サイエンス

新型コロナに感染しない人の身体的特徴が明かされつつある


新型コロナウイルスの感染拡大を抑えるべく膨大な数の研究が急速に進んでおり、中には意図的に新型コロナウイルスに感染させる「ヒューマンチャレンジ試験」を実施している研究機関も存在しています。そんな数々の研究の結果「新型コロナウイルスに感染しにくい人」に特有な身体的特徴が明らかになりつつあります。

Scientists seek to solve mystery of why some people do not catch Covid | Coronavirus | The Guardian
https://www.theguardian.com/world/2022/mar/02/scientists-seek-to-solve-mystery-of-why-some-people-do-not-catch-covid

◆新型コロナウイルスに感染しない実例
新型コロナウイルスが人体に感染するメカニズムを明らかにするべく、いくつかの研究機関では被験者に意図的に新型コロナウイルスを感染させて経過を観察する「ヒューマンチャレンジ試験」を実施しています。2021年3月に行われたヒューマンチャレンジ試験の被験者であるフィービー・ギャレット氏は「綿棒で喉に付着させる」「綿棒で鼻に付着させる」「綿棒を鼻に突っ込んで1分間保持する」といった多様な方法で新型コロナウイルスへの感染を試みました。しかし、試験期間中の検査では陰性という結果が示され、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の症状も現れませんでした。

ギャレット氏はヒューマンチャレンジ試験以前にも「自分と同じ講義を受けた学生が新型コロナウイルスに感染したものの、自分は感染しなかった」「同じパーティーの参加者が新型コロナウイルスに感染したものの、自分は感染しなかった」という経験をしていたとのこと。


ヒューマンチャレンジ試験の参加者が新型コロナウイルスに感染しないことは珍しいことではありません。例えば2022年に結果が報告されたロンドンでのヒューマンチャレンジ試験では、34人の被験者のうち16人は試験期間中に新型コロナウイルスへ感染しなかったとされています。

◆他の病原体に感染した際の獲得免疫の効果
上記のロンドンでのヒューマンチャレンジ試験を主導したインペリアル・カレッジ・ロンドンクリストファー・チウ教授は、感染が確認できなかった被験者の血中抗体量や免疫細胞量の変動が検出不可能なレベルであったことから、被験者の免疫システムが鼻腔(びくう)内などのウイルスとの接触直後の段階で働いた可能性を指摘しています。

また、2021年には、「新型コロナウイルス以外のコロナウイルスに感染した際に獲得した免疫」が新型コロナウイルスにも有効に働いたという事例も報告されています。


◆新型コロナウイルスとインフルエンザウイルスの類似性
スウェーデンで行われた新型コロナウイルスを構成するタンパク質を分析する研究では、新型コロナウイルスのスパイクタンパク質のアミノ酸配列が2009年に流行した新型インフルエンザウイルスの一部分の配列と一致していることが明らかになりました。

さらに、ストックホルムで献血された血液を分析した結果、献血者の68%が上記のアミノ酸配列に対する抗体を保持していることが判明。この結果からスウェーデンの研究チームは「2009年から2010年にかけて豚インフルエンザの大流行を引き起こした新型インフルエンザウイルスや、それに関連するウイルスによって引き起こされる免疫応答が、部分的にCOVID-19に対する防御を人々に提供している可能性がある」と推測しています。

◆「新型コロナウイルスに感染しない遺伝子」特定に向けた取り組み
これまでの研究で、HIV・マラリア・ノロウイルスといった病原体に対して「感染をほとんど防ぐことが可能な遺伝子」が存在することが知られています。例えば、HIVは白血球の表面に存在するCCR5と呼ばれるタンパク質を受容体として人間に感染しますが、このCCR5を産生する遺伝子に変異が生じている人はCCR5の立体構造が変化するためHIVに感染しません。このCCR5産生遺伝子の変異を利用してエイズを治療する試みが行われており、実際に「HIVウイルスがほぼ消滅した」とする成功例も報告されています。

世界で2人目のエイズ完治例か、「HIV治療でウイルスがほぼ消滅」した患者が報告される - GIGAZINE


上記のような「ウイルスの受容体の構造を変化させる遺伝的変異」が新型コロナウイルスに関しても存在する可能性があるとして、2021年10月から国際的な研究チームによる遺伝子探索が始まっています。この研究が進めば、将来的に新型コロナウイルスに感染しない手法が開発される可能性があります。

この記事のタイトルとURLをコピーする

・関連記事
オミクロン株が「人間の免疫機能」の実態を明らかにしつつある - GIGAZINE

異なる新型コロナワクチンの「交互接種」でブースター接種すると抗体が「最大76倍」になったとの研究結果 - GIGAZINE

オミクロン株の派生株「BA.2」はデルタ株の重症化率とオミクロン株の感染力&抗ワクチン性を兼ね備えているという研究結果 - GIGAZINE

細菌やウイルスに対して免疫系はどのように戦っているのか? - GIGAZINE

「週に1~4杯の赤ワインを飲むと新型コロナの感染リスクが10%下がる」という研究結果が信頼できない理由とは? - GIGAZINE

in サイエンス, Posted by log1o_hf

You can read the machine translated English article here.