スポーツやゲームで複数人で「ゾーン」に入ると脳が同期されることが判明
スポーツや作業に集中すると、他の物事への意識が薄れ、時間が遅く進むように感じるゾーン(フロー)に入ることがあります。また、バスケットボールなどのチームスポーツや、複数人での楽器演奏、マルチプレイゲームなどが「チームフロー」と呼ばれる複数人で同時にゾーンに入る状態を引き起こすことも知られています。このチームフローについて東北大学や豊橋技術科学大学を含む国際的な研究チームが分析を行い、チームフローに特有な脳の状態を明らかにしました。
Team flow is a unique brain state associated with enhanced information integration and inter-brain synchrony | eNeuro
https://doi.org/10.1523/ENEURO.0133-21.2021
世界初、チームが「ゾーン」に入ったときの脳活動が明らかに! | 東北大学 -TOHOKU UNIVERSITY-
https://www.tohoku.ac.jp/japanese/2021/10/press20211006-01-team.html
Neuroscientists Claim to Have Pinpointed The Brain States Unique to 'Team Flow'
https://www.sciencealert.com/neuroscientists-claim-to-have-pinpointed-the-brain-states-unique-to-team-flow
研究チームは1人でフローに入った状態(ソロフロー)とチームフローでの脳活動の違いを明らかにするべく、1台のiPadで2人同時にプレイするリズムゲームを開発し、2人ペアの被験者に以下の3つの条件でゲームをプレイさせながら脳波を測定しました。
・2人の間に板を設置せず、ランダムではないリズム感のある音声を再生してチームフローになる状態にする(Team Flow)
・2人の間に板を設置せず、ランダムな音声を再生してチームでの作業はできるがフローに入れない状態にする(Team Only)
・2人の間に板を設置して、ランダムではないリズム感のある音声を再生してソロフローになる状態にする(Flow Only)
研究チームによると、フローに関する研究はこれまでも行われてきたものの、被験者がフロー状態になったか否かを客観的に判断することは困難だったとのこと。今回の研究では「ゲームプレイ終了後に被験者に集中状態に関するアンケートを行う」「ゲームプレイの合間にゲームに関係ないビープ音を再生し、脳の反応を測定する」という2つの方法を併用することで、被験者がフロー状態になったか否かを主観・客観の両面で判断しました。
上記の条件で脳波を測定した結果、チームフローではソロフローに比べて注意力や記憶、意識に関わる部位である中側頭皮質の活動が活発になることが判明しました。加えて、チームフローでは被験者ペアの脳活動が強く同期することも明らかになりました。
研究チームの一員であるモハマド・シハタ氏は今回の研究結果を基に「ソロフローでは、脳はタスクと無関係の外部刺激を遮断します。チームフローでは、チームメイトのフロー状態に関する情報以外の外部刺激を遮断します。このため、チームの脳は同期し始めます」と語っています。
研究チームは、今回の研究成果をチームのパフォーマンスのモニタリングや予測に活用することを目指しているとのことです。
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