サイエンス

「イカの脳をMRIで輪切りにする」実験で犬に匹敵するイカの知能の秘密が解明される

by Jin Kemoole

イカの脳を最新のテクノロジーでスキャンした研究により、これまで発見されていなかった145個もの神経経路が発見されました。これにより、高度な擬態能力や発達した視覚を持ち、犬に匹敵するニューロン数を有するとされているイカの知能の秘密が解き明かされつつあります。

Toward an MRI-Based Mesoscale Connectome of the Squid Brain - ScienceDirect
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S2589004219305620

Brain map reveals camouflage tactic of squid - Queensland Brain Institute - University of Queensland
https://qbi.uq.edu.au/article/2020/01/brain-map-reveals-camouflage-tactic-squid

Squid Brain Complexity May Approach That Of Dogs, Study Finds | IFLScience
https://www.iflscience.com/plants-and-animals/squid-brain-complexity-may-approach-that-of-dogs-study-finds/

「タコやイカなどの頭足類の一部は、脳に5億個を超える神経細胞(ニューロン)を持っています。これは、一般的な軟体動物の2万個、ラットの2億個をはるかに上回り、犬の5億3000万個に匹敵します」と指摘するのは、クイーンズランド大学で脳科学について研究しているWen-Sung Chung氏です。

イカは高い知能を持つことが知られているにもかかわらず、これまで脳の構造を調べる核磁気共鳴画像法(MRI)でイカの脳が調査された前例がないことに気づいたChung氏の研究グループは、大型のアオリイカ5杯の脳を拡散MRI(dMRI)で調べて、脳地図を作成しました。


その結果が以下。図は左から実験に使用したイカの生体試料、摘出された目と脳、MRIデータを使用したイカの脳の3Dグラフィックです。


研究グループはMRIデータの分析により、既知の神経経路280個と、これまで未発見だった神経経路145個を特定することに成功。新発見の神経経路のうち、60%以上が視覚と運動システムに関連しているものでした。

この知見から、Chung氏は「アオリイカの目は、多くの脊椎動物と同様の『視覚を中心とした生態』を支えるもので、目だけでなく視神経などの組織や機能も脊椎動物に近いものでした。これは、異なるグループの生物である頭足類と脊椎動物が、個別の進化の果てに似た構造の脳を獲得したことを示しており、収斂(しゅうれん)進化の理論の裏付けとなります」と指摘しました。

また、一部のイカは色覚を持たないにもかかわらず、体の模様でコミュニケーションをとったり、体を上半分と下半分で違う模様にするという高度な擬態を行ったりすることも知られています。このような芸当が可能なのは、今回新たに発見された神経経路を含む脳の構造が、「自分を上から見たらどうなるか、下から見たらどうなるか」を理解するためのネットワークを形成しているからだということも判明しました。

by Diliff

Chung氏は「我々の研究が、イカという魅力的な生物が一体なぜ多様な行動やコミュニケーション能力を身に付けたのかを理解する一助となれば幸いです」とコメントしました。Chung氏らの研究グループは今後、「多種多様な頭足類がどのようにして脳のさまざまな部位を進化させていったのか」を調べるプロジェクトを進めていく方針だとのことです。

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in サイエンス,   生き物, Posted by log1l_ks

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