サイエンス

動いているタコの脳波を記録することに沖縄科学技術大学院大学などの研究チームが世界で初めて成功する


タコは非常に高い知性を持っており、瓶を開けたり迷路を突破したりできるだけでなく、痛覚があり痛みを嫌うことも知られています。沖縄科学技術大学院大学(OIST)などの研究チームが、タコの脳に電極を埋め込むことで、世界で初めて「動いているタコの脳波」を記録することに成功しています。

Recording electrical activity from the brain of behaving octopus: Current Biology
https://doi.org/10.1016/j.cub.2023.02.006


動き回るタコの脳波を記録することに世界で初めて成功 | 沖縄科学技術大学院大学(OIST)
https://www.oist.jp/ja/news-center/news/2023/2/24/scientists-record-first-ever-brain-waves-freely-moving-octopuses

Scientists Have Recorded Brain Waves From Octopuses Just Living Their Lives : ScienceAlert
https://www.sciencealert.com/scientists-have-recorded-brain-waves-from-octopuses-just-living-their-lives

We’re one step closer to reading an octopus’s mind | Ars Technica
https://arstechnica.com/science/2023/04/in-a-first-researchers-track-brain-activity-in-a-free-moving-octopus/

タコは道具の使用や複雑な操作の記憶、物事を観察して学習するといった複雑な認知タスクをこなすことが可能であり、一部の研究者は「タコの養殖をやめるべき」とまで主張しています。タコは8本の触手がそれぞれ非常に優れた処理能力を持っており、足だけで光を感知できるという研究結果もあります。

2022年の研究では、タコの脳で認知機能について重要な役割を果たしている部分に、人間の脳にも存在する「トランスポゾン」という塩基配列があることが報告されました。

タコの知能の秘密は「ヒトと同じ遺伝子」にある可能性 - GIGAZINE


タコの知性について研究するため、研究当時OISTの物理生物学ユニットに所属していたタマー・グットニック博士(現ナポリ大学)らの研究チームは、動いているタコの脳波を記録する実験に取り組みました。グットニック氏は、「脳がどのように機能するのかを理解したいのであれば、タコはほ乳類と比較して研究するのに最適な動物です」「タコは大きな脳、驚くほどユニークな体、そして脊椎動物とはまったく異なる発達を遂げた高度な認知能力を持っています」と述べています。

しかし、タコは8本の触手を自由自在に操作できるため、脳波を測定するための電極を体外に取り付けても、タコが起きている状態であればすぐに取り外されてしまいます。つまり、動いているタコの脳波を記録したい場合は、タコの触手が届かない皮膚の下に電極を埋め込むしかないとのこと。


研究チームは、飛行中の鳥の脳活動を追跡するために開発された小型で軽量な電極とデータロガーを防水加工し、タコへの移植に適した形状に改造しました。そして、体内に空洞がありデータロガーを埋め込みやすいワモンダコを3匹選び、麻酔をかけて脳の垂直葉と中央上前頭葉と呼ばれる部位に埋め込みました。これらの部位は視覚的な学習や記憶といったプロセスにとって重要だと考えられています。

手術が終了したタコは水槽に戻されてから5分後に回復し、それから12時間にわたって動いているタコの脳波が記録されました。また、睡眠や食事、移動といった水槽内での行動もビデオで撮影されました。

以下の動画は、タコの脳波と撮影された様子を同期させたものです。タコの脳波には数種類のパターンが存在しており、中にはこれまで見られなかった長くゆっくりと続く「タコ固有とみられる脳波」も確認されたとのこと。また、振れ幅の大きさや形状がほ乳類のものと似た脳波も確認されました。


今回の研究では、回復したタコに対して記憶や視覚的な処理に関するタスクを与えなかったため、脳波を特定の脳活動とリンクさせることはできませんでした。研究チームは今後、マダコを含む他の種類のタコでもこの実験を繰り返すことや、記憶や学習に関するタスクを与えたタコの脳波を記録することも計画しているとのこと。

論文の共著者であり、元OIST所属のマイケル・クバ博士(現ナポリ大学)は、「これは非常に重要な研究ですが、まだ第一歩にすぎません。タコはとても賢いですが、その脳がどのように機能しているのかは、今のところほとんどわかっていません。この技術によって、タコが特定のタスクに取り組んでいるときの脳の活動を覗き込むことが可能となります。本当にワクワクする、影響力の大きい成果です」と述べました。

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in サイエンス,   生き物,   動画, Posted by log1h_ik

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