サイエンス

脳活動をfMRIによって測定する従来の方法に問題があるとの指摘


MRIを使用して人間の脳などの活動を血液の流れから視覚化する「fMRI」は数多くの研究で用いられ、人間の思考や感情の脳活動を測定することが可能だとされていました。しかし、デューク大学の心理学・神経科学教授であるアハマド・ハリリ氏による分析では、fMRIによる脳活動の測定値には疑わしい点があることが指摘されています。

What Is the Test-Retest Reliability of Common Task-Functional MRI Measures? New Empirical Evidence and a Meta-Analysis
https://journals.sagepub.com/doi/10.1177/0956797620916786

Studies of Brain Activity Aren’t as Useful as Scientists Thought | Duke Today
https://today.duke.edu/2020/06/studies-brain-activity-aren%E2%80%99t-useful-scientists-thought

ハリリ氏は「fMRIで人間の脳をスキャンすることで、例えば名前を覚えたり数を数えたりするときに、脳のどの部分がより活発に動いているかを正確に知ることができます」と述べています。しかし、人の脳活動パターンは常に同じではなく、測定されるたびに測定値が変化していることから、活動パターンを正確に捉えられていない可能性があるとハリリ氏は指摘。ハリリ氏の研究チームは、fMRIによる測定データを使用している56の論文中にある90の実験について信頼性の有無を検証しました。


検証された研究のうち、例えばアメリカ国立衛生研究所(NIH)によって行われた脳活動における認知および感情の変化をfMRIで調査した研究では、45人の被験者に対して約4カ月間隔で脳の活動を測定しています。ハリリ氏らの検証により、測定された7つの脳活動の内、6つにおいては、測定結果の相関が弱く、信頼性に欠けると判断されました。また、言語処理の脳活動はわずかな相関関係が見られたものの、信頼性が高いとは言えない結果であると指摘されています。

ダニーデン研究による、20人の被験者に1日2回、2カ月から3カ月の間隔をあけてfMRIで認知や感情の変化を測定した研究でも、各被験者における脳活動パターンの相関性は弱いと見られています。

以下の図は、左側がNIH、右側がダニーデン研究によって測定されたfMRIによる脳のスキャン画像です。暖色は被験者全体に見られた脳の活動パターン、寒色は被験者ごとに活動パターンのばらつきがあった信頼性の低い測定結果を示しています。上から感情、言語、認知の脳活動パターンを表しており、感情および認知の活動パターンは特に多くばらつきが見られたことが分かります。


fMRIの測定結果における信頼性の問題を解決する方法の1つとして、ハリリ氏は「脳活動の測定データを1時間以上連続で収集することが望ましい」と述べています。

ハリリ氏の指摘を受け、スタンフォード大学の心理学教授であるラッセル・ポルドラック氏もfMRIに関する15年前の研究を再度分析し直しています。ポルドラック氏はハリリ氏が行った分析結果に対し「脳活動測定における信頼性の問題は、研究者の間でも問題視されており、ハリリ氏の研究によってfMRIの問題がより明確にまとめられました。これは研究者の研究への誠実さを示すいいきっかけです」と語りました。

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in サイエンス, Posted by darkhorse_log

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