AIが設計した「万能ワクチン」を初めてヒトで試験したとケンブリッジ大学の研究者が発表

ケンブリッジ大学の研究者が、エボラウイルスやコロナウイルスなど数千種類の変異株に効果を発揮するワクチンをAIで設計する方法を開発しました。このワクチンによるヒト臨床試験も始まっています。
A phase I, needle free, dose escalation clinical trial of pEVAC-PS, a candidate pan-Sarbecovirus Vaccine - Journal of Infection
https://www.journalofinfection.com/article/S0163-4453(26)00084-8/fulltext
New ‘universal vaccine’ technology could protect us from future virus outbreaks | University of Cambridge
https://www.cam.ac.uk/research/news/new-universal-vaccine-technology-could-protect-us-from-future-virus-outbreaks

季節性インフルエンザワクチンや既存のCOVID-19(新型コロナウイルス感染症)ワクチンなどの現在のワクチンは、すでに人間で確認された特定のウイルス株や変異株由来の抗原を使用しています。しかし、ウイルスは絶えず変異しているため、こうした従来型ワクチンは製造・配布される頃には防御効果が限定的となり、追従するために毎年更新する必要があります。
ケンブリッジ大学の研究者らは、世界中で記録されたコロナウイルス近縁種のすべての遺伝子配列データを使用し、AIを用いてウイルス群全体に共通する抗原の特徴を含む「スーパー抗原」を設計しました。抗原はワクチンの有効成分であり、体内の免疫系を刺激して防御的な免疫反応を引き起こし、将来の感染と戦うように体を訓練します。このスーパー抗原はコロナウイルス近縁種に共通する抗原の特徴を含んでいるため、既存の変異株や、まだ見ぬ将来の変異株にも持続的な防御効果を発揮するとされています。

動物試験では、このワクチンがさまざまなコロナウイルスに対して強力な免疫応答を生み出すことが確認されていました。
新たに行われたヒト臨床試験では39人の健康なボランティアが参加し、このワクチンの安全性が確認され、複数のコロナウイルスに対する免疫反応を誘導したことが分かりました。この試験では、皮膚の上から液体を噴射して貫通させるマイクロジェットという手法でワクチンの投与に成功したため、研究者らは「注射針を恐れる人々や、従来の注射による接種が難しい環境で有用です」と述べました。
この方法で開発されたワクチンは、将来出現する新たなウイルスの脅威から人々を守る可能性があります。また、この技術は現在のワクチンが抱える根本的な制約の一つである「頻繁なワクチン再設計」の必要性を減らすことが重要な特徴だとされています。有効成分が完全にコンピューターシミュレーションによって設計されたワクチンがヒトで試験されたのは今回が初めてです。
ケンブリッジ大学獣医学部ウイルス人獣共通感染症研究室のジョナサン・ヒーニー教授は「私たちはワクチン開発を、事後対応型から将来に備えたものへと変えました。私たちのワクチンは、ウイルスが新たな株へと変異した後も防御を提供し続けます」と述べています。
一般利用に向けてはさらなる開発が必要で、次の大規模な第2相試験ではより幅広く多様な集団における免疫応答誘導能力を評価する予定です。
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