「乱交とウイルス」を利用して増えすぎたコイの防除を図る方法をオーストラリア政府が検討
100年以上前に外来種としてオーストラリアに入ってきたコイは、オーストラリア国内の河川において水質や在来魚、漁業などに悪影響を与える魚として認識されています。そんなコイを人為的に致死性のウイルスに感染させ、1匹のメスと数匹のオスが絡み合うという繁殖方法も利用して数を減らす計画が立てられています。
Australian government plan to capitalise on carp orgies to cull the pest species with herpes virus | Murray-Darling Basin | The Guardian
https://www.theguardian.com/australia-news/2021/sep/20/australian-government-plan-to-capitalise-on-carp-orgies-to-cull-the-pest-species-with-herpes-virus
コイは泥で水を濁らせて水生植物の成長を阻害したり、在来種の分まで食料を食べてしまったりと、環境にさまざまな悪影響を及ぼします。オーストラリア国内においては、特に南東部のマレー・ダーリング盆地に多数生息しており、その量は1ヘクタール(約1万立方メートル)当たり最大約350kg、河川によっては生息する魚類全体の80%を占めるとまで言われています。オーストラリア政府はコイを「優先的に対処すべき外来種」と定めており、過去20年間にわたり数を減らすべく取り組んできました。
2016年、オーストラリア政府はコイをコイヘルペスウイルスに感染させ、数を減らす取り組みを行う意向を表明。1500万ドル(約16億5000万円)の予算を組み、生息数削減に向けて動き出しました。コイヘルペスウイルスは自然に見られるウイルスであり、耐性のないコイが感染してコイヘルペスウイルス病を発症した場合の致死率は100%とされています。加えて、コイは繁殖の際にしばしば1匹のメスと数匹のオスが絡み合うという繁殖形態をとるため、ウイルスの拡散率が高くなることも見込まれています。
コイヘルペスウイルスはコイに特異的なウイルスであり、他の魚類や人間には感染しないために安全性も高いとされてます。オーストラリアは農林水産省と水産研究開発公社(FRDC)の合同でNational Carp Control Plan(NCPP:国家コイ管理計画)を発足させ、コイヘルペスウイルスを使用するメリットやリスクについて研究を重ねて来ました。そして2020年1月、NCPPは一度研究結果をまとめて政府に提出し、評価と検討を要請。コイヘルペスウイルスを用いる場合に大量発生する死骸の処理方法などを検討しながら、2021年末を目処に研究を完了させ、規制当局の承認を求める方針を固めました。
地方自治体であるマレー・ダーリング協会の最高経営責任者を務めるエマ・ブラッドベリー氏は「コイが重大な被害を及ぼしていることをよく理解しています。コイヘルペスウイルスを使うに当たっての私たちの見解は定まっておらず、さまざまな案を支持しています」と述べました。
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