生き物

なぜ鳥は酸素の薄い地上8000メートルの高高度でも飛行可能なのか?


カザフスタンやインドに生息するインドガンという鳥は、世界で最も高い山であるエベレスト付近、高度8500メートルのヒマラヤ山脈上空を飛行しています。酸素の薄いこのような環境を生き残れる鳥類の肺がどのようにして生まれたのか、科学系メディアのNautilusが解説しています。

Walter Murch’s Letter to His Grandchildren About Earth’s History
https://nautil.us/issue/86/energy/why-birds-can-fly-over-mount-everest

インドガンは、ダチョウやハトなど、すべての鳥類と同じように非常に効率的な肺を持っています。鳥類の肺は人間の肺と異なり、空気の流れが一方通行になっているとのこと。鳥類が空気を吸い込む時、空気は気嚢(きのう)と呼ばれる呼吸器官のうち、肺の後方にある後気嚢と肺に入り込み、体内に酸素を取り込んだ後の古い空気は肺の前方にある前気嚢から排出されます。

このような肺の構造は鳥類の祖先である恐竜にも備わっていたとされています。ここで、「なぜ恐竜はこのような肺を持っていたのか」という疑問が起こりますが、Nautilusはこのことについても解説しています。


約4億5000年前、植物が初めて海から陸に上がったときに直面した障害は「重力」でした。重力に逆らわないようにするため、植物は何千万年もの間岩の表面に付着するコケとしての生息を開始。そして時を経て、植物は現在のような葉や茎を獲得するために必要な物質「リグニン」を合成できるように進化していきます。

リグニンにより硬い根や枝葉を獲得した植物でしたが、同時に「リグニンを分解できるバクテリアや菌類が十分に進化していない」という問題にも直面しました。分解されないまま残ってしまったリグニンは地表に堆積しつづけ、大量の炭素が石炭として固定化。大気中の二酸化炭素が減り続け、酸素濃度が30%以上にまで増加しました。このような高濃度の酸素は動植物の大型化を可能にしたとされています。

しかし、その後リグニンを分解できる白色腐朽菌が登場します。白色腐朽菌は大気中から得た酸素をリグニンの炭化水素と結合させ、二酸化炭素と水を排出するというプロセスで地球上の植物を分解し始めました。このことにより、今から約3億年前に30%を超えていた酸素濃度が約2億5000万年前には約12%にまで低下。地球上の生物の95%が死滅したとされています。


そのような過酷な環境で誕生した動物が恐竜でした。前述の通り効率的な肺を持つ恐竜は限られた酸素の中でも生息することができ、その後数千万年をかけて酸素濃度が20%にまで上昇した時には、全身に酸素を行き渡らせられる肺のおかげで非常に大きな体を持つことができたのです。この肺が後の鳥類にも受け継がれたため、鳥類は酸素濃度の薄い高度でも飛行できるようになったと、Nautilusは解説しました。

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in サイエンス,   生き物, Posted by log1p_kr

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