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ウクライナの仮想通貨取引所の創業者が「戦争で人生がどのように変わったのか」を語る


ロシアのウクライナ侵攻が続く中で、ウクライナ政府は世界各国から「仮想通貨による寄付」を受け付けています。そこで海外メディアのBloombergが、ウクライナの仮想通貨取引所「KUNA」の創業者であり、ウクライナ政府の仮想通貨に関連した事業を支援するマイケル・チョバニアン氏にインタビューを行いました。

Ukraine’s Crypto Banker Describes How War Is Changing His Life - Bloomberg
https://www.bloomberg.com/news/articles/2022-03-31/ukraine-s-crypto-banker-describes-how-war-is-changing-his-life

KUNA Exchange Owner In Charge Of Ukrainian Government’s Virtual Crypto Fund | Bitcoinist.com
https://bitcoinist.com/kuna-exchange-in-charge-of-virtual-crypto-fund/

チョバニアン氏は過去6年間にわたりウクライナ最大の仮想通貨取引所「KUNA」を率いて、ウクライナにおける仮想通貨シーンの「父」として知られるようになった人物です。ウクライナでは以前から民間人の間で仮想通貨への注目度が高かったものの、政府機関による仮想通貨への取り組みはそれほど進んでおらず、政府が公式に仮想通貨を合法化したのは戦争開始後の3月のことでした。しかし、戦争中において仮想通貨は民間人から政府まで幅広く利用されており、ミハイロ・フェドロフ副首相は3月中旬に「全世界から6000万ドル(約74億円)以上の寄付が集まり、仮想通貨を利用して5500着の防弾チョッキや500個のヘルメット、3125台の暗視装置、医薬品、食料などを購入した」と報告しています。

その後も仮想通貨によるウクライナへの支援は続いており、調査会社・TRMはロシアとの戦争が始まってから5週間で、ウクライナ政府とウクライナを支援するNGOは合計1億ドル(約123億円)相当の仮想通貨を受け取ったと分析しています。

ウクライナが100億円超えの寄付を仮想通貨で集めることに成功 - GIGAZINE


ウクライナ政府が仮想通貨の重要性を認める中で、ウクライナの仮想通貨シーンにおいて重要な役割を担ってきたチョバニアン氏も、以前とは違った立場に置かれているとのこと。今回Bloombergが行ったインタビューは、3月12日と3月18日にメッセージングアプリ「Telegram」の音声録音を通じて行われたものです。

チョバニアン氏によると、戦争前のウクライナ政府は仮想通貨を正式には認めていなかったため、政府機関が仮想通貨企業のオフィスを取り締まるリスクがあったとのこと。そこでチョバニアン氏は、仮想通貨ビジネスを保護するために立ちあげられたブロックチェーン協会の会長を務めており、戦争前は政府の特務機関とのトラブルもあったと述べています。ウクライナにおいて初期から仮想通貨を推し進めてきたチョバニアン氏は、ウクライナ初の仮想通貨取引所を開設するなど仮想通貨シーンで大きな注目を集めていたため、ウクライナで初めて警察による捜索を受けた仮想通貨推進者だそうです。


政府による公式の認可こそなかったものの、ウクライナの仮想通貨シーンは戦争前から非常に活発でした。仮想通貨関連の調査企業であるChainalysisが2020年に発表した「Global Cryptocurrency Adoption Index(世界の暗号資産普及指数)」では、1人あたりの購買力平価などで重み付けした場合、ウクライナが仮想通貨の普及度において世界有数の国であることが示されています。首都のキーウは仮想通貨シーンの中心地であり、チョバニアン氏は「開発者はおそらく2~3000人いて、仮想通貨関連の多くの大企業がキーウにオフィスを構えており、ハッカソンや一般的なミートアップなど、仮想通貨技術者の集まりが毎週のように開かれていました。COVID-19以前は、文字通り数千人もの人々がミートアップに参加していました」と述べています。

チョバニアン氏は、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー現大統領がまだ大統領候補者だった時に面会したことがあるそうで、ウクライナにおけるIT企業や仮想通貨企業が必要とするものについて意見を交わしたとのこと。「当時、彼は仮想通貨についてあまり知っていませんでしたが、今は仮想通貨が国を救っているので、仮想通貨についてよくわかっています。その後は彼と話をしていないので、現在の彼の意見はわかりませんが、おそらく非常にポジティブな意見でしょう」とチョバニアン氏は語りました。


2月24日のことに話が及ぶと、「残念ながらその日の1時間ごとをしっかり思いだすことができます」とチョバニアン氏はコメント。24日のチョバニアン氏は他の多くの国民と同じく「本当に、本当に大きな音」で目を覚まし、すぐにネットでニュースをチェックしてロシア軍の侵攻を知ったとのこと。

以前からこうした事態が発生する可能性が高いとわかっていたため、チョバニアン氏は戦争が始まる2カ月前に、KUNAのメンバーの多くをウクライナ国外に避難させていたそうです。しかし、まだ国内に残っているメンバーとその家族がいたため、事前に計画していた通り24日の15時には全員がチョバニアン氏の家に集まり、車に荷物を乗せて比較的安全なウクライナ西部へ移動したと述べています。

その後、チョバニアン氏は軍隊には入らずに「政府のための仮想通貨銀行家」として活動しています。「私はあまり軍人に向いていません」と語るチョバニアン氏は、仮想通貨の収集、資金調達や保管、仮想通貨から別の仮想通貨への交換または法定通貨への交換、仲介者や政府のための銀行口座開設、国防省が必要とする物品の購入といった仕事を担当しているとのこと。

チョバニアン氏は、「私の役割は人々にとって必要なものを供給することと、できるだけ早く支払いができるようにすることです」と述べています。たとえば、国外の相手と銀行システムを通じた決済を行う場合、アメリカドルの入金に1日、入金を確認して支払いを行うために1日、そしてSWIFTを通じた決済に1日と合計3日かかるのに対し、ビットコインの決済は平均10分ほどで完了すると指摘。「つまり、通常は3日かかる処理に対して仮想通貨なら10分で済むため、私たちは仮想通貨を好むのです。私の国にとって今は『時は金なり』です。1分でも決済を短縮できれば少なくとも誰かの命を救うことができるため、私たちはプロセスのスピードアップを図っています」と語りました。


戦争が始まってから日常生活に変化があったか尋ねられたチョバニアン氏は、「最も顕著なのは時間の流れが全く変わってしまったということでしょう。だから2週間前のことなのか、2日前のことなのか、それとも2年前のことなのかよく思い出せないんです。もう1つは、何か大きな音がするとすぐにストレスを感じるようになったことです。(ロシア軍の侵攻が始まった)あの日、あの朝のことを思い出してしまうんです。家族も皆そうです」と答えました。なお、インタビューの時点では正確な所在地は明かせないとしつつも、キーウにはいないと述べています。

世界各国の仮想通貨コミュニティから大量の寄付が行われたことについては、「人々が助けてくれることはわかっていました。海外に住んでいるウクライナの裕福な仮想通貨事業者を大勢知っていますから。地元の人たちも助けてくれて、私たちは団結しています。昨日は競争相手でしたが、私たちは今、1つの大きな家族になっています。他にも、世界中にいる大物の仮想通貨億万長者の多くは私たちを個人的に知っているので、間違いなく助けてくれると思っていました」と述べ、今後はさらに多額の寄付が集まると予想しているとのこと。

また、チョバニアン氏はいつか仮想通貨が重要な役割を果たす日が来ると予想していたものの、それがまさか戦争だとは思っておらず、もっと平和的な方法だと考えていたと主張。そして、「こんな言葉があります。『アイデアは止められない。いつかその時がやってくる』仮想通貨はまさにそのようなものだと思います」と述べました。

今回の事態によってウクライナにおける仮想通貨市場は明らかに変化しているそうで、かつて流通していたウクライナフリヴニャやアメリカドルに代わり、保管や移動が容易な仮想通貨の価値が高まっているとのこと。「今、ウクライナで最も価値のあるお金の形態は仮想通貨です。仮想通貨は最も速く、柔軟で、簡単で、官僚的でない方法でお金を保管し、使用することができるため、誰もが仮想通貨を欲しがっています」とチョバニアン氏はコメントしています。

加えて、これまでは仮想通貨に対して懐疑的な人が政府・銀行・軍部に多かったものの、戦争後は仮想通貨が人々の命を救っていることが明らかであるため、政府も仮想通貨の力を無視することはできなくなったとチョバニアン氏は主張。「懐疑的な人々は皆、仮想通貨がここにあり、本当に便利であることを理解するようになったのです。これが最大の根本的な変化だと思います」と述べました。

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in メモ, Posted by log1h_ik

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