「殺菌した乳酸菌入りのグミ」を6週間かむと歯肉炎が改善したとの研究結果

口腔(こうくう)衛生は人間の健康にとって非常に重要であり、歯の健康状態で死亡リスクを予測できる可能性や、歯周病を治療することで動脈硬化につながるリスクを軽減できる可能性などが示されています。日本の東京科学大学や大塚製薬などによる新たな研究では、「加熱殺菌した乳酸菌入りのグミ」を6週間かむことで歯周病の軽度な段階である歯肉炎が改善したとの結果が報告されました。
Consuming heat‐inactivated Lactiplantibacillus pentosus ONRICb0240‐containing postbiotics reduces gingival inflammation: A double‐blind randomized clinical trial - Liu - Journal of Periodontology - Wiley Online Library
https://aap.onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/jper.70141
乳酸菌由来ポストバイオティクス食品の摂取で歯ぐきの炎症が改善 | Science Tokyo - 東京科学大学
https://www.isct.ac.jp/ja/news/w4yrlx7j5yrn
Postbiotic foods for improving gum health | Science Tokyo
https://www.isct.ac.jp/en/news/h15ljm2rnyem
Gum Disease Improved With Just 6 Weeks of Taking Bacteria-Loaded Gummies : ScienceAlert
https://www.sciencealert.com/gummies-packed-with-beneficial-bacteria-can-reduce-gum-bleeding-in-just-6-weeks-trial-finds
歯周病は歯肉や骨といった歯の支持組織に細菌が感染し、慢性的な炎症が生じる疾患の総称です。世界中で約35億人が罹患(りかん)しているとされる一般的な病気ですが、放置すると歯を失う原因になるほか、細菌が血流に乗ることで全身の健康状態に悪影響を及ぼす危険性もあります。
歯肉炎は歯茎だけが腫れている歯周病の比較的軽度な段階であり、歯茎が赤くなったり出血しやすくなったりするというもの。ただし、毎日の歯磨きやデンタルフロスによって健康な状態に戻すことができます。しかし、継続的に歯のケアをするのが難しいという人も多く、その補助的な手段として加熱して不活性化した菌などを用いる「ポストバイオティクス」が注目されています。ポストバイオティクスでは細菌がすでに死んでいるため、生きた細菌よりも安定性が高く、食品などに組み込みやすいという利点があります。
今回、東京科学大学医歯学総合研究科の岩田隆紀教授らの研究グループは、大塚製薬や東京センタークリニックとの共同臨床試験で、「乳酸菌入りのグミ」をかむことによる歯肉炎の改善効果について調査しました。

研究チームが臨床試験に用いたのは、植物由来の乳酸菌であるLactiplantibacillus pentosus ONRICb0240(ONRICb0240)です。ONRICb0240由来の成分は唾液中の免疫物質の分泌を促進し、粘膜の免疫を強化する可能性が示唆されているとのこと。
臨床試験では「加熱殺菌されたONRICb0240を配合したグミ」と「乳酸菌を含まないグミ」を用意し、軽度の歯肉炎を患う116人の成人患者にランダムで割り当てました。患者には歯磨きやその他の口腔ケアに関する特別な指示は与えられませんでしたが、「加熱殺菌されたONRICb0240を配合したグミ」あるいは「乳酸菌を含まないグミ」を1日2回、6週間継続して摂取するように指示されました。なお、今回の臨床試験は二重盲検無作為化試験として設計されており、患者だけでなく医療者側もどちらのグループに割り当てられているのかを知らなかったとのこと。
実験後に被験者の歯茎の健康状態を評価したところ、「加熱殺菌されたONRICb0240を配合したグミ」を摂取した被験者はそうでない被験者と比べ、歯肉の炎症度合いを表す歯茎の出血率(BOP)が有意に減少したことがわかりました。
以下のグラフは、左が「加熱殺菌されたONRICb0240を配合したグミ」を摂取したグループ、右が「乳酸菌を含まないグミ」を摂取したグループで、縦軸がBOPを示しています。ONRICb0240配合グミを摂取した被験者のBOPは実験開始時の17.6%から12.3%に減少したのに対し、対照群のBOP減少幅は18.9%から16.6%にとどまりました。

また、歯科医師の目視による歯茎の腫れ・赤み・出血に基づいた歯肉炎指数(GI)も、ONRICb0240配合グミの方が有意に減少しました。以下のグラフは左がONRICb0240配合グミを摂取したグループ、右が対照群であり、縦軸がGIを表しています。

研究チームの分析では、特に「ボディマス指数(BMI)が22以上の標準体型以上の層」「適切なプラークコントロールができていたり、歯肉の炎症が強すぎなかったりする層」「男性」において、ONRICb0240配合グミによる効果が大きいことも示されました。また、実験期間中はONRICb0240配合グミに起因する深刻な副作用は報告されておらず、安全性が確認されたとのこと。
研究チームは、「本研究は、特別な歯みがき指導や歯科治療を行わない日常生活下においても、加熱殺菌乳酸菌由来のポストバイオティクスを含む食品の継続摂取により、歯ぐきの出血や炎症の改善が期待できる可能性を示しました。安定性、安全性、取り扱いやすさなどのポストバイオティクスの特性を活かし、毎日の生活に無理なく取り入れやすい食品という形で、より多くの人が継続しやすい新たなオーラルケア習慣の可能性を提示した点に、大きな社会的意義があると考えられます」と述べました。
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in サイエンス, 食, Posted by log1h_ik
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