セキュリティ

ロシアのインターネット検閲を逃れる方法を見つけたロシアの亡命者はどのような活動を行ってきたのか?

by Aleksandr Litreev

ロシアの人々のために弁護士と素早くコンタクトを取るアプリや、インターネット検閲を回避するシステムを作成した1996年生まれのソフトウェアエンジニア、アレクサンドル・リトレフ氏について、技術系メディアのTechRadarが解説しました。

The Russian exile who found a way past Putin's internet firewall | TechRadar
https://www.techradar.com/news/the-russian-exile-who-found-a-way-past-putins-internet-firewall

リトレフ氏はロシアで2番目に大きい都市であるサンクトペテルブルクに生まれ、地元の大学でソフトウェアエンジニアリングを学んだとのこと。リトレフ氏が大学を卒業する間際の2017年12月、反プーチンを掲げて政治活動を行っていたアレクセイ・ナワリヌイ氏がロシア大統領選挙への出馬を表明。この頃からリトレフ氏はナワリヌイ氏を支援する組織に加わり、サイバーセキュリティの観点から助言を行っていたとのこと。やがて組織の最前線に立つようになり、リトレフ氏は当時を「組織を支援すればするほど、抗議活動そのものにも関与していくようになりました」と振り返っています。

同じ頃、ナワリヌイ氏が公開したドミートリー・メドヴェージェフ首相の腐敗を告発する映画を巡って行われた大規模なデモ活動により、多数の逮捕者が生まれていました。このことを受け、リトレフ氏は「Red Button」というスマートフォンアプリを開発。このアプリは、その名の通り画面上の「赤いボタン」を押すことで端末のGPS情報が家族と弁護士コミュニティに送信され、ボタンを押した人がただちに支援を受けられるようになるというアプリです。

Red Buttonはリトレフ氏が「弁護士版Uber」と語るように、ユーザーが手軽に弁護士と接触できるという利点が話題となり、数百万人のユーザーにダウンロードされてロシアのアプリストアでトップに躍り出るほどの人気が集まったとのこと。このアプリには2022年2月時点で約110万人のアクティブユーザーがいたとのことですが、ロシアがウクライナに侵攻したことを受け、その数は増加しているとのことです。


また、リトレフ氏はロシアの検閲システムの脆弱(ぜいじゃく)性を曝露したことでも知られています。

ロシアでは連邦コミュニケーション・情報技術・マスメディア監視局(Roskomnadzor)が2008年以来国内の情報を管理していますが、2017年のナワリヌイ氏の活動以降、検閲を強化する方針で進められているとのこと。Roskomnadzorは反体制派の報道機関、ブログ、その他のメディアへのアクセスをブロックし始め、ナワリヌイ氏の名前を公のウェブサイトから徹底的に排除していったといいます。

その中で、リトレフ氏はRoskomnadzorの検閲システムに「悪意のある人物があらゆるウェブサイトを国内で利用不可能にする脆弱性」があることを発見したとのこと。リトレフ氏がその理論を実証したところ一時70%のロシア人がGoogle検索を利用できなくなったとのことですが、リトレフ氏はロシア政府に脆弱性を報告したのに取り合ってもらえなかったといいます。そのためリトレフ氏が詳細を一般に公開したところ、何人かの人々が実際に悪用してさまざまなサービスを停止させたとのことです。

by Aleksandr Litreev

リトレフ氏が開発したもう1つのシステムが、ロシア政権が打ち出した「インターネット検閲」を回避するものです。

ロシアは通信の秘匿性が高いメッセージアプリ「Telegram」が開発された国であり、およそ3000万人の国民が同アプリを利用しているとされています。しかし、Roskomnadzorは「犯罪を助長する」という理由で2018年にTelegramの全面使用禁止を発表しており、その後Appleに「App Storeから削除すること」を求めていた過去があります。リトレフ氏はこのような発表を受け、ロシア国民のTelegramへのアクセスを維持するためのシステムを構築。Telegramの創設者からの支援も受けて、事実上ロシア中のTelegramユーザーに、リトレフ氏が構築したプロキシネットワークを介したアクセスを提供していたとのこと。2020年にRoskomnadzorがTelegram禁止令を解除した後は、リトレフ氏は構築したシステムをVPNサービスへと変換し、数年間にわたり同サービスをエストニアで運営していました。

リトレフ氏は、2020年にロシアに帰国した際、過激主義や外国文書の所持などで起訴されていましたが、エストニア大使館などの助けを受けて亡命に成功しています。


リトレフ氏はウクライナに侵攻するロシア、およびプーチン大統領について「ヨーロッパには、ほとんどのロシア人がプーチンを支持していると考える人がたくさんいますが、それはまったく真実ではありません。現在、プーチンの支持率は過去最低レベルにあります。ロシアの人々は、誰かとの戦争や検閲を望んでいません」と語り、ロシアだけでなく世界中の抑圧的な政権下に住む人々が無料でオープンなインターネットにアクセスできるようにすることで、反体制派の声や、レトリックやプロパガンダを切り抜ける代替情報源となるスペースを切り開くことを望んでいます。

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in セキュリティ, Posted by log1p_kr

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