サイエンス

120億光年離れた天の川に似た銀河をウェッブ望遠鏡が発見、初期宇宙の銀河形成像を書き換える可能性


NASAのジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡が、宇宙が誕生してから15億年以内に形成されたと見られる天の川銀河によく似た渦巻銀河を発見しました。典型的な渦巻銀河は従来の見解では形成に数十億年かかると考えられていたため、「アラクナンダ」と名付けられたこの銀河は、研究の理論的枠組みを覆す可能性があります。

A grand-design spiral galaxy 1.5 billion years after the Big Bang with JWST | Astronomy & Astrophysics (A&A)
https://www.aanda.org/articles/aa/full_html/2025/11/aa51689-24/aa51689-24.html


Alaknanda: JWST discovers massive grand-design spiral galaxy from the universe's infancy | EurekAlert!
https://www.eurekalert.org/news-releases/1107899

Webb telescope found a Milky Way lookalike 12 billion light-years away | Mashable
https://mashable.com/article/james-webb-space-telescope-grand-design-spiral-galaxy-early-universe

インドのタタ基礎研究所の国立電波天体物理学センターの科学者であるラシ・ジェイン氏とヨゲシュ・ワダデカル氏は、ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡を用いて、21種類のフィルターを使って銀河のダストの量や年齢構成などさまざまな要素を推定できる「多波長サーベイ観測」を実施しました。重力レンズ効果と呼ばれる自然現象を利用して、100億光年以上遠方にある銀河の詳細を多波長サーベイ観測したところ、現在の天の川銀河のような、整った渦巻き構造を持つ巨大銀河が発見されました。波長の測定値をコンピュータモデルと照合するスペクトルエネルギー分布モデリングをした結果、この銀河の恒星の平均年齢はわずか約2億年であると推定されました。


発見された銀河は、ヒマラヤ山脈にある川にちなんで「アラクナンダ」と名付けられました。アラクナンダは直径約3万光年ほどの大きさで、そこから左右対称の渦巻の腕が伸びるディスク構造になっています。

渦巻の腕が明確に見える「グランドデザイン渦巻銀河」は、太陽系を含む天の川銀河に非常に近い形や構造です。しかし、従来の銀河形成モデルでは、初期の銀河は不規則かつ無秩序の混沌とした形成過程にあり、渦巻銀河が整った形になるためにはガスがゆるやかになってから回転円盤を形成し、そこから腕のように伸びるというプロセスが必要で、数十億年以上の長い年月が必要と考えられていました。

しかし、アラクナンダはビッグバンから約15億年後という、現在の宇宙年齢の約10分の1にあたる初期に形成されたと分析されたにもかかわらず、3万光年にも及ぶ巨大な渦巻を形成しています。そのため、「グランドデザイン渦巻銀河は、これまで考えられていたよりはるかに効率良く形成されていた」という可能性を研究者らは指摘しています。


研究の筆頭著者であるジェイン氏は「アラクナンダは、数十億年かかると見られていた構造的成熟度を備えています。この時代にこれほど整然とした渦巻き円盤が発見されたことは、銀河形成を促す物理プロセス、すなわちガスの集積、円盤の安定化、そしておそらくは渦巻き密度波の発達が、現在のモデルが予測するよりもはるかに効率的に作用する可能性があることを示しています。これは、私たちに理論的枠組みの見直しを迫っています」と述べています。

また、共著者のワダデカル氏も「どういうわけか、この銀河はわずか数億年で総恒星質量が約100億太陽質量にも及ぶ星々を集め、美しい渦巻き状の円盤へと組織化しました。これは宇宙の基準からすると驚異的な速さであり、天文学者たちに銀河の形成過程を再考させるきっかけを与えています」と発見の衝撃を語りました。

アラクナンダの発見により、既存の銀河進化モデル全体の再構築や、惑星系誕生のタイムラインにも影響を与える可能性が考えられています。今後の研究では、初期に形成された大規模銀河や渦巻銀河をより多く発見することで、アラクナンダがごく珍しい特異例か、それとも銀河の形成理論が大きく間違っていたかを判断する必要があります。

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in サイエンス, Posted by log1e_dh

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