「コロナ」「サイバー攻撃」2つの影響を受け創立157年のリンカーン・カレッジが閉校
アメリカ・イリノイ州の郊外に建つ私立大学のリンカーン・カレッジが、2022年5月13日をもって閉校とすることを明らかにしました。同校は閉校の理由を新型コロナウイルス感染症(COVID-19)やランサムウェア攻撃による混乱および学生数の減少、それらに伴い発生した財政難だと説明しました。
Lincoln College - Associates & Bachelors Degree Programs
https://lincolncollege.edu/
Ransomware attack, Covid combine to shutter Illinois college
https://www.nbcnews.com/tech/security/ransomware-attack-covid-combine-shutter-illinois-college-rcna24905
リンカーン・カレッジは5月13日に訪れる春学期の終わりをもってすべての教育プログラムを終了し、永久に閉校とすることを明らかにしました。すでにイリノイ州高等教育高等学習委員会に通知済みで、ホームページにも大きく同様の内容を掲載しています。
ホームページには「リンカーン・カレッジは1887年の経済危機、1912年のキャンパス大火災、1918年のスペイン風邪、大恐慌、第二次世界大戦、2008年の世界金融危機など、多くの困難で厳しい時代を生き抜いてきましたが、今回は違います」と記されています。
リンカーン・カレッジは2019年に記録的な数の学生が入学して学生寮の収容人数が史上最大となるなど良好な状況でしたが、COVID-19のパンデミックが多大な影響を及ぼし、学生募集や資金調達といった経営面や、スポーツイベントを始めとするすべてのキャンパスライフに変化が訪れたとのこと。パンデミックによってもたらされた経済的負担がテクノロジーとキャンパスの安全対策に重くのしかかり、授業の延期や休学を選択する学生の増加で入学者数が大幅に減少したため、財政状況が傾いたと同校は説明しています。
さらに、リンカーン・カレッジは2021年12月にランサムウェア攻撃を受けたため、2022年秋に入学する学生の募集や維持、募集に向けての資金調達に必要なすべてのシステムが機能停止に陥ってしまいました。2022年3月にシステムが完全に回復したものの、登録された学生数が大学を維持するために必要な数を大幅に下回っていると判明したとのこと。このため、同校は資金調達キャンペーンや資産の売却、従業員の配置転換などの財務体質の強化に取り組みましたが、努力は実らず、最終的に閉校とすることが決定されました。
by Mark Gordon
なお、卒業者が取得した学位や、学生が取得した単位はそのまま維持されるとのこと。在校生に対しては、次の大学を探すための専門のカウンセラーによる面談を行いサポートすると説明されています。また、次年度から入学するはずだった新入生に対しては、可能な限り早く入学金や寮費の返還を行うとしています。
閉校の原因となったランサムウェア攻撃は教育機関に大きな被害をもたらしており、2021年に発表された調査結果では「2020年だけで1740校以上の学校がランサムウェア攻撃の標的になり、7300億円分の被害がもたらされた」ということが判明しています。教育機関にサイバーセキュリティ情報を共有する活動を行うキム・ミルフォード氏は「リンカーン・カレッジの閉校は、ランサムウェア攻撃の被害をことさら強調した出来事だと思います。今回のような深刻なケースで分かるように、ランサムウェア攻撃によりネットワーク全体が動作不能になり、壊滅的な経済的影響を被る可能性があるのです」と述べました。
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