生き物

サメに食べられないよう注意を促す啓発活動に効果はあるのか?


「ホホジロザメはエサであるアザラシやアシカと人間の見分けがつかない」ことが判明しているように、海に行く際にはサメに十分注意する必要がありますが、サメの襲撃事件に遭遇するのはレアケースなので、「サメに気をつけるように」と言われてもピンとこないのが実情です。そこで、オーストラリアでは「SharkSmart運動」と呼ばれるサメ被害抑制の啓発活動が行われています。

Shark bites are rare. Here are 8 things to avoid to make them even rarer
https://theconversation.com/shark-bites-are-rare-here-are-8-things-to-avoid-to-make-them-even-rarer-173746

世界でも有数の海洋資源に恵まれ観光業も盛んなオーストラリアのクイーンズランド州政府は、サメの行動が活発な夜明けと夕暮れ時の遊泳を避けるといった教訓をまとめた啓発活動である「SharkSmart運動」を展開していますが、中にはこれらの呼びかけに従わない観光客もいます。


そこで、環境保護や海の安全に関する活動を行っているコンサルティング会社のReef Ecologicは、グレートバリアリーフを擁するウィットサンデー地域でチャーターボートを運行している観光事業者3社と協力して、SharkSmart運動が観光客の行動に与える影響を調査しました。

具体的には、「海に出る観光客に短い啓発ビデオを見せる」「サメに遭遇するリスクを減らす方法を書いたステッカーをボートに貼る」「観光客にSharkSmart運動のパンフレットを配る」「食べ物を捨てるためのゴミ袋を配布する」という方法で啓発活動が行われました。そして、啓発を行った場合と行わなかった場合における観光客の行動を観察し、啓発の効果を検証しました。

観察の対象となった「サメによる事故のリスクを高めてしまう行動パターン」は以下の8つです。
・水しぶきを上げる。
・1人で泳ぐ。
・過去にサメによる事故が起きた場所で泳ぐ。
・魚をとっている人の近くで泳ぐ。
・泳いでいる人の近くで魚をとる。
・まき餌をまく。
・食べ物を海に捨てる。
・魚の切れ端などを海に捨てる。


調査期間中にボートで海に出た観光客は228人で、そのうち啓発活動の実施前に海に出た観光客は92人、啓発活動の実施後に海に出た観光客は136人でした。そして、これらの観光客の行動を分析したところ、以下の結果が得られました。
・水泳やシュノーケリング中に騒いだり水しぶきを上げたりする行動が8.9%減少。
・魚の切れ端を捨てる人が4.1%減少。
・泳いでいる人の近くで魚をとる人が3.8%減少。

また、観光客らにアンケートをとったところ、ほとんどの人が「夜明けや夕暮れ時の水泳を避ける」「ほかの人と泳ぐ」「水が澄んだところで泳ぐ」「人が泳ぐところに生ゴミなどを捨てない」「サメのエサになる魚や海に飛び込む鳥の群れに近づかない」といったサメのリスクを回避する行動を意識するようになっていたことも分かりました。


今回の調査とは別に行われた調査では、「100%の観光客が生ゴミを海に捨ててはならないと知っていたにもかかわらず、約3分の1が海にゴミを捨てていた」ということが判明していましたが、啓発活動によりゴミを海に捨てる人の割合は4~8%程度まで減少したとのことです。

この調査結果について、オーストラリア・ジェームズクック大学の海洋学者であるアダム・スミス氏は「SharkSmart運動により意識が高められたおかげで、観光客が水中にゴミを捨てるのをやめたり、過去に事故が起きた場所に近寄らなくなったりしたのはいいニュースです。しかし、残念ながら水辺を利用する人の一部には『She'll be right(きっと大丈夫)』の精神が根強く残っており、こうした意識を変えるのにはまだ時間がかかるでしょう」と述べました。

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in 生き物, Posted by log1l_ks

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