ブルース・ウィリスが患った「失語症」とはどんな病気なのか?

by The New Insiders | Dave Adler
「ダイ・ハード」などで知られる俳優のブルース・ウィリス氏が「失語症」を理由に俳優業を引退するとの発表が行われました。この失語症とは一体どんな病気なのか、専門家のアビー・フォスター氏らが解説しています。
What is aphasia, the condition Bruce Willis lives with?
https://theconversation.com/what-is-aphasia-the-condition-bruce-willis-lives-with-180399
2022年3月30日、ブルース・ウィリス氏の妻エマ・ヘミング氏、前妻のデミ・ムーア氏、5人の子どもたちが連名で「私たちのブルースが認知能力に影響を及ぼす失語症と診断されました。熟考を重ねた結果、彼にとって大きな意味を持つことですが、俳優業から引退することになりました」と発表しました。
ウィリス氏の40年にもわたるキャリアに終止符を打った病「失語症」の専門家であるフォスター氏らによると、失語症とは主に「言葉を探す」という行為が困難になる病で、具体的には発話したり、相手の言っている内容を理解したり、読んだり、書いたり、数字を扱ったりすることなどが難しくなるとのこと。
発話などが困難になると、会話や交渉、感情表現、自分の体験について語ること(ストーリーテリング)、質問、Eメールの作成などに影響が現れ、次第に情報をやりとりする能力や人間関係にまつわる能力などコミュニケーションに関する問題が増加し、家族や友人との関係が変化したり公共交通機関での外出が厳しくなったり、アイデンティティに影響が出たりするため、結果としてうつ病やその他ネガティブな気分の変化がよく見られるようになります。
フォスター氏らによると、失語症の原因は脳卒中が一般的ですが、そのほかにも脳腫瘍や外傷性脳損傷、原発性進行性失語症のような神経変性疾患なども失語症を生じさせる可能性があり、原因や脳の状態に応じて重症度や症状の種類にはバラツキがあるとのこと。各種病気と失語症の関連性については、失語症が緩徐に進行する原発性進行性失語症は若者も発症しうるものの、主な発症者は50~75歳。脳卒中は患者の約3分の1が失語症を発症するとのことで、厚生労働省の「平成29年(2017)患者調査」によると脳卒中(脳血管疾患)の総患者数は1115万人なので、約370万人が脳卒中由来の失語症を患っている計算。こうした状況について、フォスター氏らは「発症率と症状の割には失語症の認知度は低い」と語ります。
脳血管疾患の患者数はどれくらい?|リスクに備えるための生活設計|ひと目でわかる生活設計情報|公益財団法人 生命保険文化センター
https://www.jili.or.jp/lifeplan/lifesecurity/1096.html

失語症の治療法については、フォスター氏は「失語症を治す方法は存在しない」と断言。しかしコミュニケーション障害の専門家である言語聴覚士とともに行うリハビリが大きな成果をあげることはあるそうで、近年では言語聴覚士が失語症の病状などに応じたリハビリプログラムを作成してくれるほか、iPadなどを活用した「オンラインリハビリ」も開発されているとのこと。
失語症の初期症状については、フォスター氏は「イヌ」を意味の近い「ネコ」や音の近い「イム」と言ってしまうような言い間違えや、無意味な言葉が出てくる、言葉が全く出てこない、他人の言っていることが理解できないなどがあると言及。これらの症状に伴って口周りや手足が動かしにくい場合は緊急性が高いため、すぐに医療機関に向かうべきだと語っています。
コミュニケーションに問題が生じる失語症は患者当人だけでなく周囲の人にも影響を及ぼしますが、ウィリス氏と家族の「失語症に正面から向き合う」という姿勢は愛の深さを示しており、「ブルースがいつも言っていた『Live it up(楽しんで暮らす)』に従って暮らそうと思っています」という一家の声明は世界の失語症の人々に希望を与えるものだとフォスター氏らはコメントしています。

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in サイエンス, Posted by darkhorse_log
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