインAIプラットフォームのHugging Faceに勤めるマーガレット・ミッチェル氏は「Google検索はかなり保守的なので、機能しているシステムが台無しにならないようにするでしょう。つまり、検索エンジンをオーバーホールするのではなく、段階的に改善しながら対話型AIの技術を取り込んでいくアプローチを続けていくのでしょう」と予想しています。

AIによる検索エンジンを開発するNeevaのCEOで、以前はGoogleの広告部門のマネージャーでもあったスリダール・ラマスワミ氏は「以前はGoogleががっちりと握っているシェアを崩すのは難しいと落胆していました。しかし、ChatGPTのような新しい技術が生まれた瞬間には、より多くの競争の機会が生まれます」と語り、ChatGPTの登場がGoogleの牙城を崩す鍵になると述べました。

この記事のタイトルとURLをコピーする

・関連記事
Googleの対話特化型AIとスマホで語り合えるアプリ「AI Test Kitchen」が自然すぎて完全に中の人がいるレベル - GIGAZINE

汚すぎる医師の字を解読するのに特化したAIをGoogleが開発中 - GIGAZINE

ChatGPTやGoogle検索で使われているAIベースの自然言語処理アルゴリズムをアミノ酸配列に適用してタンパク質言語モデルを作成することで創薬時間を数カ月に短縮 - GIGAZINE

AIアバターのスタートアップ「Alter」をGoogleが買収 - GIGAZINE

Googleが動画生成AI「Imagen Video」を発表 - GIGAZINE

PDFやWordのレイアウトを保ったままAI自動翻訳できる「Translation Hub」をGoogleが発表 - GIGAZINE

「GoogleのAIが感情や知性を獲得した」というエンジニアの指摘は間違っていると専門家から批判が殺到 - GIGAZINE

in ネットサービス, Posted by log1i_yk

You can read the machine translated English article here.