新型コロナの影響で大学入学者数が100万人以上減少、経済への影響が懸念される

新型コロナウイルスの感染拡大によるロックダウンや物流の混乱などによって経済に大きな影響が出ていることが報じられています。そんな中、アメリカの大学生がパンデミック前と比べて100万人以上減少していることが報告され、今後の経済に大きな影響が出る懸念が生じています。

Current Term Enrollment Estimates - National Student Clearinghouse Research Center
https://nscresearchcenter.org/current-term-enrollment-estimates/

Americans choose jobs over college : NPR
https://www.npr.org/2022/01/13/1072529477/more-than-1-million-fewer-students-are-in-college-the-lowest-enrollment-numbers-

教育機関に関する研究結果を定期的に発表しているNational Student Clearinghouse Research Centerが、新型コロナウイルス感染拡大以前と以降におけるアメリカの大学入学者数や大学在籍者数の推移に関する研究結果を2022年1月13日に公開しました。この研究結果によると新型コロナウイルスが流行する前の2019年におけるアメリカのコミュニティ・カレッジ(2年制カレッジ)への入学者数は536万8470人でしたが、新型コロナウイルスが流行し始めた2020年には482万4204人に減少し、2021年には2019年比13％減の466万2364人にまで減少したとのこと。

4年制大学の入学者数は2015年以降減少傾向にありましたが、2019年～2021年にかけて減少幅が大きくなり、2021年の4年制大学入学者数は2019年比6.6％減の1444万1432人となりました。

今回の研究を率いたダグ・シャピロ氏は大学入学者数が減少した理由について、アメリカの最低賃金が上昇したことによって高校の卒業生にとって進学より就労が魅力的な選択肢になったからだと指摘しています。一方で、シャピロ氏は「高校の卒業生にとって就労は非常に魅力的ですが、短期的な利益を長期的な損失と交換しているのではないかという恐れもあります。そして、彼らが大学から離れる時間が長くなるほど、再び進学を考える事は難しくなります」とも述べ、大学進学しないことで各個人が長期的な経済的損失を被る可能性を指摘しています。

大学進学者の減少は各個人だけでなく、社会全体の経済的損失につながる可能性もあります。例えば、ジョージタウン大学で教育と労働について研究するトニー・カーネベル氏は「労働者が就労前に訓練されていれば、彼らはより高い賃金の仕事を得てGDPの増大に貢献し、税金を増やし、福祉費や犯罪対策費などを削減します」と述べ、大学進学者が減ることで労働者のスキル向上による経済的メリットが得られなくなることを指摘しています。

アメリカでは、企業が労働者に求めるスキルと実際に労働者が持つスキルとの間にギャップがあることが指摘されており、このギャップを埋めるためにコミュニティ・カレッジが大きな役割を果たすことが期待されていました。しかし、今回の研究によってコミュニティ・カレッジへの入学者数がパンデミック以前と比べて1割以上減少していることが明らかになっており、カーネベル氏も「コミュニティ・カレッジの入学率の低下は労使間のスキルギャップが拡大することを意味しており、ビジネスに悪影響を及ずことを示しています」と述べています。

コミュニティ・カレッジの1つであるヴァレンシア・カレッジでは、パンデミックの影響で学生が離れることを防ぐべく、講義の再受講に必要な申請手続きの締め切りを延長したり、申請料金を免除したりといった取り組みを行っています。しかし、シャピロ氏は「大学入学者が減少し続けるということは恐ろしい考えです。私はそうならないことを望んでいますが、実際には減少しつづけてしまうと考えています」と述べ、大学入学者数の減少は避けられないと推測しています。