MicrosoftがiPhoneでクラウドゲームを展開しようとしていたことが関係者の非公開メールで判明
IT系ニュースサイトのThe Vergeが2021年12月9日に、Microsoftの幹部がAppleに送った非公開のメールにより、MicrosoftがApp Storeのゲームアプリ市場に参入しようとAppleと交渉を重ねていたことが判明したと報じました。
Microsoft quietly told Apple it was willing to turn big Xbox-exclusive games into iPhone apps - The Verge
https://www.theverge.com/2021/12/9/22826297/microsoft-xbox-xcloud-streaming-exclusives-iphone-ipad-gamepas
Microsoft tried to negotiate with Apple for releasing Xbox games on App Store - 9to5Mac
https://9to5mac.com/2021/12/09/microsoft-tried-to-negotiate-with-apple-to-release-xbox-exclusive-games-on-app-store/
今回The Vergeが発見したのは、MicrosoftのXbox事業開発担当ヴァイス・プレジデントであるロリ・ライト氏とAppleのApp Storeの主要メンバー数人との間でやりとりされた電子メールです。このメール文書によると、MicrosoftはApp Storeでクラウドゲームを展開し、Xbox Cloud Gamingプラットフォームからゲームをストリーミング配信しようと計画していたとのこと。またやりとりの中から、MicrosoftはAppleとの取引を有利にするために、Xbox専用の大作タイトルをiPhoneに移植してもいいと申し出ていたことも分かりました。
以下は、ライト氏とAppleの間でやりとりされたメールの文章の一部です。2020年2月から始まった13ページにわたる(PDFファイル)やりとりの中でライト氏は、「数百から数千ものゲームアプリを個別に配信すると、バグを修正する個別のアップデートのリリースなどの管理が煩雑になり、無数のアイコンがホーム画面に並ぶことになるのでユーザーも混乱してしまいます」と懸念を表明した上で、「ゲームをストリーミング配信するアプリが1つあれば約150MB、ほかのアプリも約30MB程度で済むので、ユーザーの使い勝手もよりよいものになるでしょう」と述べて、さまざまなゲームが遊べるゲームストリーミングアプリをiOSでリリースする構想を提案しました。
協議が進む中で、Microsoftは当初の方針を修正し、個別のゲームアプリを配信する計画を提案しました。しかし、ゲームアプリは個々のApp Storeページから配信されるものの、アイコンをタップするとXbox Game Passアプリが開くようになっており、実質的には単なるショートカットアイコンとして機能する仕組みだったとのこと。Appleはこの提案を拒否し、「App Storeの代替品として機能するアプリは禁止する」との姿勢を崩しませんでした。
また、ライト氏は交渉の中で「MicrosoftのXbox Game Passに収録されていない大作ゲームをiOSに提供することも検討しています」と述べました。このゲームは前述のストリーミングアプリとは別にAppStoreで購入またはレンタルすることが可能ですが、一部の機能を利用するためにストリーミングアプリが必要になるという形で展開する考えだったとのこと。
結局、MicrosoftとAppleの取引は決裂しました。これは、Appleが2020年8月に「クラウドゲームサービスはApp Storeのガイドラインに違反しているためiOSでは動作しない」と発表し、その対抗策としてMicrosoftが2021年6月にApp Storeではなくブラウザ経由でXbox Cloud Gamingの提供を開始したことからも明らかだと、The Vergeは指摘しています。
Microsoftのクラウドゲームサービス「Xbox Cloud Gaming」がPC&Apple端末のブラウザから利用可能に - GIGAZINE
The Vergeによると、両社の協議が物別れに終わったのは、ゲームを個別のアプリとして配信する形態以外は認めないとしてAppleがMicrosoft側の提案を突っぱねたからだとのこと。
Xbox Cloud Gaming担当コーポレート・バイスプレジデントであるKareem Choudhry氏はThe Vergeの取材に対し、「ゲームを個別のアプリで提供するという私たちの提案は、App Storeのポリシーに準拠するように計画されていましたが、Appleは『ゲームアプリをサポートするストリーミングアプリが必要』という私たちの要求を拒否しました。しかし、個々のゲームに当社のストリーミング機能を盛り込むのは、サポートやエンジニアリングの観点から非現実的であり、お客様にとっても非常にネガティブな印象を与えることになります」とコメントしています。
また、両社が合意に至らなかったのには、金銭的な理由も絡んでいる可能性があります。Appleの広報担当者はThe Vergeに、アプリ内課金の取り扱いをめぐって両社が対立したことを明かしました。一方、Choudhry氏は課金の方式が最終決定に与えた影響はなかったとして、これを否定しています。
Choudhry氏はMicrosoftとAppleの協議の最終的な結果と今後の見通しについて、「私たちは『Xbox Game Passを介したクラウドゲーミングをAppleデバイスに提供するなら単一のアプリで提供するのが最善』と考えていましたが、Appleのポリシーにより個別のアプリとしてリリースすることを余儀なくされたので、それも視野に入れて検討しました。しかし、結局Appleが私たちの提案を拒否したので、ゲームを1つにまとめたXbox Game PassをApp Storeで配信する計画は実現しませんでした。当社は目下、iOSのユーザーにブラウザ経由でクラウドゲームサービスを提供していますが、引き続きApp Storeへの参入を可能にする実現可能な解決策を模索してまいります」と述べて、今後もApp Storeでクラウドゲームを展開する方法を探していく考えを示しました。
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