科学者にとって重要な「3つの能力」とは?
近年では、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)や気候変動問題に関連する多くの専門家がテレビ番組などに出演しており、科学者の存在を身近に感じるようになった人も多いはず。そんな科学者にとって重要な「3つの能力」について、オーストラリアのオークランド大学で哲学の上級講師を務めるエミリー・パーク氏が解説しています。
Curious Kids: what is the most important thing a scientist needs?
https://theconversation.com/curious-kids-what-is-the-most-important-thing-a-scientist-needs-177226
◆1:的確な問いを見つける能力
ほとんどの科学者は「世界の物事はどのように機能しているのか?」という点を理解しようとしており、その起点となるのは物事についての問いです。たとえば、「なぜ星はきらめいて見えるのか?」「なぜこの鳥は派手な羽を持っているのか?」といった自然科学的な問いや、「この川をきれいに保つためにはどうすればいいのか?」「気候変動を食い止めるために何ができるのか?」など社会問題に関連する問いが存在するとパーク氏は述べています。
問いの種類は多様ですが、優れた問いに共通するのは「科学者が答えを見つけるため、何らかの調査をするように示すもの」という点です。漠然として答えが見つかりそうにない問いの場合、科学者は答えを見つけるために何をしたらいいのかわからず、科学的な手法で答えに迫ることができません。
パーク氏は科学者が行う調査の例として、「野生環境で動物がどのように振る舞うのかを観察する」「植物がどのように成長するのかを測定する」「実験室で実験する」「コンピューターを使用してブラックホールのシミュレーションモデルを作成する」といったものを挙げています。科学者として研究を行うには、こうした科学的調査につながる問いを発する能力が必要というわけです。
◆2:的確な答えを見つける能力
問いを発した後は答えを見つける必要があります。問いに対する答えの種類はさまざまであり、「なぜ玉ねぎを切ると涙が出るのか?」「なぜアリは天井を歩くことができるのか?」といった問いは理由や方法についての説明が必要であり、「タコは将来的に世界を支配して宇宙進出できるのか?」という問いには説明だけでなく予測が必要です。また、「宇宙には星がいくつあるのか?」といったシンプルに数字の回答が求められるものもあります。
科学者がこれらの問いに対する答えを見つけるには、多くのトレーニングや創造性を必要とします。パーク氏は科学者が行う研究についての基本的な順序を、以下のようにまとめています。
・質問する
・質問に対する仮説を考える
・仮説を試す実験を行う
・研究結果を報告して共有する
一般的にこれが科学的な研究手法といえますが、「実験」の部分に観察やシミュレーションなどが入ることがあるほか、最初に仮説が立てられないような問いもあるため、「これこそが正解」といえる流れはないとのことです。
◆3:謙虚さを保つ能力
科学者になるには数多くの物事や理論について学習する必要がありますが、どれだけ有名な科学者でもこの世のすべてを知っているわけではありません。そのため、科学者は「自分が知らないこと、これから学習するべきことがたくさんある」と自覚する知的謙虚さを持ち、時には自分が間違っていることがあると自覚し、他の人の説にも耳を傾ける重要性を認識するべきだとパーク氏は主張しています。
実際、人間が理解している世界の仕組みは時代を追うごとに更新されているほか、以前は科学的に正しいと思われていたことが後になってひっくり返るケースはしばしば存在します。パーク氏は「好奇心を持つのは素晴らしいことです。学ぶことは常にあります!」と述べました。
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