EV時代幕開けの40年前、冷戦下のソ連ではバッテリーで走る電気自動車が既に生産されていた
化石燃料ではなく電気の力で走る電気自動車(EV)は、21世紀の自動車を方向付けるキーワード「CASE」の一角を占める要素となっていますが、その歴史は一般的に思われているよりもはるか昔にさかのぼることが出来ます。現代から約40年前、まだ「鉄のカーテン」で閉ざされていた頃のソビエト連邦(ソ連)では、実際に電気で走る自動車が開発されて街の中を走り回っていたそうです。
Soviet Tesla: Electric Lada from 30 Years Ago That Was Mass Produced | English Russia
http://englishrussia.com/2018/09/04/soviet-tesla-electric-lada-from-30-years-ago-that-was-mass-produced/
「CASE」とは「Connected(つながる)」「Autonomous(自律走行)」「Sharing/Service(シェアリング/サービス)」そして「Electric(電気化)」というキーワードを合わせた造語。2016年のパリモーターショーでダイムラーのディーター・ツェッチェCEOが発表した中長期戦略の中で提唱したもので、21世紀の自動車が進むべき道が端的に表されています。
時代の最先端を行くと思われがちな電気自動車ですが、その起源は電車が誕生した時代とほぼ同じで、1800年台前半には既に実際に走行できる自動車が誕生していました。しかし、バッテリー容量の問題や、電車のように架線から給電できないという問題などから、電気自動車が普及段階に入るまでには長い時間が必要でした。
旧ソ連時代から存在する自動車メーカーLADA(ラーダ)が1980年から81年頃に登場させていた電気自動車がコレ。バン型のボディを持つ車体には300kgを超えるバッテリーが搭載されていたそうで、ボディサイドには英語で「Electro」を意味するキリル文字が書かれています。
「VAZ (LADA) 2801」と名付けられたこのクルマは、アルミのケースに収められたニッケル・亜鉛電池を搭載していたとのこと。
バッテリーは、ドアの後ろにある専用のハッチの中に収められていたそうです。
このモデルは量産することを視野に開発され、初期のパイロット生産として50台が実際に作られて街を走っていたとのこと。その多くはLADAが拠点を置いていた都市・トリヤッチで使われていたそうですが、中には以下の青い車両のようにモスクワ市内で使われていたものや、ウクライナのキエフに送られたものもあったそうです。
後部ハッチの中はバッテリーだらけ……ということはなく、きちんと荷物が積める状態になっていた模様。
エネルギー源として380kgにもなるバッテリーを搭載する車両には出力25KW(約35hp)のモーターが使われ、最高時速90kmで走行することが可能だったとのこと。しかも1回の充電で走れる距離は約130kmと、現代のEVと遜色ない航続距離を持っていたようです。
しかし決定的な弱点として、「充電場所がほとんどない」というインフラの弱さに直面。徐々にEVは使われなくなり、一般的な化石燃料を使う自動車が元どおりメインで使われる時代が続くことになりました。興味深いことに、今でも残る個体の中にはモーターをガソリンエンジンに換装して今でも走り回っているものが確認されているそうです。
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