地球温暖化の影響軽減のため太陽光を宇宙へ跳ね返す計画をホワイトハウスが準備中
地球の気候変動を抑えるために、地球に到達する太陽光を一部宇宙に反射するなどして調整する研究計画をホワイトハウス科学技術政策局(OSTP)が準備していることがわかりました。
White House pushes ahead research to cool Earth by reflecting sunlight
https://www.cnbc.com/2022/10/13/what-is-solar-geoengineering-sunlight-reflection-risks-and-benefits.html
「太陽光を反射して環境への影響を抑える」という発想は1965年、リンドン・B・ジョンソン大統領の時代にすでに登場していたとのこと。当時のアイデアは、反射率を1%上げるのに年間5億ドル(約740億円)かかる想定でしたが「気候の経済的・人間的重要性を考慮すると、コストは過大なものではないと考えられます」と報告されていました。
その後、想定コストは増加の一途をたどり、カリフォルニア大学ロサンゼルス校ロースクールのエドワード・A・パーソン教授によれば、2022年現在の見積もりだと地球の気温を1度下げるには年間100億ドル(約7兆4000億円)かかるそうです。しかし、これでもなお、他の気候変動緩和の取り組みに比べれば著しく安いものだとのこと。
実際にどのように太陽光を反射させるのかについて、全米科学アカデミー・工学アカデミー・医学アカデミーからは2021年3月に「成層圏エアロゾル注入」「海洋雲増光」「巻雲薄化」の3案が発表されています。
「成層圏エアロゾル注入」は、成層圏を飛行する航空機からエアロゾルを噴霧し、太陽光を宇宙に反射させようというもの。パーソン教授によれば、成層圏は穏やかなので物質を注入したとして6カ月から2年はもつとのこと。実際にエアロゾルを注入すると、極端に高温な部分からただちに熱を奪い、ゲリラ豪雨も発生を遅らせることができると考えられるそうです。
エアロゾルとして用いる物質の候補の1つは、火山の噴火時に吹き出す二酸化硫黄です。実際に、1991年にピナツボ火山が噴火したときには、地球の気温がわずかに下がったことが知られています。
このほか、石炭を燃焼させても二酸化硫黄は発生します。ただし、同時に二酸化炭素も発生するため、「地球温暖化の原因を抑制するために石炭の利用を減らしたことで、温暖化を抑えていた二酸化硫黄の排出も抑制されていた」という皮肉な状態になっているとCNBCは記しています。
「海洋雲増光」は、海塩の結晶を空中散布することで、海面に近い雲の太陽光反射率を高める試み。そして「巻雲薄化」は自然に巻雲が形成されるときよりも密度が薄くなるように、航空機やドローンで氷核を散布する手法。巻雲の寿命が短くなることで、大気上部の赤外線放射量が増え、対流圏の水蒸気と赤外線放射が減少して気温が下がるという仕組みです。
1989年から太陽光反射に取り組んでいるハーバード大学のデビッド・キース教授によれば、以前に比べればこのテーマは真剣に議論されるようになっているとのこと。
ただ、CNBCは太陽光反射が気候変動の解決策だとは誰も言っておらず、最優先事項は温室効果ガス排出量削減であることに変わりはないとくぎを刺しています。
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