サイエンス

銀河の中心にある超巨大ブラックホールが突然「覚醒」したのを天文学者が初観測


銀河の中心部で休眠していたブラックホールが突如活動を開始し、銀河がそれまでになく明るい光を放ち始めたと、ヨーロッパ南天天文台(ESO)を中心とした天文学チームが発表しました。これは、銀河の核が周囲をはるかに上回るエネルギーを放つ「活動銀河核(AGN)」の成り立ちが初めて記録されたケースではないかと注目されています。

SDSS1335+0728: The awakening of a ~10^6 M_sun black hole | Astronomy & Astrophysics (A&A)
https://www.aanda.org/component/article?access=doi&doi=10.1051/0004-6361/202347957

Astronomers see a massive black hole awaken in real time | ESO
https://www.eso.org/public/news/eso2409/


Astronomers watch a supermassive black hole turn on for the first time
https://www.sciencenews.org/article/supermassive-black-hole-turn-on-agn

ブラックホールは、光さえ脱出できない重力を持つ天体ですが、周囲の物質を活発に飲み込む際に形成される降着円盤や高温のガスからは強い光やX線が放出されます。逆に、周囲から飲み込む物質がなくなると成長が止まるため、このようなブラックホールは「休眠ブラックホール」と呼ばれています。

地球から3億光年の距離に位置するSDSS1335+0728という銀河の中心には、太陽の150万倍の質量を持つ超大質量ブラックホールがあると考えられていますが、これまで20年以上にわたり活動の兆候を見せていませんでした。


ところが、2019年12月に入り、天文学者らはSDSS1335+0728が突然明るく輝き始めたことに気がつきます。巨大な恒星が寿命を迎えて大爆発を起こす超新星爆発や、天体が超大質量ブラックホールに接近しすぎて崩壊する潮汐(ちょうせき)崩壊現象でも同様の光が観測されることがありますが、こうした現象は一般的に数日間、長くても数カ月間しか続きません。

4年以上も活発に可視光線や紫外線、赤外線を放射してきたSDSS1335+0728はさらに、2024年2月からX線を放つようになりました。


このような変化は過去に類を見ないもので、チリのミレニアム天体物理学研究所の天文学者であるロレーナ・エルナンデス・ガルシア氏は「この現象の最も具体的な説明は、銀河の核が活動を開始するのを目の当たりにしたということです。もしそうなら、大質量ブラックホールが活性化するのを初めてリアルタイムで観測できたことになります」と話しました。

ESOが公開した以下の15秒ほどのムービーを再生すると、SDSS1335+0728が活発に輝き始める過程をイメージした映像を見ることができます。

Artist’s animation of the black hole at the centre of SDSS1335+0728 awakening in real time - YouTube


これまでのところ、SDSS1335+0728の中心部で何が起きているのかまだはっきりしていないため、天文学者らはNASAのジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡などによる将来の観測に期待を寄せています。

ESOのパウラ・サンチェス・サエス氏は「私たちが手にしているすべてのデータが、私たちが初めてAGNの形成を観測していることを示しているようです。この放射源から、AGNがどのようにAGNになるのか、そして大質量ブラックホールがどのように成長するのかを知ることができると期待しています」と述べました。

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in サイエンス, Posted by log1l_ks

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