「オミクロン株ステルス搭載バージョン」が見つかる、PCR検査での変異株特定が従来より困難に
新型コロナウイルスのオミクロン株がさらに変異した「ステルス型」の系統が、イギリスとオーストラリアで相次いで発見されました。この新しいオミクロン株は、従来のオミクロン株の変異を受け継ぎながらも、PCR検査でオミクロン株を迅速に特定するのに使われていた遺伝的特長を持たないため、特定が難しくなると危惧されています。
Omicron Variant: Scientists Discover Version Harder to Detect - Bloomberg
https://www.bloomberg.com/news/articles/2021-12-08/australia-finds-new-omicron-lineage-in-arrival-from-south-africa
Scientists find ‘stealth’ version of Omicron that may be harder to track | Coronavirus | The Guardian
https://www.theguardian.com/world/2021/dec/07/scientists-find-stealth-version-of-omicron-not-identifiable-with-pcr-test-covid-variant
イギリスの大手紙・The Guardianは2021年12月7日に、PCR検査で特定しにくい新型コロナウイルスのオミクロン株が発見されたと報じました。2021年11月に南アフリカで発見されたオミクロン株は、多くのPCR検査が標的とする3つの遺伝子のうち1つが検出されない「S遺伝子ドロップアウト」という特長を持つため、PCR検査の段階で他の新型コロナウイルスと容易に区別できました。しかし、新たに発見されたオミクロン株はS遺伝子ドロップアウトを持たないことから、PCR検査での変異株特定が困難になります。
この発見を受けて、研究者は従来のオミクロン株である「BA.1」と区別するため、新しいオミクロン株を「BA.2」と名付けました。また、検査で特定するのが困難な特長から、一部の研究者は非公式に「ステルス型」と呼称しているそうです。
インドにある科学産業研究評議会ゲノミクス・統合生物学研究所の生物学者であるVinod Scaria氏は、BA.2系統のオミクロン株の発見について「疫学的な監視を強化するためのものなので、怖がる必要はありません」とコメント。
????The B.1.1.529 #Omicron lineage is now split to BA.1 and BA.2 . BA.1 will now have the original lineage and BA.2 will encomapss the new outlier with around 24 mutations.
— Vinod Scaria (@vinodscaria) December 7, 2021
???? PS: This is for better epidemiological surveillance & nothing to be scared yet. https://t.co/4y1RVf5Ej8
スイス・ベルン大学の疫学者であるEmma Hodcroft氏は、PCR検査の有効性について「BA.2ではS遺伝子ドロップアウトを使った『裏技』が使えませんが、PCR検査自体は引き続き機能します」と説明しました。
One key mutation that BA.2 is missing is the S:69/70del -- the one that causes the SGTF/S-drop-out. This means we can't use this 'shortcut' to find possible Omicron cases *for BA.2 only*. However, *the PCR test itself still works!* You'd test + for SARS-CoV-2.
— Dr Emma Hodcroft (@firefoxx66) December 7, 2021
6/N
イギリスでの発見に続き、オーストラリア・クイーンズランド州の最高衛生責任者代理のピーター・エイトケン氏は12月8日に記者会見を開き、「南アフリカから入国し、4日に新型コロナウイルス陽性反応が出ていた旅行者から、新しいオミクロン株の系統が発見されました」と発表しました。エイトケン氏によると、新系統のオミクロン株は30以上あるオミクロン株の変異のうち14個を持つ一方で、S遺伝子ドロップアウトを持たないとのこと。
オーストラリアで発見された新しいオミクロン株が、イギリスで見つかったBA.2と同じものかどうかは記事作成時点では不明ですが、S遺伝子ドロップアウトを持たないという点では共通しています。
エイトケン氏は新しいオミクロン株がオーストラリア国内で見つかったことについて、「すべての地域でオミクロン株が流行する可能性があることを人々が認識する一助となるでしょう」とコメントしました。
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