世界中で発生している穀物不足が数千万人を危険に晒している


ロシアとウクライナ間で勃発している戦争やインドを襲った熱波などの影響により、世界中で穀物が大幅に減産している事が伝えられています。経済メディアのThe Economistは「世界の穀物不足が数千万人を危険に晒す」として、この問題を論じています。

A world grain shortage puts tens of millions at risk | The Economist
https://www.economist.com/briefing/2022/05/19/a-world-grain-shortage-puts-tens-of-millions-at-risk

2020年半ばから始まったラニーニャ現象や新型コロナウイルス感染症の流行などにより、さまざまな地域で農作業とサプライチェーンに混乱が生じており、これにより世界的な穀物不足が起きています。国連世界食糧計画(WFP)は過去5年間で食料を十分に確保できない人の数は1億800万人から1億9300万人に増加したと報告し、2022年2月のミュンヘン安全保障会議において「すぐに状況に対処する必要がある」と語っていました。


しかし、この会議の直後にロシアがウクライナへ侵攻したことで状況は悪化の一途をたどることに。ロシアは世界1位の小麦輸出国であり、ウクライナも6位に位置しています。この2国だけで2021年の小麦輸出量の28%を占めていますが、ロシアは各国からの経済制裁により、ウクライナは自国の輸出遮断により穀物の輸出量を大きく減らしたため、穀物価格が急騰しました。

さらに、3月には小麦の生産量が世界第3位のインドを記録的な熱波が襲い、小麦の収穫量が大幅に減少しており、同国では小麦の輸出制限が課せられています。なお、2022年5月時点でインドのように食品に輸出制限を課している国は26カ国もあるとThe Economistは報告しています。

The Economistは「東アジア諸国は食を米に切り替えることができますが、ヨーロッパや北アフリカなどはアメリカの2倍はパンを食べているため、食事に劇的な変化が訪れるでしょう」と分析。特に収入の大部分が食事に費やされる貧しい国は大きく影響を受けるとし、債務負担が持続不可能になる可能性を指摘しています。


戦争の被害を大きく受けたウクライナ・キーウで農業を営むオレナ・ナザレンコ氏は、春小麦に必要な肥料を多額のローンを組んで手に入れたにもかかわらず、まだ小麦を植えていない段階でロシア軍に占領されたと話します。ナザレンコ氏の農場は爆撃によりトラクターや家畜に被害を受けたとのことで、「給料も払えない。ローンの利子を払うのが精一杯だ」と話しました。

ウクライナでは2021年に収穫された穀物のうち、輸出されるはずだった2500万トンがまだ国内に残されたままだとのこと。ウクライナのミコラ・ソルスキー農業省は「戦争前は月に500万トンだった輸出量が、4月には110万トンになってしまった」と話します。


多くの国で穀物不足の状態にありますが、農家は販売価格が不安定な穀物を植えるのではなく、投入コストの低い作物に切り替えることを検討しているとのこと。例えば、アメリカでは多くの農家がトウモロコシから大豆に生産を切り替えているとのことです。

The Economistは「世界の実質所得が大きく減少している今、飢餓に苦しむ国々に多くの負担がのしかかることは、社会的、政治的に著しく不均衡をもたらすように思えます」と記しました。

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in , Posted by log1p_kr

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