チンパンジーが390もの構文を使って会話をしていることが鳴き声5000回の録音から示唆される
野生のチンパンジーの鳴き声5000回を録音して解析した新しい研究により、チンパンジーは12種類の異なる鳴き声を複雑に組み合わせて390通りもの「構文」を作っていることが明らかになりました。
Chimpanzees produce diverse vocal sequences with ordered and recombinatorial properties | Communications Biology
https://doi.org/10.1038/s42003-022-03350-8
Chimpanzees combine calls to form numerous vocal sequences | Max-Planck-Gesellschaft
https://www.mpg.de/18653265/0517-evan-chimpanzees-combine-calls-to-form-numerous-vocal-sequences-150495-x
Thousands of Chimp Vocal Recordings Reveal a Hidden Language We Never Knew About
https://www.sciencealert.com/thousands-of-recordings-of-chimpanzees-reveal-a-hidden-language-we-never-knew-about
地球上で唯一言語を使うことが知られている人類は、音を組み合わせて単語を作り、単語を組み合わせて文章を作ることができます。他の生き物にはないこの能力がどこから来たのかを解明するため、科学者らは動物の発声についての研究を重ねていますが、それらのほとんどは単発の鳴き声を使うもので、音を組み合わせて一連の音声パターンを作ることはほとんどありません。また、霊長類の中でも特に人類に近いチンパンジーはいくつかの鳴き声を組み合わせることが知られているものの、鳴き声のレパートリー全体を網羅して定量的に分析する研究は行われてきませんでした。
そこで、ドイツのマックス・プランク進化人類学研究所の研究チームは、コートジボワールのタイ国立公園に生息する3つのチンパンジーの群れを調査し、野生の成体のニシチンパンジー46頭からのべ900時間に及ぶ音声記録を収録しました。
そして、録音されていた5000回の鳴き声を分析したところ、チンパンジーの鳴き声はうなり声(Grunt)、ホーという声(Hoo)、ほえ声(Bark)、叫び声(Scream)、泣き声(Whimper)、息を吸いながら音を出すあえぎ声(Pant)などの種類があることが判明しました。これらは、例えば「単体でのうなり声(Grunt)は餌を見つけた時に使われるが、あえぎ声と組み合わせて出すうなり声(Panted grunt)は服従的なあいさつに使われる」というように使い分けられていたため、研究チームがこれらの音声を分類したところ、合計で12種類の基本単位となる鳴き声が特定されました。
研究チームがさらに分析を進めると、12種類の鳴き声は「単発」、2つ組み合わせた「二重音(bigrams)」、3つ組み合わせた「三重音(trigram)」で使われており、その組み合わせ方が合計で390通りもあることが突き止められました。
この結果について、研究チームは論文の中で「チンパンジーの発声系では、12種類もの鳴き方が1つの単位や二重音、または三重音以上のシークエンスとして柔軟に使用されており、何百もの異なる意味を符号化することができる可能性があります。これはヒトの言語が生み出すことができる無限の文章の組み合わせに比べればかなり小さいものの、従来の霊長類の発声系として考えられていた以上の構造を提示しました」と位置づけました。
研究チームは今後、今回見つかった音声の組み合わせがどのような意味を持つのかや、チンパンジーがコミュニケーションに使う話題の幅を広げることは可能なのかについて調査していく考えとのことです。
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