サイエンス

自殺防止に役立つ可能性が示されたヒップホップの名曲とは?


日本の自殺者数は2009年以降減少し続けていましたが、2020年には増加に転じており、2021年7月には子どもの自殺者数が過去最多となっています。そんな自殺に関する研究をウィーン医科大学の研究チームが行っており、「自殺を思いとどまることを呼びかけるヒップホップ楽曲が、実際に自殺を減少させることに成功していた」と報告しています。

Association of Logic’s hip hop song “1-800-273-8255” with Lifeline calls and suicides in the United States: interrupted time series analysis | The BMJ
https://doi.org/10.1136/bmj-2021-067726

Hip Hop song linked to a reduction in suicides in the US
https://medicalxpress.com/news/2021-12-hip-song-linked-reduction-suicides.html

研究の対象となったヒップホップ楽曲は2017年にロジック氏がリリースした「1-800-273-8255」です。タイトルに使われている「1-800-273-8255」という数字はアメリカの自殺防止ライフラインにつながる電話番号を示しており、自殺に追い込まれた人物が自殺防止ライフラインのオペレーターと会話するような構成となっているこの楽曲は2017年のBillboard年間チャートで31位にランクインするほどの人気を獲得しました。


「1-800-273-8255」は以下から試聴できます。

Logic - 1-800-273-8255 ft. Alessia Cara, Khalid (Official Video) - YouTube


ウィーン医科大学の研究チームは、「1-800-273-8255」がTwitterで話題になった日付と自殺防止ライフラインへの相談件数を調査し、「1-800-273-8255」が相談件数の増加に役立ったか否かを調査しました。その結果、「1-800-273-8255」は「リリース日」「MTV Video Music Awardsで歌われた日」「第60回グラミー賞の年間最優秀楽曲賞を受賞した日」といった3種の主要イベントがあった期間にTwitterで大きく話題になったことが判明。これらのイベント含む34日間には、自殺防止ライフラインへの相談件数が予測される件数よりも9915件(6.9%)増加したことが示されました。また同じ期間の自殺者は予測よりも245人(5.5%)減少していたことも明らかになりました。

研究チームは「『1-800-273-8255』が最も注目されていた期間以外でも自殺防止効果を発揮したかは不明」「Twitterを用いた調査では、『1-800-273-8255』を実際に試聴した人の人数を正確に知ることはできない」といった本調査の問題点を挙げつつ、「今回の発見は、音楽業界やエンターテインメント業界などが創造的かつ革新的に協力して、『助けを求める』というインパクトのあるストーリーを推進することで、自殺を防げる可能性があることを強調しています」「この発見に従った行動は、助けを求める人を増やし、自殺を防ぐための行動の変化を生み出すことに役立つでしょう」と述べ、「助けを求めること」の重要性を説くエンターテインメントが自殺防止に役立つ可能性を強調しています。


なお、自殺防止に役立つ可能性が示された「1-800-273-8255」は、以下のリンクから購入できます。

Amazon Music - ロジック & フアネスの1-800-273-8255 [Explicit] - Amazon.co.jp


また、日本にも「いのちの電話」や「いのちSOS」といった自殺防止対策の電話・インターネット相談窓口が多数設置されています。

いのちの電話(一般社団法人 日本いのちの電話連盟)
https://www.inochinodenwa.org/

いのちSOS
https://www.lifelink.or.jp/inochisos/

こころの健康相談統一ダイヤル|自殺対策|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/seikatsuhogo/jisatsu/kokoro_dial.html

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in サイエンス,   動画, Posted by log1o_hf

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