オミクロン株の派生株「BA.2」はデルタ株の重症化率とオミクロン株の感染力&抗ワクチン性を兼ね備えているという研究結果
東京大学医科学研究所の佐藤佳准教授が率いる研究チームが新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のオミクロン変異株のさらなる派生株「BA.2」に関する研究結果を発表しました。佐藤氏らによると、BA.2はデルタ株の重症化率とオミクロン株の抗ワクチン性を併せ持っています。
Virological characteristics of SARS-CoV-2 BA.2 variant | bioRxiv
https://www.biorxiv.org/content/10.1101/2022.02.14.480335v1
Coronavirus: As BA.2 subvariant of Omicron rises, lab studies point to signs of severity - CNN
https://edition.cnn.com/2022/02/17/health/ba-2-covid-severity/index.html
今回の研究対象となった「BA.2」は、オミクロン株である「BA.1」から派生したとみられる変異株。検査での特定が困難という特徴から「ステルスオミクロン」とも呼ばれるBA.2について、新たに佐藤氏らは「オミクロン株より強力なデルタ株に相当する重症化率を示す」「オミクロン株同様にワクチンによる免疫応答を回避する」という2点を明らかにしました。
以下は佐藤氏らが発表した論文の概要について、佐藤氏自身が解説しているツイートです。今回の研究によって判明したポイントは、BA.2の感染力は「BA.1の1.4倍」相当で、すでにデンマークやインド、フィリピンでは感染の主流がBA.2に置き換わりつつあるという点。なお、報道によるとバングラディッシュ、ブルネイ、中国、デンマーク、グアム、インド、モンテネグロ、ネパール、パキスタン、フィリピンなど少なくとも10か国で実際にBA.2が優勢となっており、このうちデンマークでは入院率および死亡率の上昇が確認されているとのこと。
以下、本研究の概要です。
— The Sato Lab (Kei Sato) (@SystemsVirology) February 16, 2022
1⃣ ウイルス配列の数理統計解析によって、BA.2(ステルスオミクロン)の #伝播力 は、BA.1(従来のオミクロン)よりも約1.4倍高いことを明らかにしました。実際、デンマークやインド、フィリピンなどの国では、すでにBA.2への置き換わりが進んでいます。2/6 pic.twitter.com/qt2OfaHLBW
上記以外にも、ワクチン接種者の血清を使った中和試験の結果、BA.2はワクチンによって誘導される中和抗体にきわめて抵抗性である上に、オミクロン株に対して有効とされている新型コロナウイルス感染症治療薬「ソトロビマブ」にまで耐性を有するという点。
2⃣ ワクチン接種者の血清を使った中和試験の結果、BA.2(ステルスオミクロン)は、BA.1(従来のオミクロン)と同様、ワクチンによって誘導される中和抗体にきわめて抵抗性であることを明らかにしました。3/6 pic.twitter.com/Y7ZYvzf3yl
— The Sato Lab (Kei Sato) (@SystemsVirology) February 16, 2022
ハムスターやマウスを使った実験によると、BA.1で獲得した免疫がBA.2に対しては効きづらいという点。
3⃣ BA.1に感染して回復したハムスター、あるいは、BA.1のスパイクタンパク質で免疫したマウスの血清を使った中和試験の結果、BA.1で獲得した免疫は、BA.2に対して効きづらいことを明らかにしました(実験動物の血清を使ったのは、ワクチン未接種のBA.1感染回復者の血清の収集が不充分なため)。4/6 pic.twitter.com/UzbRpFzREk
— The Sato Lab (Kei Sato) (@SystemsVirology) February 16, 2022
人工的に合成した「BA.2のスパイクタンパク質を有する新型コロナウイルス」は、ハムスターを使った実験でBA.1より高い病原性を示しており、細胞内での増殖速度も速いという点などが分かりました。
4⃣ BA.2の臨床分離株がまだ未取得であったため、BA.2のスパイクタンパク質を持った新型コロナウイルス "BA.2 S" を人工合成し、ハムスターを用いた感染実験を実施しました。その結果、"BA.2 S" の病原性は、BA.1よりも高く、従来株(図中「B.1.1」)と同等であることを明らかにしました。5/6 pic.twitter.com/cUuLDqRKWX
— The Sato Lab (Kei Sato) (@SystemsVirology) February 16, 2022
以上の点から、佐藤氏は「BA.2(ステルスオミクロン)は伝播(でんぱ)力、病原性、免疫抵抗性のいずれにおいても、BA.1(従来のオミクロン)よりもリスクが高い」と述べ、日本国内での感染が広まりつつあるBA.2について警戒すべきだと主張しています。
まとめ▶️ BA.2(ステルスオミクロン)は、伝播力、病原性、免疫抵抗性のいずれにおいても、BA.1(従来のオミクロン)よりもリスクが高い可能性があります。BA.2はすでに日本に流入しています。流行の動向は今後の対策次第ですが、リスクの高い変異株が出現していることに警戒すべきと考えます。6/6
— The Sato Lab (Kei Sato) (@SystemsVirology) February 16, 2022
なお、今回の論文はまだ査読を受けていない「プレプリント」の状態です。アメリカ国内における感染症対策を主導する疾病予防管理センター(CDC)のロシェル・ワレンスキー所長は「BA.2系統がBA.1系統よりも深刻であるという証拠はありません。CDCは、国内外に流行している変異型の監視を続けています」と回答しています。
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