宇宙での生活は宇宙飛行士の重力感覚にどのような影響を与えるのか?

by NASA's Marshall Space Flight Center
宇宙に長期滞在した宇宙飛行士は地球に戻ると、重力のある環境に再び慣れるまで時間がかかることがあります。ベルギーのルーヴァン・カトリック大学とスペインのバスク科学財団の研究チームが国際宇宙ステーションで長期間過ごした飛行士を対象に実施した研究で、無重力に近い環境が物を握る感覚や動かし方に影響することが示されました。
Effect of Risks, Consequences, and Gravitational Priors on Sensorimotor Coordination: Insights from Weightlessness | Journal of Neuroscience
https://www.jneurosci.org/content/46/19/e2036252026
Space Does Something Strange to Astronauts' Sense of Gravity : ScienceAlert
https://www.sciencealert.com/space-does-something-strange-to-astronauts-sense-of-gravity
地球では物が落ちないようにしっかりと握る必要がありますが、微小重力では手を離しても物は落ちないため、握る目的は主に物を空間内で移動させることになります。研究の対象となったのは国際宇宙ステーションに少なくとも5か月滞在した女性2人と男性9人の宇宙飛行士で、宇宙の微小重力環境と地球上で宇宙飛行士が物をどのように握り、動かすかを比較しました。

by NASA Johnson
宇宙飛行士は親指と人さし指で専用の物体を持ち、腕を上下に動かす課題に取り組みました。別の課題では、台の上に固定された物体を親指と人さし指でつかんで上下にすべらせることで、物がすべらないために必要な最小限の摩擦力の感覚が調べられました。
その結果、微小重力では腕の動きが遅くなり、上下方向の動きはより対称的になることがわかりました。これは、物を上げる時と下げる時にかかる力の違いが地球上より小さくなることを意味します。

by NASA Johnson
一方で、宇宙飛行士は数か月の軌道滞在後でも微小重力環境に完全には適応していませんでした。微小重力環境である国際宇宙ステーションで生活していても、物を持ったり動かしたりすると重力に逆らうことを予測するように、必要以上に強く手で握っていたためです。
しかし、地球に戻った後には宇宙での経験による変化も見られました。一部の宇宙飛行士は「物体が予想より重く感じられた」と報告しており、長年地球で身につけた握力と負荷の結びつきが微小重力環境での滞在によって乱れる可能性が示されました。
ただし、帰還から1日後で上下方向の動きは地球上で通常見られるような非対称な動きに戻っていたとのこと。つまり、物を下げる時よりも持ち上げる時に大きな力が必要だという身体の反応は早く戻る一方で、物体の質量を感じ取る感覚については脳がなお誤った予測をする場合があったというわけです。

by NASA HQ PHOTO
研究者らは「重力環境が変わる時の調整が段階的で不完全であることは、こうした動作を支える神経過程が予測に基づいていることを示す」と説明しています。
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in サイエンス, Posted by log1i_yk
You can read the machine translated English article How does life in space affect astronauts….







