実際にホホジロザメに噛ませて性能を確認した「サメの噛みつきに強い」ウェットスーツ向け新素材が登場
サメによる被害を防ぐため、オーストラリアのフリンダース大学の研究チームが最近開発された繊維をベースにしたウェットスーツ向けの新素材を開発しました。研究チームはホホジロザメを使った耐久試験で新素材の強度も確認しています。
Effectiveness of novel fabrics to resist punctures and lacerations from white shark (Carcharodon carcharias): Implications to reduce injuries from shark bites
https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0224432
Shark proof wetsuit material could help save lives – News
https://news.flinders.edu.au/blog/2019/11/20/shark-proof-wetsuit-material-could-help-save-lives/
温暖化によって海水浴に行く人が増加していることが原因で、サメに噛まれる事件は年々増加しています。サメによる被害の大半は皮膚の擦り傷程度の軽傷ですが、時には死に至るケースも報告されています。
世界のサメ襲撃事故、2015年は過去最多 温暖化の影響か 写真1枚 国際ニュース:AFPBB News
https://www.afpbb.com/articles/-/3076437
サメの噛みつきの被害を防ぐ新素材は、超高分子量ポリエチレン繊維(UHMWPE)に2種類のクロロプレンゴムをそれぞれ組み込んだもので、ウェットスーツに用いることができるほど軽量。研究チームは、機械を使って固定されたサメの歯を押し込むという試験を行い、それぞれの素材の耐久力を調査しました。
試験の結果、新素材はいずれも従来のクロロプレンゴムよりも強度が上がっており、切り口を開けるには大きな力が必要であることが確認されました。また、切り口が空いた場合でも、新素材の切り口は従来の素材よりも小さく、浅いものでした。
さらに、研究チームは新素材にホホジロザメの好物であるミナミマグロを巻き付け、実際にサメに噛みつかせるという耐久実験も敢行しました。以下のムービーでは、ホホジロザメが新素材にガッツリ噛みついているのが確認できます。
New wetsuit material tested by Flinders marine researchers - YouTube
野生のホホジロザメが噛みついたのが、研究チームが作り出した新素材。新素材にはホホジロザメの餌となるミナミマグロのほかに、負荷センサーも取り付けられており、実際にサメが噛みついた際の力を計測しています。
実験によると、3メートルから4メートルほどの野生のホホジロザメによる噛み傷は、機械とサメの歯を用いた実験でできた切り口よりも小さく浅く、ホホジロザメが噛みつきによってつけるあらゆるタイプの傷に対して新素材は従来品よりも優れていると確認されました。以上の結果から、研究チームは「従来の素材に比べて失血は防げる」としながらも、「肉に与えるダメージについてはさらなる調査が必要」だと結論づけています。
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