インターネットによるデジタルコミュニケーションが浸透する前はどのような通信を行ってきたのか?
インターネットを用いると、あらゆる情報を全世界に対して即時に送受信することができます。しかしながら、あらゆる場所で現在のような高速インターネットが利用できるようになったのはごく最近の出来事であり、それ以前にはどのような通信が行われていたのかという簡単な歴史を、Cloudflareに買収を受けたアプリプラットフォームEagerがブログで解説しています。
A Quick History of Digital Communication Before the Internet - Eager Blog
https://eager.io/blog/communication-pre-internet/
Eagerのザックブルーム氏がまず紹介しているのは、アメリカ中西部のネブラスカ州から西部のカリフォルニア州をつなげる馬のエントロピー(The Entropy of a Horse)という通信手段。これは、電信システムが途切れている箇所で小型馬(ポニー)による装置の運搬が行われ、10日間かけて約640キロバイト(毎秒6ビット相当)の情報送信を行ったというものです。この馬による伝達システムによって全国に情報を送信することができたものの、設立された16カ月後には電信が完成したためすぐに廃止になってしまったとのこと。しかしながら、1860年にエイブラハム・リンカーンがアメリカ大統領に就任したというニュースを、「全国に伝えるには100日近くかかる」とされていた時代にわずか7日間で伝播させたという実績があります。
「クック・ウィートストーン電信(The Five-Needle Telegraph)」は1830年ごろに発明された通信方法で、1組のワイヤーで電力を供給しながら、ワイヤーの電圧を変化させることで文字を入力するポインターを駆動させ、メッセージを送信するというもの。この電信では20文字しか伝えられずアルファベットのうちCやJなど使えない文字があったため、さらに発展して1840年ごろに完成したのがモールス符号による電信です。モールス符号は、キーの長押し・短押しを組み合わせるだけで全ての文字・数字を表現できる点でシンプルかつ有用でした。
By Geni
また、現代のような水中に張り巡らされたケーブルのはしりも同時期に誕生しています。しかし、当時はゴムが発見される前だったため、この頃のケーブルは水に弱く柔軟性もありませんでした。1842年にスコットランドの外科医が医療機器で使用するためにインドから輸入した樹液を利用し、柔軟で防水性があり耐久性にも優れた絶縁ケーブルを作成。このケーブルが大西洋を横断する初の海底ケーブルとなります。しかしながら、音響・振動の技術が未発達だったため、大きなエコーと干渉が発生し最初のメッセージの送信に17時間かかったそうです。その後の実験で17時間から1時間まで短縮できましたがその時点でケーブルの損傷はひどく、継続的な実用化はとん挫。150年が経過した2016年には、大西洋横断光ファイバーケーブルによって毎秒40テラビットを伝達でき、1840年に比べて約13兆倍にも向上しています。
インターネットは海底に敷かれたケーブルによって成り立っている - GIGAZINE
モールス電信は画期的でしたが、素早く読み解く高度な訓練を受けたオペレーターが必要で、一度に一個だけしかメッセージを送れないという欠点もありました。そこで1870年にエミール・ボドーが公開した電信符号は、5ボタンのキーボードを使用した5ビット入力を、リズムに合わせて行うことでメッセージの分量・送信速度を大幅に向上させています。
by M. Rothen
1920年ごろに発明された音響カプラというデバイスでは、電話機でスピーカーの音声を届けるという公衆交換電話網を利用したコンピューター通信が行われました。メッセージを送るのとは違う音声による伝達ということで革命的なものではありましたが、自分の回線を通じてデータをやりとりされたくない電話会社との闘争の歴史でもあったとザックブルーム氏は書いています。
by Rama
その後、電話にスピーカーを近づけるという「音響カプラ」からさらに発展して、電話回線を通過できる形式でコンピューターのデジタルデータをエンコードし、電話回線に載せて届ける「データフォン」が誕生しました。これにより最終的に毎秒56キロビットの速度に達したとのこと。かなり高速化はしていますが、電話回線で使用できる帯域は制限されており、通信に使用できる帯域幅も大幅に制限されていました。
電話回線による制限の解決策は、ハワイ大学の「ALOHAnet」によってもたらされました。アマチュア無線のようなシステムで大学の複数のキャンパスをつなぎ、「コンピューターネットワーク」を作るというアイデアで、最終的には携帯電話のテキストメッセージ送信の基礎を作りました。
また、ALOHAnetは有線によるローカルエリアネットワークの「イーサネット」の基盤にもなっています。イーサネットは90年代の主要な有線ネットワークの標準になりましたが、NCRコーポレーションがお店に設置するレジのために発明した「Wi-Fi」に取って代わられていきます。イーサネットを下敷きにしたWi-Fiは1990年に「Wi-Fiの父」と呼ばれるヴィック・ヘイズによって「WaveLAN」としてリリースされ、現代もまだ仕様を変えて使われています。
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