サイエンス

新型コロナウイルス「オミクロン株」の長期症例化は他の変異株よりも低いことが明らかに


新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の変異株のひとつであるオミクロン株(B.1.1.529系統)は、2021年11月に最初に検出されてから世界中で急速に広がっており、他の変異株を超える猛威を振るっています。そんなオミクロン株に関する研究論文から、オミクロン株は他の変異株よりも長期症例化する確率が低いことが明らかになっています。

Risk of long COVID associated with delta versus omicron variants of SARS-CoV-2 - The Lancet
https://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(22)00941-2/fulltext

世界中のあらゆる国における新型コロナウイルスのパンデミックに関する統計情報をまとめたOur World in Dataのデータによると、ヨーロッパで2021年12月から2022年3月にかけて報告された新型コロナウイルスの症例数において、オミクロン株は他の変異株の症例数を上回っています。

2022年6月に学術誌のThe Lancetに公開された「新型コロナウイルスのデルタ株とオミクロン株に関する長期化リスク」という論文によると、オミクロン株は少なくともワクチンを接種した集団において、これまでに報告されてきた変異株よりも深刻な急性疾患を引き起こすことがないことが判明したものの、同時に多数の人々が長期的な症状を経験している可能性があることが指摘されています。


この研究では、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のオミクロン株とデルタ株の長期症例を比較しています。なお、長期症例の定義は「COVID-19の発症から4週間以上が経過してから、新たな症状が発生したり進行中の症状が続いている」で、これはアメリカ国立衛生研究所(NIH)のガイドラインに沿って定義されたものです。研究では、キングス・カレッジ・ロンドンの研究チームが開発したCOVID-19の症状追跡アプリで収集したデータを分析しています。

調査対象となったのはワクチン接種前はCOVID-19に感染した経験がなく、2021年12月20日から2022年3月9日(約2カ月半)までの期間にワクチン接種後にSARS-CoV-2のPCR検査あるいはラテラルフロー抗原検査で陽性と診断され、陽性と判断されてから少なくとも28日(4週間)以上、アプリで週1回以上症例報告を続けた成人のイギリス人感染者(5万6003人)に限定されています。このうち70%以上がオミクロン株に感染したものと推定されているため、同期間における症例は基本的に「オミクロン株の症例」とされています。

研究チームはこの「オミクロン株の症例」を、2021年6月1日から2021年11月27日の間に同様の検査で陽性と診断された4万1361人分の成人イギリス人の症例データを比較。なお、同期間における症例の70%超がデルタ株に感染したものと推定されるため、同期間の症例は同研究では「デルタ株の症例」とされています。


2つのデータを比較したところ、女性は男性よりも発症率が高く、「オミクロン株の症例」の場合は55%、「デルタ株の症例」の場合は59%が女性です。「オミクロン株の症例」と「デルタ株の症例」は感染者の年齢層が近く、感染者の平均年齢は「53歳」、併存疾患の有病率は「19%」でした。また、IMDのスコアはオミクロン株がデルタ株よりもわずかに低めです。

さらに、COVID-19の長期症例と感染期間の関連を評価するため、「オミクロン株の症例」と「デルタ株の症例」の性別・IMD・年齢・併存疾患の有無・ワクチン接種状況(何度目の接種か)・体格指数(BMI)などを比較。さらに、ワクチン接種からCOVID-19に感染するまでの時間(3カ月、3~6カ月、6カ月以上)により、感染者を3つのグループに分け、ワクチン接種から時間が経過することで免疫力がどの程度低下するかを考慮したうえで、分析を行っています。

分析の結果、「オミクロン株の症例」は5万6003人中2501人(約4.5%)が長期症例を経験しているのに対して、「デルタ株の症例」では4万1361人中4469人(10.8%)が長期症例を経験しています。また、ワクチン接種からCOVID-19に感染するまでの時間(3カ月、3~6カ月、6カ月以上)ごとのグループで分けても、「オミクロン株の症例」は「デルタ株の症例」よりも長期症例化する確率が低いです。


この研究はオミクロン株の長期症例に関するリスクについて報告した初の査読付き論文です。なお、今回の研究でワクチン未接種者のCOVID-19長期症例についてのデータが含まれていない理由は、「データが不十分であり、子どもにおける影響を考慮することが難しかったため」です。

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in サイエンス, Posted by logu_ii

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