サイエンス

超軽量で急激な温度変化にも耐えられる新素材が開発される、宇宙船の断熱材などに利用可能

by NASA-Imagery

カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)と8つの研究機関の研究チームは、非常に軽量で耐久性に優れたセラミック製のエアロゲルを作り出すことに成功したと報告しました。非常に激しい温度変化にも耐えうるこの素材は、宇宙船の断熱材などに利用できる可能性があると期待されています。

Double-negative-index ceramic aerogels for thermal superinsulation | Science
http://science.sciencemag.org/content/363/6428/723

Researchers create ultra-lightweight ceramic material that withstands extreme temperatures
https://phys.org/news/2019-02-ultra-lightweight-ceramic-material-extreme-temperatures.html

エアロゲルとは、ゲル中に含まれる溶媒を超臨界乾燥によって気体に置換して製造する多孔質の物質です。体積の99%が空気であるにもかかわらずエアロゲルは固体であり、構造的にも非常に軽重量な素材にしては強いとのこと。炭素や金属酸化物などを含む多くの材料からエアロゲルを製造することができますが、中でもセラミック製のエアロゲルは極端な温度を遮ることに優れており、火と腐食に対しても耐性があるため、セラミック製エアロゲルは断熱材として優れているとされています。

実際にセラミック製エアロゲルは1990年代から断熱材として利用されており、NASAの火星探査機に搭載された科学機器の断熱材としても利用されました。しかし、従来のセラミック製エアロゲルはもろいため、繰り返し超高温にさらされたり、急激な温度の変化によって壊れやすかったとのこと。超高温も急激な温度変化も宇宙探査においては一般的な事象であり、セラミック製エアロゲルを宇宙船などの断熱材として大きく活用することはできていませんでした。

by WikiImages

今回新たにUCLAなどの研究チームが開発したセラミック製エアロゲルは、極度の高温や超低温状態と超高温状態の繰り返しへの耐久力が非常に優れており、かなりの軽量化にも成功しているとのこと。また、独特の原子組成と微細な構造により、弾力性にも富んでいるそうです。

新たなセラミック製エアロゲルは、薄い窒化ホウ素と金網のような六角形パターンに原子が結合したセラミックの層からなっています。新材料は過熱するとほかのセラミック材料のように膨張するのではなく、内側へと収縮するとのこと。この特性によって、新材料は以前のセラミック製エアロゲルに比べて高い柔軟性と耐久性を得ています。従来のエアロゲルは押しつぶされても元通り回復できるのは元の体積の20%が限界でしたが、新材料は元の体積のわずか5%にまで押しつぶされても復元できるそうです。


UCLAが主導した実験では、ほかのエアロゲルが破損してしまうような状況であっても、新材料は持ちこたえられたとのこと。エンジニアがわずか数秒で-198度から900度の間で温度を変化させるという作業を数百回繰り返しても、新材料は破損しませんでした。また、周囲の温度を1400度に設定して1週間放置した場合であっても、新材料の機械的強度は1%未満しか失われなかったとのこと。


UCLAの化学教授であるXiangfeng Duan氏によれば、「私たちが開発した新しいセラミック製エアロゲルの耐久力の鍵となるのは、ユニークな構造です。この構造が持つ生来の柔軟性は、ほかのエアロゲルが破損してしまうような極端な高温や激しい温度変化に耐えるのを助けます」とのこと。

また、Duan氏によれば今回の新材料を作るために開発されたプロセスは、ほかの超軽量材料を作るために応用できるそうです。「これらの超軽量な材料は宇宙船、自動車、ほかの特殊機器の断熱材として利用できるだけでなく、熱エネルギーの貯蔵や触媒、ろ過などに利用できるかもしれません」とDuan氏は述べました。

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in サイエンス, Posted by log1h_ik

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