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AIが気候変動対策・政治キャンペーン・ロシアとウクライナの戦争被害分析などに役立つ


近年はあらゆる分野でAIを活用する動きが進んでおり、「自分の関心がある分野ではどのようにAIを活用できるのか?」と気になっている人が多いはず。気候変動対策・政治キャンペーン・ロシアとウクライナの戦争被害分析など、AIが役立つ可能性があるさまざまな分野について、AI関連のトピックについて発信するウェブメディア・THE BATCHがまとめています。

Generative AI Brings Big Bucks, Assessing Ukraine War Damage, Candidates Target Voters, Translating 1,000 Languages
https://www.deeplearning.ai/the-batch/issue-169/

◆地球温暖化対策
これまでに提案されてきた地球温暖化対策としては、温室効果ガスの排出量を抑えたり森林破壊を食い止めたりするものの他に、「太陽光を宇宙へ跳ね返す」という積極策も存在します。中でも「成層圏エアロゾル注入」という手法は、成層圏を飛行する航空機から二酸化硫黄などのエアロゾルを噴霧し、太陽光を宇宙に反射させるというものです。太陽光が地球を暖める速度を低下させることにより、炭素排出量の削減を達成するまでの時間を稼ぐことが可能です。

この取り組みにおいて、エアロゾルの散布に用いる高高度のドローンを制御するためにAIが利用できるほか、成層圏エアロゾル注入の効果をモデル化し、実施するタイミングや場所を決定するためにAIが役立つ可能性もあるとのことです。


近年は地球温暖化対策として太陽光を反射する方法が真剣に検討されていますが、THE BATCHのニュースレターを執筆するAndrew Ng氏は、政治家だけでなくエンジニアやAI研究者も地球温暖化対策に取り組むことを期待していると述べました。

地球温暖化の影響軽減のため太陽光を宇宙へ跳ね返す計画をホワイトハウスが準備中 - GIGAZINE


◆クリエイティブ産業
近年は画像やテキストなどを生成するAIが相次いで登場しており、多額の投資を獲得することに成功したスタートアップも表れています。たとえば、画像生成AIのStable Diffusionを開発したStability AIの評価額は約10億ドル(約1470億円)といわれており、2022年10月の資金調達ラウンドでは1億100万ドル(約149億円)もの資金を調達しました。

また、コンテンツマーケティング用の文章やキャッチコピーをAIで生成するJasper.aiの開発企業・Jasperは、シリーズAの資金調達ラウンドで1億2500万ドル(約184億円)の資金調達に成功。また、MicrosoftはAI研究所のOpenAIに対する資本投下を強化する方針であるほか、写真素材大手のShutterstockもOpenAIとの提携および学習元素材の作者に報奨金を支払うとしています。

画像生成AI「DALL・E」を開発する「OpenAI」と写真素材・ストックフォト最大手の1つ「Shutterstock」が提携し今後数か月以内に画像生成機能をユーザーに提供&学習元素材の作者に報奨金を支払う仕組みの構築へ - GIGAZINE


このようにクリエイティブ産業においてもAIの存在感が強まる一方で、画像生成AIに対して「アーティストの権利を侵害している」というも上がっています。また、GitHubのコードで学習したコード補完AIの「GitHub Copilot」は集団訴訟に直面するなど、AIに対する厳しい目もあります。

ついにGitHubのコードで学習したAI「GitHub Copilot」が集団訴訟に直面 - GIGAZINE


◆政治キャンペーン
連邦議会議員などを選出する中間選挙を目前に控えているアメリカでは、共和党と民主党の両党がAIを政治キャンペーンに利用しています。ニューヨーク・タイムズによると、コンサルティング企業はAIを用いて有権者のプロファイルを分析することにより、「支持政党を変える可能性がある有権者」を特定することが可能だとのこと。この結果を利用し、政党は支持政党を変えさせるのに効果的な政策を前面に押し出した選挙キャンペーンを実施することができます。

また、2022年の韓国大統領選挙では与野党ともに「AIアバター」を作成し、アバターが出演したさまざまな動画を公開するといった選挙戦を展開しました。さらに、インドでは「党首がさまざまな現地語で有権者に話しかけるディープフェイク動画」を公開し、有権者に訴えかける戦略も登場しているとのことです。

選挙におけるAI利用についてTHE BATCHは、「機械学習による個人的な好みのモデリングは、説得のための強力なメカニズムとなり得ますが、うそや歪曲(わいきょく)に基づいて人々を操作し、投票させるような悪用の可能性もあります。私たちは、政治キャンペーンがAIを使用する際には、厳格な透明性要件が必要だとする立場を支持します」と述べました。


◆戦争による農業分野の被害分析
2022年2月から続いているロシアによるウクライナ侵攻は、世界的な農産物輸出国であるウクライナの農業生産に大きな打撃を与えました。イェール大学の公衆衛生大学院とオークリッジ国立研究所のチームは、航空写真から穀物貯蔵施設を検出するAIモデルを構築し、ロシアの攻撃によって損傷した施設を特定しています。

この分析によると、ウクライナでは進行前に344あった穀物貯蔵施設のうち75の施設が被害を受け、ウクライナ全体の約15%に相当する307万トンもの穀物貯蔵能力が失われたと推定されています。

また、ウクライナも顔認識AI技術を利用して戦死したロシア兵の身元を特定していると報告するなど、戦争におけるAIの活用が進められています。THE BATCHは、「戦争は恐ろしいものです。AIが侵略軍の被害を記録してくれるのは喜ばしいことであり、その記録が適切な賠償金支払いにつながることを期待しています」と述べました。

ウクライナは顔認識AI技術を利用して戦死したロシア兵の身元を特定しているとウクライナ副首相が発言 - GIGAZINE

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in ソフトウェア,   サイエンス, Posted by log1h_ik

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