生き物

恐竜と同じ7000万年前を生きた新種の哺乳類「狂気の獣」とは?


1999年にマダガスカル島の地層からほぼ完全な状態で発見された化石が、古代地球の南半球に存在したゴンドワナ大陸に生息していた新属新種の哺乳類のものだとする研究論文が発表されました。デンバー自然科学博物館の研究員であるデビッド・クラウス氏の率いる研究チームはこの哺乳類を、「狂気の獣」を意味する「Adalatherium hui」と命名しました。

Skeleton of a Cretaceous mammal from Madagascar reflects long-term insularity | Nature
https://www.nature.com/articles/s41586-020-2234-8


Fossil of 'crazy beast' skeleton uncovered - Scimex
https://www.scimex.org/newsfeed/fossil-of-crazy-beast-skeleton-uncovered


Strange 'Crazy Beast' Skeleton May Be Oldest Mammal Unearthed in Southern Hemisphere
https://www.sciencealert.com/crazy-beast-of-gondwana-may-be-oldest-mammal-skeleton-found-in-southern-hemisphere


Adalatherium huiの化石は、白亜紀末期の「マーストリヒチアン」と呼ばれる、およそ7210万年~6600万年前の地層から1999年に発掘されたもので、ゴンドワナ大陸に生息していたとされる「ゴンドワナテリウム亜目」に属する哺乳類とみられています。南半球で発掘された哺乳形類の化石としては最古のものだとのこと。

これまでにもゴンドワナテリウム亜目に属する哺乳類の化石が発掘されたことはありましたが、顎や歯、頭蓋骨の化石がばらばらに発見されたのみで、ゴンドワナテリウム亜目が解剖学・古生物学・系統進化学的にどういう生き物だったのかはほとんどわかっていませんでした。今回発見された化石は未成熟な個体のものでしたが、ほぼ全身をとどめており、小さな骨や軟骨組織なども保存されていたとのこと。

以下の画像が発掘された化石。頭部、前足、後ろ足、背骨、肋骨と全身の骨のほぼすべてがそろっています。

Most Complete Skeleton Of "Crazy Beast” From Ancient Gondwana Supercontinent Discoveredhttps://t.co/qXaHFoQecd pic.twitter.com/saYK4167mo

— IFLScience (@IFLScience)


1999年に発掘された化石の研究結果が2020年にようやく報告されたことについて、論文著者の1人で、モナッシュ大学で系統進化学を研究するアリステア・エヴァンス准教授は「化石のあらゆる側面を詳細に研究し、どのような種類の哺乳類なのか、どのように生息していたのかを示すまでおよそ20年かかりました」と説明しました。


エヴァンス准教授によれば、化石の復元作業にも膨大な作業が求められたとのこと。Adalatherium huiの1本の歯を修復するのに100個以上の断片を結合する作業が必要だったそうです。Adalatherium huiの歯のCGモデルは、エヴァンス准教授が公開した以下のムービーで見ることができます。

Fragmented Adalatherium tooth being reconstructed - YouTube


全身の化石を基にしたAdalatherium huiのイメージ図が以下。Adalatherium huiは足と尻尾が短く、骨格は頑丈ですが、泳ぐことはできなかったと見られています。推定体重は3.1kgで、大きさは猫程度だそうですが、これでもゴンドワナ大陸に生息していた哺乳類の中では最大サイズになるとのこと。なお、Adalatherium huiという学名は「狂気」を意味するマダガスカル語と、「獣」を意味するギリシャ語からつけられているそうです。

Crazy beast from the south - new research involving @MonashUni palaeontologists has revealed the full fossil skeleton of an unprecedentedly bizarre mammal from the Age of Dinosaurs.https://t.co/OYZgezPDTx@MonashBiol @DrTeethAl pic.twitter.com/qmrRRWYSvp

— Monash Science (@Monash_Science)


Adalatherium huiは、ジュラ紀から白亜紀に多く生息するもおよそ3500万年前に絶滅してしまった「多丘歯目」の近縁種となるそうですが、研究チームはAdalatherium huiの化石がマダガスカル島で発見されたことに大きな意味があると述べています。

アフリカ南東部に位置するマダガスカル島は、大陸移動の影響で9000万年前にゴンドワナ大陸から切り離されて島になりました。そのため、マダガスカル島では大陸と異なる独自の生態系が発展したと考えられています。

by Hannes Grobe/AWI

例えば、Adalatherium huiの頭蓋骨にある原始的な膜内骨は、およそ1億年前に進化の過程で失われた骨で、現存する多くの哺乳類には見られないとのこと。また、頭蓋骨には既知の哺乳類よりも多くの開口部があり、鼻やヒゲの感度を高めるために神経や血管の通り道になっていた可能性があると研究チームは述べています。

研究チームは「マダガスカル島では資源が限られたほか、ゴンドワナ大陸よりも種間競争が減少し、捕食者と寄生虫が少なかったため、独自の進化体系が築かれたと考えられます」とコメントしています。

Adalatherium huiがどのように進化し、どのように絶滅したのかについてはほとんどわかっていませんが、ゴンドワナ大陸の生態系については未知の部分が多いので、ほぼ完全なAdalatherium huiの化石は大きな発見といえます。「Adalatherium huiは、南半球における哺乳類の進化初期という大きなパズルの重要なピースです。ただし、他のピースはまだほとんどそろっていません」とエヴァンス准教授は述べました。

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in サイエンス,   生き物, Posted by log1i_yk

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