Googleに買収されPixel Watchが登場してもFitbitは消えない
Googleは2019年にフィットネストラッカーメーカーのFitbitを買収し、2022年にはFitbitのテクノロジーを用いて開発した独自のスマートウォッチである「Google Pixel Watch」を発表しました。Googleによる買収以降からFitbitの先行きを不安視する声は上がっていたのですが、Pixel Watchの登場により「もはやFitbit製品は登場しなくなるのでは?」という考えを持つ人もいるはず。そんな中、Fitbitの共同創設者でありGoogleのウェアラブル部門を率いるジェームズ・パーク氏が、「今後もFitbit製品は増え続ける」と語りました。
Fitbit Co-Founder: Pixel Watch Won't Kill the Fitbit - CNET
https://www.cnet.com/tech/mobile/fitbit-co-founder-pixel-watch-wont-kill-the-fitbit/
Android Developers Blog: Introducing Health Connect, a new API for Android app developers to securely access user health data
https://android-developers.googleblog.com/2022/05/introducing-health-connect.html
GoogleがFitbitを買収したのは2019年のことで、買収が発表されて以来、Googleがひっそりと開発を続けてきたスマートウォッチ向けOSのWear OSを搭載したFitbit製品が登場するのではと予想されてきました。そして2022年5月についに発表されたのが、Google初の独自開発スマートウォッチであるPixel Watchです。
Google純正のスマートウォッチ「Google Pixel Watch」がついに登場 - GIGAZINE
Pixel Watchは発表されたばかりで、その詳細はほとんど発表されておらず、FitbitのテクノロジーとGoogleのテクノロジーがどのように融合するのかはまだ謎のままです。そんな中、海外メディアのCNETが、Fitbitの共同創設者であり、記事作成時点ではGoogleのウェアラブル部門を率いるパーク氏にインタビューを行いました。この中で、Fitbitが販売してきたフィットネストラッカー製品は今後も登場することが明言されています。
パーク氏はPixel WatchとFitbitの将来について、「大まかに言えば、Fitbitの使命はGoogleでも継続しています。その使命は『世界中のすべての人の健康面を支援する』ということです。Pixel Watchはさまざまな価格帯に適合する、GoogleとFitbitのデバイスファミリーの一部になる予定です。つまり、Pixelブランドではスーパープレミアムなデバイスをリリースし、Fitbitでは他の価格帯の端末を引き続き提供していきます」と語り、Pixel WatchはGoogleが提供するPixelブランドの一員としてリリースされるものの、Fitbitブランド製品と同様の「世界中のすべての人の健康面を支援する」という使命を担う製品になると説明しています。
ただし、パーク氏は「私が言えることには限りがあるので明言は避けますが、時間の経過とともにFitbitブランドのメリットをできるだけ多くPixel Watchにもたらしたいと考えています。リック(Googleのハードウェア部門のトップであるリック・オステロー氏)はI/Oの中でPixel Watchの継続的な心拍数計測機能と睡眠トラッキング機能について話しました。これはPixel Watchにとって最初は非常に重要な機能となります。そしてこれだけでなく、今後のソフトウェアアップデートで改善を続けていく予定です」とも語っており、リリース時からPixel WatchがFitbit製品で使用できるようなヘルスケア機能をすべて使えるわけではないとしています。
さらに、「Pixel WatchがFitbit製スマートウォッチの将来の方向性か?」という質問に対して、パーク氏は「Pixel WatchはLTE接続とすべての高度なヘルスケア・フィットネス関連機能を必要とするユーザー向けの端末ですが、その中の一部を重要としない人も存在します。そういった人々って、最先端のヘルスケア機能を備えたフィットネストラッカーは、まさに彼らが望むデバイスそのものです。それが最新のヘルスケア関連センサーを備え、スリムで長時間のバッテリー寿命を持ったFitbit製品です。PixelとFitbitを組み合わせることの素晴らしい点は、これらのさまざまなデバイスをまとめて提供できることです。ユーザーは自分に最適なものを選ぶことが可能になります」と語りました。
加えて、パーク氏はFitbitのSenseやVersaといったスマートウォッチについて、「SenseとVersaの利点のいくつかは常に継続します。これらのデバイスおよびトラッカーは常に信じられないほどのバッテリー寿命を実現しています。さらに、これらの製品はユーザーにとって手ごろな価格です。こういった利点は引きつづき重要になります」と語っており、Fitbitブランドからリリースされているスマートウォッチ製品についても、Pixel Watch登場以降も販売が続くことを示唆しています。
さらに、Google独自のフィットネスアプリであるGoogle FitとFitbitアプリが、Pixel Watch上でもそのまま別個のアプリとして継続することになるとパーク氏は示唆しました。これについて、パーク氏は「どちらのアプリのユーザーもこれまでのエクスペリエンスを中断したいとは思っていないはずです。両方のユーザーグループはさまざまな理由から使用しているアプリを気に入っているはずです。そのため、今のところはアプリを統合するなどの変更を加える予定はありません」と語っています。
パーク氏はPixel WatchがFitbitのSenseやCharge 5に搭載されているようなECG(心電図)センサー・ストレスセンシング・温度センサーといった機能が搭載されるかという質問に対して、「搭載されるセンサーについて詳細を話すことはできません」としつつ、「Pixel Watchには最先端のヘルス関連センサーが搭載される予定」と説明しています。
パーク氏はPixel WatchとFitbitが共存する未来を示唆しましたが、これを実現するための新しいイニシアチブとして、Googleはヘルスケアアプリとフィットネスアプリの間の接続を簡素化し、ユーザーがアプリ間でデータを共有できるようにするAPIの「Health Connect」を発表しています。Health Connectは各アプリが計測したヘルスケアあるいはフィットネス関連のデータを相互に共有するためのものです。通常、機能が重複するようなアプリをひとつの会社がリリースすることは無駄以外の何ものでもありません。しかし、機能が重複するようなアプリ間でデータを共有できるHealth ConnectのようなAPIが登場することで、Google FitとFitbitアプリのような類似アプリを統合せずに別個で運用することが可能となります。
また、GoogleがHealth Connectをリリースした理由はPixel WatchとFitbitのためだけではありません。Googleの開発するWear OSはSamsungをはじめとするさまざまなスマートウォッチメーカーが採用しているOSであり、それぞれのメーカーが別個にヘルスケアアプリやフィットネストラッキングアプリをリリースしています。Health Connectを用いてこれらのアプリ間でのデータ共有を可能にすることで、ユーザーは自分の好みのアプリを自由に選択できるようになるわけです。
なお、Pixel Watchの登場で今後の方針が疑問視されたSamsungも、Wear OSの採用を続けること、そしてHealth Connectを独自のフィットネスアプリやヘルスケアアプリでサポートすることを発表しています。Google・Fitbit・Samsungの他にも、MyFitnessPal、Leap Fitness、Withingsといったヘルスケアおよびフィットネス関連アプリの開発者が、Health Connectの早期アクセスプログラムに参加しています。
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