A4サイズの紙が広く使われているのには数学的に美しい理由がある
「紙のサイズ」と聞けば「A4」「A3」「B1」「B2」といった表記を連想する人は多いはず。コピー用紙やノートのサイズに用いられるこの表記は、紙の寸法を規定する国際規格・ISO 216によって定められているもので、アメリカなど一部の国を除いたほとんどすべての国や地域で採用されています。一体なぜ「A4」サイズが広く使われているのかについて、数学ライターでYouTuberでもあるBen Sparks氏が解説しています。
Why A4? – The Mathematical Beauty of Paper Size - Heidelberg Laureate Forum - SciLogs - Wissenschaftsblogs
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多くの人は学業や仕事などさまざまな場面でA4サイズの紙やノートに触れてきたはずですが、実際に正確な寸法を測ったことがある人はそれほど多くないかもしれません。A4サイズの紙は長辺が297mm、短辺が210mmとなっています。210mmはともかく297mmという数字はかなり中途半端であり、実際にSparks氏は学生時代、同級生が「297mm?なぜ300mmではないの?」と言った時のことを覚えているそうです。
しかし、このISO 216によって定められたサイズの紙には、ある重要な特徴があります。それは、「半分に折ったり切ったりすると、同じ縦横比で1回り小さいサイズになる」という点です。A4サイズの紙を半分に折るとA5サイズ(148mm×210mm)となり、逆にA4サイズを2枚つなげるとA3サイズ(297mm×420mm)となります。A1・A2・A3・A4などの紙はいずれも同じ縦横比ですが、もしもA4のサイズがキリよく「300mm×200mm」だった場合、半分に折ると縦横比は変わってしまいます。
半分に切ると同じ縦横比で1回り小さなサイズになるということは、A1サイズの紙1枚からA2サイズの紙を2枚作ったり、A4サイズの紙を8枚作ったりする際にまったく無駄が出ないことになります。また、何かを印刷したりコピーしたりする際も「A3サイズの紙に2面並べて印刷して、後から半分に切ってA4サイズのプリントを2枚作る」といったことが可能です。一方、北米などで一般的なレターサイズ(215.9×279.4mm)ではこれができません。
A4サイズの紙がこのような大きさになったのは偶然ではありません。「半分に切っても縦横比が同じ紙」というアイデアは、少なくとも1786年にドイツの学者であるゲオルク・クリストフ・リヒテンベルクが記した書簡で議論されており、それ以前から数学の問題として存在していた可能性も示唆されているとのこと。20世紀初頭になるとこのアイデアが世界的に標準化され、記事作成時点ではISO 216として定められています。
A4やB3などの紙の縦横比は「長辺:短辺=√2:1」となっており、これが唯一「半分に切っても縦横比が同じになる」という条件を満たす比率です。√2は整数比で表せない無理数であるため、実際には近似値が用いられています。
また、A0のサイズである「1189mm×841mm」は面積が1m2になるように決められていることから、A4サイズの面積は1m2(10000cm2)の16分の1で625cm2と算出できます。紙の重量についても、どれか1つのサイズの重さがわかっていれば、簡単に他のサイズの重さを算出することが可能です。
Sparks氏は、「誰かが過去に数学をやってくれたおかげで、現代人が便利なものを手にしていることがしばしばあります。彼らのおかげで、私たちの生活の最も基本的な側面まで数字とその性質に支配されていることを安心して忘れられます。しかし私たちは、数学をよく理解している人たちから大きな恩恵を受けているのです」と述べました。
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