世界中で急激に出生率が減少しているのは「スマホとSNS」のせいかもしれない

日本では2025年の合計特殊出生率(15~49歳の女性が一生のうちに産む子どもの平均数)が過去最低の「1.13」前後になる見通しであり、移民なしで人口を維持できる「2.1」を大きく下回っています。少子化が問題になっているのは日本などの先進国だけでなく、発展途上国でも深刻化しているとのこと。経済紙のフィナンシャル・タイムズは世界的な出生率低下の理由が、「スマートフォンとSNS」にあるのではないかと指摘しています。
Why birth rates are falling everywhere all at once
https://www.ft.com/content/fba35eca-df3a-4ad6-b42d-eb08eb7c9ad3
◆出生率低下はもはや先進国だけの問題ではない
記事作成時点では3分の2以上の国々で合計特殊出生率が「2.1」を下回っており、出生率低下の規模とペースは予想をはるかに超えています。つい最近まで、急激な出生率の低下は主に先進国の問題とされていましたが、今日では多くの発展途上国も出生率の低下に悩まされています。
たとえば2023年、メキシコの出生率は初めてアメリカを下回ったほか、ブラジル・チュニジア・イラン・スリランカといった国々でも同様の傾向がみられました。フィナンシャル・タイムズは、「低所得国や中所得国は、豊かになる前に高齢化が進んでいるのです」と指摘しました。
少子高齢化は労働人口を減少させ、生産性や生活水準の向上を阻害します。1990年代以降の日本経済の停滞は、ほぼ完全に少子高齢化による労働人口の減少によって説明できるとのこと。また、年金や介護費による財政的負担が増加し、インフラ投資が圧迫されて社会が衰退することで、アンチ・エスタブリッシュメントな政治が人気を集めるようになることも問題です。
ペンシルベニア大学の経済学教授であり、人口変動の影響に関する第一人者であるヘスス・フェルナンデス=ビジャベルデ氏は、「出生率の低下は現代における最大の課題です。他のすべての問題はその下流にあるのです」と述べています。

◆「夫婦が持つ子どもの数」が減ったわけではない
かつて、世界の出生率低下は「夫婦が持つ子どもの数」が減ったことに起因していましたが、現代ではそもそも「夫婦の数」が減っているとフィナンシャル・タイムズは指摘。過去10年間にアメリカの結婚率と同居率が一定だったとすれば、合計特殊出生率は10年前よりも高くなっていたはずですが、実際には出生率が低下し続けています。
人口統計学者のスティーブン・ショー氏による研究では、アメリカおよびほとんどの高所得国では母親が出産する子どもの数は安定しているか、あるいは増加傾向にあることが示されました。しかし、現実に子どもを産む女性の割合は過去15年で急激に減少しています。
この傾向に結びつけられるステレオタイプに、「女性が子どもよりも自分のキャリアを優先するようになった」「十分な可処分所得があるカップルが子どもを持たない選択をし始めている」などが挙げられます。これに対しフィナンシャル・タイムズは、多くの国において結婚率および出生率の低下は教育水準と所得が低い層で顕著であり、大学卒業者の間では結婚して子どもを持つ割合は安定していると指摘しました。
◆住宅問題が原因なのか?
アメリカやイギリスを含むいくつかの先進国では、住宅価格の高騰が深刻な問題となっています。フィナンシャル・タイムズの分析では、1990年代以降のこれらの国々における出生率低下の半分は、持ち家率の低下と親と同居する若年層の増加で説明できるとのこと。若者が自分だけの長期的な住居を持てない状況では、子どもを作るといった長期的な計画を立てることは困難です。
しかし、住宅問題だけで近年の出生率低下やその世界的広がりを説明することはできません。実際、経済が安定している北欧地域では1人暮らしをする若者が増えているにもかかわらず、他の国々と同様に出生率は低下しています。また、いくつかの国では同居を始めたカップルが子どもを作るよりも、別れる可能性の方が高くなっており、これは歴史的な常識に反する現象だとのこと。
近年の少子化は世界的な金融危機にほとんど影響されなかった国でも生じており、経済成長が鈍くなった西ヨーロッパと、急速に経済成長を遂げている中東および東南アジアの両方でみられます。女性の大学進学率の上昇などを少子化と結びつける声もありますが、これは急激な少子化の進行に比べると緩やかな変化であり、国によって影響も異なります。

◆スマートフォンやSNSが少子化を引き起こしている可能性
純粋に経済的な説明だけでは少子化を捉えきれないと考えた研究者らは、世界中の若者の生活に影響を及ぼす「スマートフォンやSNS」に目を向けています。シンシナティ大学のネイサン・ハドソン氏とヘルナン・モスコソ=ボエド氏が2026年4月に発表した(PDFファイル)論文では、アメリカやイギリスにおける出生率の減少は高速モバイル通信が最も早く導入された地域で最初に、そして急速に起きたことが指摘されています。研究者らは、スマートフォンが若者の交流の仕方を変え、対面での交流が大幅に減ったことが出生率の低下につながったと主張しました。
フィナンシャル・タイムズの分析では、同様の傾向は世界の他の地域にもみられることが判明。たとえばアメリカ・イギリス・オーストラリアの出生率は2007年頃から著しく低下し、フランスやポーランドでは2009年頃、メキシコ・モロッコ・インドネシアでは2012年頃、ガーナ・ナイジェリア・セネガルでは2013~2015年にかけて急激に低下しました。これらの転換点はすべて、地域におけるスマートフォンの普及と時期的に一致していたとのことです。
人口統計学者のライマン・ストーン氏は、「結婚相手を見つけるには多くの人の中から相手を選び出す必要があります。社交の機会が少なければ少ないほど相手を見つけるのに時間がかかり、そもそも見つけられない場合もあるでしょう」と述べました。実際に少子化が深刻な韓国では、若年層の対面での交流が過去20年間で半減しているとのこと。
またストーン氏は、「現実世界で同年代の人たちと多くの時間を過ごすと、将来のパートナーに対するあなたの基準は現実世界に根ざしたものになります。一方でInstagramに時間を費やすと、あなたの基準は人工的な『普通』という感覚に根ざしてしまうのです」と述べています。つまり、SNSによって恋愛相手に求める基準が非現実的なレベルに高まり、その結果としてパートナーを見つけにくくなっている可能性があるというわけです。
実際にサハラ以南のアフリカを対象にした研究では、ソーシャルメディアの利用率が高いほど出生率が低いことが示されています。ソーシャルメディアやSNSの利用は人々の恋愛観に影響を与えたり、若い男女間のイデオロギー的な分断を生んだり、経済的な懸念を増幅したりする可能性があります。
新しいメディアが出生率に影響を及ぼすことは、今になって発見された新事実というわけではありません。2001年の研究では、出生率の低下と「テレビの所有率」の間に、所得や教育水準よりも強い関連性があることがわかりました。また、小規模な家族を描いたテレビドラマを見ると女性の出産数が減るという(PDFファイル)研究結果や、テレビを所有すると夫婦のセックスの回数が減るという(PDFファイル)研究結果も報告されています。スマートフォンの利用はテレビ視聴よりも頻度が高く、かつ自分1人で行うことが多いことを考えると、その影響はテレビよりはるかに大きいかもしれないとフィナンシャル・タイムズは指摘しました。

スマートフォンの所有やSNSの利用が出生率の低下に影響していたとしても、「国民がこれらのテクノロジーを利用できないようにする」といった対処は非現実的です。「若いカップルに安全で適切な住居を提供することで出生率が大幅に向上する」という研究結果もありますが、人口減少は経済的要因だけに起因するものではなく、政府の財源にも限りがあります。
フィナンシャル・タイムズは「より重要な点は、出生率の低下は若年層の独身化、孤立、そして幸福度の悪化といった、より広範な現象の一部であるように見えるということです。これらはテクノロジーやソーシャルメディアとの関連性が考えられることから、この傾向を逆転させる最善策は文化的な変化であれ政府による規制であれ、私たちのデジタル習慣を変えることかもしれません」と述べました。
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