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体内の免疫システムが病原体と戦う時に何が起きているのか、免疫システムを強化する最善策は何なのか?


人間の体は感染症と闘うための免疫システムを持っており、これが体内に侵入した病原菌やウイルスを撃退することで身体の安全が保たれています。そんな免疫システムがどのように機能し、体にどのような影響を及ぼすのかにについて、科学系YouTubeチャンネルのKurzgesagtがアニメーションで解説しています。

Your Immune System is More Dangerous than You Think - YouTube


人間の体を国の領土に例えると、病原菌やウイルスは領土に攻め込んでくる侵略者といえます。


病原菌やウイルスが侵入する機会は日常生活の至る所に存在するため、人間はこれに対処するために免疫システムを発達させました。


体内に病原菌やウイルスが侵入すると、細胞はサイトカインという分子を放出します。


サイトカインは一種の空襲警報のようなものであり、あらゆる種類の免疫細胞を活性化させ、さらにその免疫細胞がサイトカインを放出して警報が増幅されるとのこと。


サイトカインに応じて免疫システムが病原体を攻撃し始めると共に、脳は体の優先順位を再編し、病原体からの防御を最優先事項とします。


病気になると気力が低下したり、不安や落ち込みを感じたり、食欲を失ったりします。また、痛みの感受性が高まって体のあちこちに痛みを感じ、休息を取りたくなります。これらはすべて体のエネルギーを節約し、免疫を適切に反応させるために起こる症状です。


免疫の活性化は身体にとってかなり破壊的で消耗することであり、Kurzgesagtは免疫が活性化して病原体と戦っている時の体を、「侵略を受けて戦争経済に切り替わった国」に例えています。


戦争中の国では、戦争に役立つ兵器や備品の生産が最優先となります。


これと同様に、病気の体内では免疫細胞の生産や活性化が最優先となり、これには膨大な量のエネルギーやアミノ酸、微量元素が必要です。


病気になると熱が出ることがありますが、これは代謝を促進して細胞の働きを活性化すると共に、多くの病原体にダメージを与える意味があります。また、免疫細胞や抗体、サイトカインの産生などにも多くのアミノ酸が必要となり、これらの活動によって多くのカロリーとアミノ酸が消費されます。


通常、カロリーやアミノ酸は食事から補充されますが、病気の時は消化が遅くなって食欲も落ちるため、食事からカロリーやアミノ酸を補充することが難しくなります。


そこで体は、アミノ酸の最も簡単な供給源として筋肉を分解し始めます。そのため、病気の後は筋肉が落ちてしまうとのこと。


若く元気がある人ならば病気からすぐに回復できますが、高齢だったり体が弱っていたりすると、病気のダメージから回復するには時間がかかります。


また、免疫反応によってダメージを受けるのは病原体だけでなく、体そのものも被害を受けます。


特に白血球の一種である好中球は非常に攻撃的であり、病原体を分解するための化学物質を放出する際、人体の細胞にも損傷を与える可能性があるとのこと。


病原体自身も有害な化学物質を放出することがあるため、重度の感染症は臓器に深刻なダメージを与えます。


好中球とマクロファージは体の修復を開始するためのシグナルを発し、損傷のほとんどは再生した細胞によってすぐに埋められるとのこと。


また、残った部分はコラーゲンが一種の有機セメントとしてつなぎますが、元の組織同様の機能を果たすことはできないため、傷がある部分は以前よりも機能が衰えます。これは心臓や肺、肝臓といった主要な臓器でも同様です。


そのため、深刻な感染症を繰り返し経験すると、次第に臓器の機能が衰えてしまうとKurzgesagtは警告しています。


人間の免疫システムは多様であり、ある病原体に対して強くても、別の病原体に対しては弱いといった個人差が生じます。この免疫システムの多様性により、感染症が流行しても人類が滅亡することなく、子孫を残すことが可能になっています。


免疫システムが個人で違うため、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)を発症して死んでしまう若者がいる一方で、COVID-19を発症しても風邪程度で済む高齢者もいます。


自分の免疫システムが特定の病原体に弱く、感染したら死んでしまう可能性があると考えるのは恐ろしいことです。しかし、免疫システムの優れた機能をハッキングすることにより、免疫力を高めることが可能だとのこと。


免疫システムが特定の病気を撃退するとその病原体を記憶し、次に感染した際の防御力が向上します。そのため、同じ感染症でも初回より2回目の方が軽度の症状で済むことが多いそうです。


このメカニズムを利用したのが「ワクチン」です。


体内に注入されたワクチンは病原体のふりをして、免疫システムに感染後と同様の記憶を持たせます。


ワクチンを使えばまるで道場でのトレーニングのように、安全性の高い状況で免疫システムを強化することが可能です。多少の副作用はありますが、それが永続的なダメージを残すことはほとんどありません。


自然感染でも免疫システムは病原体を記憶しますが、これは武器を使った実戦のようなもので、体にダメージが残る危険性がワクチンより高くなります。免疫システムの多様性により、健康そうな人でも特定の病気に弱い可能性を考慮すれば、自然感染で免疫をつけようとする試みはリスクが高いと言えます。


また、ワクチンはより免疫システムにとって有益な記憶を植え付けるように設計されているため、自然免疫よりも効果が高いこともあります。


ワクチンも万能ではありませんが、予防接種を受けることは免疫システムを強化する有効な方法の1つだとKurzgesagtは述べました。

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in サイエンス,   動画, Posted by log1h_ik

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