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Googleが「ウクライナ侵攻に『戦争』という単語を使うな」とロシア語の翻訳業者に指示している


Googleでロシア市場向けの文章を翻訳していた翻訳業者が、2022年3月上旬にGoogleから「ロシアによるウクライナ侵攻は『戦争』と呼ばずに『緊急事態』と表現するように」と指示するメールを受け取ったと報じられています。ニュースメディアのThe Interceptによれば、このGoogleの指示は、ウクライナ侵攻直後に制定されたロシアの検閲法に準拠する方針によるものとのことです。

Google Ordered Translators to Replace References to Ukraine “War”
https://theintercept.com/2022/03/28/google-russia-ukraine-war-censorship/

ロシアのプーチン大統領が2022年3月4日に署名した検閲法では、ロシア軍に関する誤情報を流すと最高で懲役15年が科されるなど、厳しい刑事罰が設定されています。この刑事罰の対象には、ウクライナ侵攻を「戦争」「侵攻」と称することも含まれると解釈されているため、ロシアによるウクライナ侵攻は、ロシア国内だと「特別軍事作戦」「(ウクライナの)緊急事態」などと表現されています。


欧米諸国がロシアに対して経済制裁を決定したのと同時に、多くの企業がウクライナ支持とロシアへの非難声明を発表し、製品やサービスをロシアに提供しないことを決定しました。Googleもウクライナ支持とロシアへの非難を表明し、ロシア政府によるプロパガンダの拡散を防ぐためのポリシーも導入。さらにロシアでの広告販売、ロシアにおけるGoogle Cloudの登録や決済機能を一時停止しました。

GoogleはGoogleマップやGmail、AdWordsといったサービス、さらにGoogleのポリシーページなどを世界各国の言葉に翻訳しています。ほとんどの翻訳はAIによって自動的に行われますが、コミュニティのルールやサポートページなど、自動翻訳だと表現に齟齬(そご)が生まれかねない場合、人間である翻訳業者のチェックが入るそうです。しかし、今回Googleが翻訳業者に送った指示は、ロシア側におもねった内容となっているとThe Interceptは述べています。

以下は、「デリケートな事象に関するポリシーの更新」の日本語ページで、「ウクライナでの戦争」と書かれています。


これに対して、ロシア語版では「чрезвычайные обстоятельства на Украине(ウクライナの異常事態)」という言い方になっています。


また、「ディスプレイ&ビデオ360ヘルプ」にある「制限されている商品とサービス」の日本語版のページだと、「ウクライナでの戦争」「現在の情勢(ウクライナでの戦争)」などと表示されています。


しかし、ロシア語版のページだと、「с чрезвычайными обстоятельствами на Украине(ウクライナの例外的な状況)」という言い方に変わっていました。The Interceptは翻訳指示について、「Googleがロシアの検閲要求に屈服した一例です」と述べています。


なお、Googleの広報担当者はThe Interceptに対して、「ロシアにおけるGoogleの広告事業と商業活動の大部分を一時停止していますが、現地従業員の安全には引き続き注力しています。広く報道されているように、現在ではロシア国内の通信が制限されています」と答えました。

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in ネットサービス, Posted by log1i_yk

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