「高温に熱した鉄板の上で水滴が浮く現象」は水以外の液体でも起こるのか?
熱したフライパンに水滴を落とすと、フライパンと接する部分で瞬間的に水が蒸発して水蒸気の膜を作り、水滴がまるでフライパンの上を浮いているかのようになめらかに動く現象が「ライデンフロスト効果」です。このライデンフロスト効果を水以外のさまざまな液体で試した結果を、メキシコ・プエブラ大学物理学部のフェリペ・パチェコ=バスケス氏率いる研究チームが発表しています。
Phys. Rev. Lett. 127, 204501 (2021) - Triple Leidenfrost Effect: Preventing Coalescence of Drops on a Hot Plate
https://journals.aps.org/prl/abstract/10.1103/PhysRevLett.127.204501
Amazing Video Reveals a New Kind of Leidenfrost Effect We've Never Seen Before
https://www.sciencealert.com/we-ve-just-discovered-a-new-kind-of-leidenfrost-effect
ヴァスケス氏が率いる研究チームは、水・エタノール・メタノール・クロロホルム・ホルムアミドなどの液体を、250度に加熱した金属板に滴下して、振る舞いを観察しました。その結果、水以外でもライデンフロスト効果を確認できることが判明したばかりでなく、特性が似ている液滴同士は合体し、特性に大きな違いがある液滴同士は互いに反発することがわかりました。
実際に水とエタノールを金属板に滴下した場合、それぞれの液滴がどんな振る舞いをするのかは以下のムービーをみるとよくわかります。
The triple Leidenfrost effect in water and ethanol - YouTube
大きい液滴が水、青い染料で色付けされた小さな液滴がエタノールです。
二つの液滴は衝突しては反発するような振る舞いを見せます。
何度か衝突した後、二つの液滴は合体してしまいます。
以下の表は、水(W)、エタノール(E)、メタノール(M)、イソプロパノール(I)、アセトン(A)、ヘキサン(H)、クロロホルム(C)、アセトニトリル(N)、トルエン(T)、ホルムアミド(F)の液滴同士で実験した結果をまとめたもの。「c」は液滴の合体、「r」は液滴の反発、「s」は混合せずに分離したままだったことを示します。
ライデンフロスト効果は、鉄板のような高温面と液滴の接触面で液体が蒸発し、蒸気の層が液体と高温面の接触を防ぐことで起こります。今回の研究チームの実験により、液滴と高温面の接触部分だけではなく、液滴の表面にも蒸気の層が発生するため、2つの液滴が混ざらずに反発する可能性を示唆しています。
研究チームは「この液滴同士の反発は、2つの液滴の沸点が異なるために起こる現象で、高沸点の液滴が低沸点の液滴に対して高温面として働くことで起こります。『高沸点の液滴の表面』『高沸点の液滴の接触面』『低沸点の液滴の接触面』と、同時に3つの接触領域が発生していることを示しています。私たちはこの現象を『トリプルライデンフロスト効果』と呼んでいます」と述べました。
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