細菌やウイルスに対して免疫系はどのように戦っているのか?
ウイルスや細菌が体に入ってきた時、体に備わっている免疫系がそれらと戦い体を守ってくれる……というイメージはあっても、実際に体で何が起こっているのかを詳しく知っている人は少ないはず。科学的なトピックをアニメーションで解説するKurzgesagtが、どのようにして免疫系が体への侵入者と戦っているのかを解説する動画を公開しています。
How The Immune System ACTUALLY Works – IMMUNE - YouTube
まず、人の免疫系は体中に数百個存在するリンパ節と……
これらが、体中に張り巡らされたリンパ管というネットワークを作り出しています。
病気やケガによって私たちの体には菌やウイルスといった異物が侵入してきます。Kurzgesagtはこれを「ある日突然、無数のエイリアンが都市・インフラを破壊し、人を食べるために侵略してきたような状態」と表現しています。
たとえ人の目には「少し指先を切った」だけに見えても……
体の中では細胞が死に、血や汚れが辺り一帯に広まるという「大惨事」が始まっています。
体の中に入った細菌は新しい家を探すために動き回り、細胞のエネルギーを奪い、辺りにふんをまき散らします。
この状態になると、まず細菌侵略の衝撃を生き延びた細胞がアラートを発し、化学物質で免疫系を目覚めさせます。
アラートで呼び出されるのは白血球の一種であるマクロファージ。
マクロファージは通常の細胞よりも大きく、通常の細胞が人間サイズだとするとマクロファージはクロサイほどとのこと。
マクロファージは体の一部をタコの足のように伸ばして細菌をキャッチ。細菌を食べて消化し、排せつします。マクロファージは力を使い果たすまでに100個の細菌を食べるといわれています。
マクロファージが食べきれないほどに細菌が多い時は、援兵が呼び出されます。
血液中に存在する何十万もの好中球がマクロファージの発した援護のシグナルをキャッチ。侵略の現場に向かいます。
攻撃性を持つ好中球は細菌を殺しますが、生まれてから数日後には自滅する運命にあります。
好中球は細菌にとって有害な化学物質を放出し、時には人の細胞をも破壊しますが、数日内に自滅するため人へのダメージが大きくなることはありません。
自滅で破裂する際、好中球は細菌を捉えて殺す化学物質を放出します。また、時には自滅した後の好中球が細菌を殺すこともあるそうです。
戦いが続くと、戦場へと血液が流れ、ダムの放流のように患部に血液が流れます。この時に起こるのがいわゆる「炎症」です。血液と共に、マクロファージを補助する補体が何百万も戦場に送り込まれます。
うまくいけば、上記のような「最前線の兵士」たちによって侵略者が排除されます。しかし、細菌が強すぎてこれら兵士が圧倒された時には、免疫系の諜報部員である樹状細胞の出番です。
樹状細胞は戦いの中で細菌を取り込んで破壊したり、体中に死んだ細菌をくっつけたりして、細菌の情報を収集します。
そして戦場から抜け出し……
免疫系のネットワークであるリンパ管を使って、全身の細胞やリンパ節に情報を伝えます。
加えて樹状細胞は戦いの司令官となるT細胞を探します。体の中にT細胞は何十億も存在しますが、特定の細菌に対する武器を持っているT細胞は1つしかいないので、この作業には数時間を要します。
見つけ出されたT細胞は細菌を認識。そして、樹状細胞がT細胞を活性化します。
体に侵入した細菌に適したT細胞が活性化されると、T細胞は自らのクローンを作り出し、増殖していきます。
何千という数に増殖したT細胞は2つのグループに分かれ、1つのグループは戦いを援助するためにすぐに戦場に向かいます。
このとき、戦場で戦っていた細胞たちは疲弊した状態。数日間の戦いでマクロファージは力つきて動かなくなっています。
しかし、新たにやってきたT細胞が特別な化学物質を放出すると、マクロファージは力を取り戻します。
復活したマクロファージは細菌を激しく攻撃。
T細胞のうちもう一方のグループは、抗体を産生するB細胞と接触します。
抗体は細菌との戦いにおいて「超兵器」となるタンパク質。細菌を捕まえるために、カニのようなハサミを持っているのが特徴です。
B細胞もT細胞のように、それぞれの細菌に対応する抗体を生み出すものが存在します。T細胞は1日~2日かけて、正しいB細胞を探し出し……
活性化されたB細胞はクローンを作りだして増殖。
十分な数のクローンができたら、B細胞は1秒間に2000個もの抗体を作り出します。
こうして、指先にケガをし細菌の侵入を受けて1週間ほどで、第2線の戦力が全て到着。
抗体が細菌を一塊にまとめて戦えなくして、攻撃力を持つ他の兵士たちがこれら細菌を破壊します。
そして全ての細菌が排除され、兵士たちが必要なくなると、リソースを無駄にしないためにこれらは自滅します。
ただし、一部のヘルパーT細胞はメモリーT細胞となり、同じ細菌による攻撃に備えます。
同様に、B細胞もメモリーB細胞となり、微量の抗体を出し続けます。
こうして傷がふさがり、少しの傷跡が残るというわけです。
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